永遠の追憶

紫泉 翠

追憶の鍵

 加来咏は、霊感ゼロの女子大生。彼女は事故物件である家賃ゼロ円のマンションに住んでいた。そこは人々が遠ざけるような雰囲気を漂わせ、詠が住んでいる部屋だけが悪夢のように静かであった。


 咏のバイト先である喫茶店では、美咲(みさき)という明るい性格の女性が働いていた。彼女には悠斗という兄がおり、両親が事故死した過去を持つ。悠斗は無差別殺人事件の犯人として殺人を行っており、彼も当初は、咏のことを殺そうとした。それが咏と詠の出会いだった。詠は霊感がないため、その事実には気付かなかった。


 ある日、咏は事故物件の隣人である雅也と出会う。雅也は静かながらも優しい笑顔を見せ、咏の心に少しずつ入り込んでいった。彼女は雅也に対して心を開き始めるが、その背後には彼が無差別殺人の犯人であるという事実があった。


 咏と美咲は喫茶店で仲良く働き、楽しい時間を過ごしていた。しかし、美咲は悠斗の過去に関する真実を咏に打ち明ける。彼女は悠斗が自分の兄であり、そして無差別殺人の犯人であることを告げる。詠は驚愕し、同時に悠斗に対する感情にも戸惑いを覚える。


 悠斗と詠の距離は次第に縮まり、二人の間には特別な絆が芽生え始める。しかし、咏は美咲の告白によって悠斗の過去を知り、心に葛藤を抱える。彼女は悠斗の過去と向き合い、彼の真実の姿を受け入れるかどうかを決めなければならなかった。


 ある晩、咏は事故物件で悠斗と対面する。彼は彼女に自分の過去を告白し、その場にいることが彼女にとって危険であることを認める。咏は悠斗の真実を知りながらも、彼に対する愛情を抱き、彼の優しさを信じることを決意する。


 しかし、悠斗は自らの罪を償うため、詠に別れを告げる。彼は詠を守るために自らを犠牲にする覚悟を決め、去っていく。詠は悠斗の決断を受け入れることができず、彼を追いかけようとするが、その時、彼女の目の前には美咲が立っていた。美咲は彼女を止め、悠斗の過去を受け入れるように促す。


 詠は美咲の言葉を聞き入れ、悠斗の過去と向き合う決心を固める。彼女は悠斗を待ち続け、彼が帰ってくる日を信じて、静かな事故物件の部屋で彼を待ち続けるのだった。

 そして、最後咏は自分の部屋で悠斗の毒牙に罹り殺されてしまう。

 彼女の想いは、実らなかったのである。

『取り敢えず、こいつも殺すか。ばらされたら困る。せっかく美咲も殺したのに』

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