『とりあえず』が口癖のダンジョン配信者は、最難関ダンジョンを最速クリアしてバズりたい!
米太郎
第1話 プロローグ!
「とりあえず、配信始めまーす!」
ダンジョンという閉鎖的な空間で大声を出すと、声が反響する。
それが、いわゆるエコーの役割を果たすのだ。
今の私のセリフが、上手いこと反響している。
これが、私の配信チャンネルのオープニングの決めセリフになっている。
……誰も期待していないだろうけれども。
……でも、いつもやってるの!
「ブイッ!」
自撮り棒の先のスマホに向かって、決めポーズを作る。
右手でピースサインを作って、それを右目の所へと持っていく。
そして、可愛らしくウィンク!
プリクラを撮る時と一緒。
人って、自分の
私って、左右の目の大きさが少し違うんだ。
左目はパッチリ二重で、とっても可愛いって思うんだけれども、右目は一重なの。
それがあまり気に入ってなくて。
一時期、気になり過ぎて、右目だけ眼帯をしてた時もあったんだよね。
私の黒歴史の一ページです。
……思い出すのも恥ずかしい。
流石に『眼帯配信者』っていうのは、痛すぎるなって思ったの。
だから、右眼を隠すために、手でも隠すし、右眼でウィンクが出来るように練習したんだ。
これでも、私は努力家なのです。
「ふぅ……。オープニング終了っと」
スマホを手元に戻して、画面を見てみる。
今日もオープニングの視聴者は、0なのか……。
こんなに可愛いと思うのに、視聴者が全然いないんだよね。
現役の女子高生が生配信してるって言うだけで、そこそこ人は集まるはずなのにさ。
なんでか、私の所に人が来ないんだよね。
私の可愛さが足りないのかな……?
そんなことはないはずって信じたいんだけれども。
いつも生配信の同時接続数は、片手で足りるくらい。
……というか、グーにした手から、指を出せれば良い方。
底辺ダンジョン系配信者。
何がいけないんだろうな。
まぁ、考えても仕方ないから、とりあえず今日もサクッとモンスター狩ってこようかな。
狩ってたら、たまに人が来るしね。
私はスマホを自撮り棒に戻しながら、準備運動をする。
配信者足るもの、いつでもスマホと自撮り棒は手放さないのであります。
腕を交差させて、片腕でもう片方を引っ張るように伸ばす。
女子高生のストレッチシーン。
この時にも、しっかりと自撮り。
これも、もちろんしっかりと練習したんだよ。
このアングルが一番可愛いって言うアングル。
右眼が見えないように撮るの。
それでいて、カメラがブレないように。
カメラ固定するのを毎日何時間もやってたおかげで、意外と筋肉付いてきた気もするし。
このストレッチだけでも、視聴者増えても良いサービスシーンなんだけどな。
ストレッチをしていると、モンスターの足音がしてきた。
生配信を始める時の挨拶。
あれでモンスターが呼べることに気が付いたんだよね。
スマホはしっかりと自撮り棒の先。
この状態で戦うのも、練習済み。
私は、早速スマホに向かって喋る。
「モンスターが来たみたいなんで、とりあえず狩ってみます!」
足音がしてくる方向を見ると、大量のゴブリンの群れが来たようだった。
通称、赤耳ゴブリン。
ガタイも良くて、瞬発力に優れるモンスター。
小刀みたいな武器も扱える知能を持つんだ。
仲間内で連携も取れたりするし。
相手にとって不足無し!
これで、視聴者数が増えるといいんだけどね。
私は半身になり、その場でどっしりと脚を開いて構える。
空手の構え。
私は、中学まで空手をやっててね。
全国大会にも出場したことがあるんだよ。
だから、戦う時は全て素手。
何匹いようとも、負けないもん。
「ギギッ」
「ギギ、ギギッ」
赤耳ゴブリンは、連携を取って私を取り囲んだ。
中々の絵面。
こんなシチュエーションいいんじゃないかな?
そう思って、スマホの画面をみても、視聴者数は1。
……はぁ。何がいけないのかな。
「見てる人は、1人だけですけど、とりあえず狩りまーす!」
手に持った小刀で攻撃を仕掛けてくるゴブリンを、ひらりと交わして側頭部へと正拳突き。
突きをしている間に後ろから攻撃しようとしてきたゴブリンには、後方蹴り。
左右から同時に攻撃を仕掛けてくるゴブリンには、大技で対応。
左から来るゴブリンに対して、宙返りをしながら顎に蹴りを入れる。
そして、宙返りをしたままの勢いで右から来るゴブリンの脳天にオーバーヘッドキック。
ふう、楽勝!
視聴者数は増えたかな……?
あらら……。
0人になっちゃった……。
バズるには、どうしたらいいんだろうな……。
うーん……。
『とりあえず』が口癖のダンジョン配信者は、最難関ダンジョンを最速クリアしてバズりたい! 米太郎 @tahoshi
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