頭が痛い時の心強い味方

ほしのしずく

第1話 その名もバ◯◯ァリン

私は、ほしのしずくと申します。


最近、春の嵐とやらの影響でしょうか?

気温差は凄いですし、気圧の乱高下もひどいですよね……。


ですが、そんな日々のおかげで地味に恥ずかしかったエピソードを思い出しました。


それは、大好きな祖父『歯のじいちゃん』と呼んでいた私の祖父との思い出が関係していきます。


ちなみに、何故祖父を『歯のじいちゃん』と呼んでいるのかと思うと、歯が四本しかなかったからですね。

つまり、子供ならではの自由フリーダムな名前の付け方です。


我ながらナイスセンスだと思いますよね……うんうん。

あ、誤解しないで頂きたいのは、ちゃんと祖父は喜んでいました。


祖父は、豪気で細かい事を気にしない大きな子供のような人だったので。


寧ろ、私が付けた特徴を捉えたあだ名に、喜んでいました。


もう亡くなってしまいましたが、「歯のじいちゃんは……将棋をしたいなぁ……」とか言いながら、私の方をチラチラと見てくる可愛い姿も、入れ歯をカパカパしている姿も。


今でも、私の脳裏には、素敵な思い出として焼き付いています。


それでは、その思い出の一つであり、地味に恥ずかしい黒歴史をここで放出したいと思います。


それでは聞いていってください。




🌟🌟🌟




私の家族というか、頭痛薬と言えばバファリンというのが、国民のマストであり、常識的なところがあると思います。


もちろん、私の家でも例外はなく、頭痛が起きればバファリンだったのですが……ある事が起きます。


それは祖父が亡くなり、私が結婚をし家庭を持つようになったとある日。


この日は、低気圧の影響で起きた瞬間からあまり調子がいい状態ではなくて、体を重く感じていました。

ただ、いつものように朝のゴミ出しやらご飯の準備やらしていれば、まぁ調子が戻ってくるだろう。


と思い、朝の支度を続けていましたが、案の定体調は回復することなく頭痛に襲われます。


キッチンの前にて。


「気圧の影響かも……頭痛いや」


出勤前ということもあり、同じ時間帯に家を出る相方さんへと声を掛けました。


「薬箱に――」


そして、言ったのです。


あの国民的、頭痛薬の名前を。


「――薬箱にあるバッファリンとって」


だが、どういうことでしょう?


私が頭痛薬を取ってと言ったのに、相方さんはリュックなどに作業着などを詰めながら、首を傾げています。


キッチンにいる私より、リビングにいる相方さんの方が近いというのに。


何だったら、薄ら笑いを浮かべていたのです。


ここで、気付いた人もいるでしょう。


そうです。名前が違うのです。


あの国民的頭痛薬の正式名称は「バッファリン」ではなく、「バファリン」なのです。


ただ、その時は一体、何がどうなって「ッ」が足されたのかわからず、「えっ?! バッファリンじゃなくて、バファリンだけど? うふふ……」と、やや小馬鹿にしてくる相方さんにも、少しムカムカしながらも、商品パッケージを片手に説明してくる相方さんに反論することをできませんでした。


それはそうですよね。


向こうはパッケージを持っているのですから。


いくら私が能書きを垂れようと太刀打ちなどできるわけがありません。


そして、私は不貞腐れながらも、バッファリン……いえ、バファリンを飲んで出勤しました。


しかし、会社で頭痛が収まった私は不思議に思ったのです。何故、「バファリン」が「バッファリン」となったのかを――。


そこで、あまりにも気になったので、通勤時間を利用して、同じ呼び方をしていた家族に連絡を取ることにしました。




🌟🌟🌟




通勤電車の中。


家族グループLINEにて。


「聞きたいことがあるんだけど?」


「どうしたの?」


「どしたん?」


「なに?」


「なんでうちらって、バファリンをバッファリンって呼んでるの?」


すると、どうでしょう。


私のメッセージを皮切りに、家族全員の「バファリン」を「バッファリン」と呼んだことによる被害報告が始まったのです。


まず母。


母に関しては、職場でもいい年齢ということもあり、直接間違いを正させることなく、「バッファリン」と口に出した瞬間だけ「ん?」って反応をされていたらしく。


また、妹も同じようなものでした。


ただ、若いということもあり、大学の同級生たちから「あはは! いや、それまじ天然爆発してるよー!」みたいな感じで事なきを得たようです。


とはいえ、恥ずかしいのにはかわりないのですが……。


唯一、この間違いに気付いていたのは、母や私、妹より、しっかりしている弟のみ。


だが、弟もこの話題を私が言うまで、さすがに皆もいい歳だし、気付いているだろうと思っていたようです。


うん、そこはちゃんと伝えてほしい。

侮らないでくれ、天然が爆発している私たちを。


……とにかく、亡くなって時間が経つというに、私の大好きな『歯のじいちゃん』は、黒歴史という形で、時々話題に現れては、私たち家族を笑顔にしてくれています。


本当に不思議な存在ですね。


あ、そうでした!


肝心なことを忘れていましたね。


何故、「バファリン」が「バッファリン」になったかは、入れ歯のせいでした。


歯がない祖父は「バ」の発音の時、必要以上に口に空気を口に溜めないといけないので、自然にこうなっていたようです。


ではでは、また、機会があれば大好きな『歯のじいちゃん』の話を語らせてください。


以上、私の黒歴史でした!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

頭が痛い時の心強い味方 ほしのしずく @hosinosizuku0723

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ