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  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    一瞬、自叙かと誤認識してしまうほど真に迫った表現に、読む手が止まりました。
    棺桶は沢山の人に囲まれているのにも拘わらず、主人公を除き、『エミ』は人知れず死んでしまう──非常に残酷で、歯噛みしたくなるテーマですね。
    エミが主人公に助けを求めなかったところにも、裏では彼女なりの葛藤があったのかと思います。でも、エミには生きていてほしかった。
    当事者でなく、そもそもが現実のことではなく物語であるというのに、どうしようもなくそう思ってしまいました。

    作者からの返信

    往雪さん

    コメントありがとうございます。
    この短編を書いたとき、どうしようもない怒りがあって、何か書かずにはいられなかったのですが、感想をいただいて報われた気持ちになりました。
    もちろんエミに生きていてほしかったとも思うのですが、せめてあちらでは穏やかに過ごせていたらいいな、と思ったりもします。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    拝読させていただきました。
    細やかな心の動きが描写されていて素敵な短編だと思いました。
    テーマ的には難しいと思うのですが、主人公の心情がよく伝わってきて大切な友人との悲しい別れを受け止めていく様子がなんとも言えない切なさで。
    残された者たちがどのように受け止めていくのか。
    ご両親たちには主人公とはまた違った受け止め方があるのだろうなあと悲しくなります。

    最後の二段落はとても好きですが、特に
    >合わないパンプスに押し込んだ足先が痛む
    この表現でしょうか。
    主人公やエミのような生き方は、コミュニティの中ではどうしても形に嵌って窮屈な思いをすることが多いのだと思うのですが、そのことを端的に表しているなあと。

    また「飽和。」というタイトルと「生まれ変わりたかった友へ」というサブタイトルに現実の苦しさがよく出ていると思いました。一方で、根底に流れているのは「怒り」もあるのだと思うのですがそこはもう少し欲しかったような、これくらいのバランスで良かったような、そんな感想でございます。

    楽しませていただきました。
    ありがとうございました。

    作者からの返信

    島本 葉さん

    コメントありがとうございます。
    どうしようもない気持ちをむき出しにして書いた短編でしたが、温かなお言葉をいただき嬉しいです。主人公は憤っていますが、エミの両親も自分たちのできる限り心を込めて我が子を見送っているわけで…本当に悲しいと思います。
     
    パンプスの表現、そのように解釈していただけたとは…ありがとうございます。タイトルは直感で、サブタイトルは指摘をいただいて書き直したものですが、お褒めいただき嬉しく思います。

    仰る通り、根底には「怒り」があるのですが、その場の表面的なことばかりに意識が向いてしまっていると、作者自身も感じています。今になってみると、怒りだけでないいろんな思いが主人公にはあったはずなのに、それがうまく表現できていなかったように思います。島本さんが「そこはもう少し欲しかったような」と感じられたのも、その辺りの意識が足りていなかったからかもしれません。難しいですね。感想は大切に受け止めさせていただきます。
     
    お読みくださり、ありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    方角企画より拝読。
    読んだ雰囲気は北北西あたりに感じました。北と西の傾き具合は迷うのですが、北的にしっかり骨格を持った物語なのは確かなはず。
    マイノリティと呼ばれるような人らの心情や周囲の人たちの扱いというものを、汲み取りやすく書かれたお話だと思いました。

    作者からの返信

    雨蕗空何(あまぶき・くうか)さん

    お越しくださりありがとうございます。
    「北的にしっかり骨格を持った物語」の表現がかっこいいです。やはり北がベースなのですね。自分も北北西と思っているのですが、もう少し西寄りなのかも、と思うこともあります。
    自分に書けるのはほんの一部分にすぎないのですが、汲み取りやすく書けていたようで良かったです。ありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    方角企画から失礼いたします。

    繊細なテーマを扱った作品ですね。しかし、そのテーマを丁重に書き上げていると思います。
    主人公は最後帰ることを選びましたが、主人公が前を向くためには、式場に来て陽道に会う15分間が必要だったのかもしれないと思いました。
    もし、行かなかったら、主人公は「私はあがき続けたいと思う」と思えなかったのではないかと感じます。

    作品の方角は北北西にされているようですが、私もそのように感じました。

    作者からの返信

    泡沫 希生さん

    お越しくださりありがとうございます。
    たった十五分間のドラマを書きました。通夜には出ずに帰ってしまった主人公ですが、やはり来てよかったのだと肯定していただけるのはとても嬉しいです。
    方角についてはなんとなくわかりかけてきたような…。主人公が生きようと心に決める過程を描いているので、こういうところが北向きなのでしょうね。独りよがりな感情で書いた部分もあるので北北西としてみました。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    拝読させて頂きました。「私」の怒りともいえる悲痛な想いがこれでもかというほどに伝わってきました。読んだ人間の心を揺さぶり、深く考えるきっかけを与えてくれる素晴らしい作品だと思いました。同時にこれほどの力を持った小説は、生み出した作者様にも大きな負担がかかったのではないかと勝手ながら想像してしまいました。それでもこの作品を書き上げ、公開してくださった作者様に心からの感謝と敬意を送らせてください。本当にありがとうございました。

    作者からの返信

    しぇもんごさん

    コメントありがとうございます。
    まさに怒りのようなもやもやしたものがきっかけとなって書きました。元は単なる書き散らかしで、そのままポイしてもよかったのですが、物語にしてしまいました。作者にまでお気遣いいただきまして痛み入ります。少し引きずられつつ、こうしてコメントいただいて励まされたりしています。勢いに任せて書いたところもあるので、いろいろ足りなかったり拙かったりすると思いますが、お読みいただいて嬉しいです。
    ありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

     読ませていただきました。
    「エミは本当にいなくなってしまったのだ」
     エミの魂の在処はないがしろにされ、家族は家族が思い描く葬式をした。——と、けれど本当にそうでしょうか?
     もしかしたら、どうせわたしはもうそこにいないのだから、あとは家族が穏やかに式を済ませてくれればいい、彼女はそんな風に考えていたかもしれません。
     ここに来なくてもよかった、陽道は、私の友人ではないし、家族も望んでいなかったはず——というのは、ごく自然な気持の動きでしょう。けれど、「私」はここにいないエミのことを、もしかしたらここで唯一かもしれないけれど、見送れる人だったのだから、やっぱり来てよかったのだと思います。
     結局。「私」がそう考えてしまう世間の形というか、しがらみみたいなものこそ、解き放たれなければならないし、自ら幸福に生きることによって、それは一歩前進することなのだと思います。

    作者からの返信

    スロ男(SSSS.SLOTMAN)さん

    コメントありがとうございます。
    故人がどう考えていたのか残された人にはわからないのですが、現実から解放されたのは確かで、このように温かなコメントをいただき主人公もだいぶ励まされたのではないでしょうか。通夜の時点ではまだ主人公に余裕がなく感情的にも見えますが、もう少し落ち着いてきたら、今まで見えなかったいろんなものが見えてきて、ああやっぱり行ってよかった、と思えるようになっているのかもしれません。
     
    >「私」がそう考えてしまう世間の形というか、しがらみみたいなものこそ、解き放たれなければならないし、自ら幸福に生きることによって、それは一歩前進することなのだ
     
    おっしゃる通りだと思います。主人公にはしぶとく生きて幸せと思えるような人生を送ってほしいです。まずは自分自身が強くなければならないのだということを再確認させていただいた気がします。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    この度は「第一回 さいかわ卯月賞」にご参加いただき、誠にありがとうございました。
    御作、ゆげさんらしい上質かつ静謐な分で読者にひっかかりを感じさせない良作でした。
    ここに春を感じさせてくれたらどんだけ良かったか、と思いました。
    素敵な作品をありがとうございました。

    作者からの返信

    犀川 ようさん

    企画お疲れ様です。
    ざわざわする気持ちをむき出しのまま書いた短編でしたので、そのように評価いただけて驚きましたが、同時に嬉しく思っています。テーマその他、自分なりに反省するところが多々ありましたので、今後に生かせたらと思います。
    良い経験をさせていただきました。ありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    私自身は「どちらにもなりたくない」人間で、かつ自分の特性やその他諸条件のおかげで「どちらでもなく」この歳まで生きることができてしまった人間なので、「どちらかになりたい(けどなれない)」方々の苦しみは本質的には理解できないと思うのですが……自分のなりたい方を、思いに従って選択できる世界であれば、さまざまな不幸が起きなくてすんだのだろうな、とは切に思います。

    あまり本作に関して文章の技巧とか方向性とかの話をしたくはないのですが、方角を考えるなら北西のような気がします。西的な生の感情は痛いほどに感じつつも、北向き的なストーリーの形には整えられているように思うので。

    作者からの返信

    五色ひいらぎさん

    ご訪問ありがとうございます。また、いろいろ考えてくださりありがとうございました。
    本来はなくていいはずの不幸が起きない世界。性の問題に限らずとも、それぞれ事情を抱えたすべての人にとって、そういう世界であるといいですね。
     
    本当は別の作品で参加したほうがよいのではとも思ったのですが、書けなくて…。企画には、何かしら今後の創作の糧にできたらという思いで参加しました。すみません。生の感情は西向きになるのですね。自分ははじめそれを南と勘違いしていたのですが、それならばおっしゃるように北西を向いているのかもしれません。本当にたくさんのことを学ばせていただいていると思います。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    方角企画から来ました。
    安易に扱えないテーマですが、とても丁寧にしっとり寄り添う描き方をしていて、力強さと繊細さを感じました。
    方角は真北か北北西あたりのような気がしました。主人公なりの答えを出して進んで行く決意がラストにあるのと、わかりやすく読者に伝わるストーリー展開があると感じたのが理由です。
    とても素敵な作品でした。

    作者からの返信

    竹神チエさん

    ご訪問ありがとうございます。
    難しいテーマですよね。いつになっても答えが分からない…。温かいコメントとても嬉しいです。
    方角は真北もしくは北北西なのですね。まだ方角の感覚がうまくつかめていないのですが、作者も北北西あたりなのかなあと思っています。独りよがりになっていないか気になっていたので、「わかりやすく読者に伝わるストーリー展開がある」と言っていただけて安心しました。
    お読みくださりありがとうございました。


  • 編集済

    生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    拝読しました。大変惹きつけられました。

    ただ一抹の寂しさを覚えるのは、「ハルミチ」は葬儀に参列されている方が悼んでいますし、友人が大事にしていた「エミ」は主人公に哀悼されていますが、「ハルミチ」であり「エミ」であった誰かは弔われてないんじゃないかな、と。

    ご家族は「エミ」を否定していますし、「エミ」としか交流のない主人公には「エミ」としての葛藤は知りつつも「ハルミチ」については知らないままですし。

    まあ、一人の人生の総てを知った気になろうだなんて傲慢なのでしょうけど。
    故人のそれぞれの一面をそれぞれ悼んでくれる方がいるという事は、それだけできっと素敵な事ですよね。

    作者からの返信

    dedeさん

    コメントありがとうございます。
     
    >「ハルミチ」であり「エミ」であった誰かは弔われてないんじゃないかな、と。
     
    おっしゃる通りですね。主人公と付き合いのあったのは「エミ」だったけれど「ハルミチ」がいたことは知っているので、「ハルミチ」であり「エミ」であった誰かを悼む人物がいるとすれば、ここでは主人公がそれにあたるのでしょうね。でもきっとこのときは心の余裕がなかったのだと思います。

    「それぞれの一面をそれぞれ悼んでくれる方がいるという事は、それだけできっと素敵な事」とのお言葉が温かいです。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    フィンディルさんの自主企画より参りました。
    暗黒星雲です。

    LGBT当事者は中々しんどいですね。
    死に装束は自由にならないとはいえ、アレは残酷に思えました。
    しかし、主人公の彼が通夜に来てくれた事が救いになっていると感じました。

    エミさんはきっと喜んでると思う。

    では方角です。

    救いがないようで友人との繋がりが救いになっている。
    そんな物語だと思いました。
    なので方角は真北だと思います。

    感想は以上です。

    作者からの返信


    暗黒星雲さん

    お越しくださりありがとうございます。
    家族、特に親との関係って本当に難しいと思いながら書きました。エミにとって主人公は救いになれたでしょうか、そうであればいいなと思います。

    方角は、真北なのですね。自分の南西の宣言にはどうやらいろいろ勘違いがあったようで、たくさん読ませていただく中で、今は確かに北向きであると感じています。ご意見いただき嬉しいです。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    方角企画から参りました。コメント失礼します。

    似た境遇にある友人の、突然の死。仲の良い友人だったからこその喪失感が、伝わってきました。
    斎場での、主人公と友人の対比が、良い味を出しているな と思いました。

    エンタメではない、と考えられていらっしゃるのかもしれませんが、私には「人の死」を扱うエンタメ作品の一種に思えました。
    身近な人の死に触れて、自分の死生観を考えなおす。実際に、主人公は生きようと決めたようですね。この「変わっていく、成長する」流れが、エンタメなのかな と。
    ストーリーが分かりやすく、私にも読みやすかったです。エンタメ=悪ではないですから。

    という理由で、方角は真北なのではないかと私は思いました。
    前を向いて進む主人公のこれからが、明るいものであることを祈ります。

    作者からの返信

    夜桜くらはさん

    コメントありがとうございます。
    「斎場での、主人公と友人の対比が、良い味を出している」このお言葉、とても嬉しく思いました。
     
    方角はまだよく理解できていないこともあり、皆さまのご意見をお聞きできるのを楽しみにしておりました。『この「変わっていく、成長する」流れが、エンタメなのかな と。』なるほど、そうなのですね。丁寧に説明くださり、たいへん分かりやすかったです。この短編を書き始めたとき自分の中に怒りがあって、勢いのまま書いていたため、南を選んだのですが…感性と感情を混同していたかもしれません。

    主人公の未来を祈ってくださり嬉しいです。強く生きてほしいと思います。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    色々と考える余地を残すことで想像の広がりをもたせた設定に、改めて多様性の在り方について学ぶ貴重な機会となりました。友人の死を受け入れられない心情がよく伝わってきた印象です。このテーマは中々書くのが大変だったと思いますが、全体的に上手くまとまっていたと思います。
    素敵な小説をありがとうございました。

    作者からの返信

    刹那さん

    感想ありがとうございます。
    勢いに任せて書いたようなところもあったのですが、うまくまとまっていたと言っていただけてほっとしています。
    また、レビューもいただきとても嬉しかったです。主人公は二重の意味で友人を失っていますので、おっしゃる通り、まさに「本当の喪失」なのだと思います。
    こちらこそ、お読みくださりありがとうございました。


  • 編集済

    生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    エミは死に縋らなければならないほど苦しんでいたというのに、その生きた証があっさりとなかったことにされている

    という一文に強烈なメッセージを感じました。この視点は誰にでも描ける物ではないと思います。単に面白い面白くないで割り切れないけれど、この世界にとって意味のある作品だと感じました。
    所謂エンタメ作品ではないですが、エンタメに落とし込まず、淡々と誠実さを優先させた点にもメッセージというか、意図を感じました。僕はこのやり方が正解だと思います。

    作者からの返信

    真田宗治さん

    コメントありがとうございます。
    注目してくださった一文ですが、本人が話さないことには周りも知りようがないので仕方ないと思う反面、話したところで受け入れてもらえるかどうかは別の話だし、そもそも話せる環境にあったかどうかも分からないし、作者としてもとてももどかしく思っています。
    精いっぱい書いたので、誠実だと受け取ってくださったことが嬉しいです。
    お読みいただきありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    エミの抱えていた生きづらさ、それを改めて葬式の場で突き付けられる主人公。
    周囲の人たちにありのままの自分を受け入れられないことの苦しさが描写の端々から感じられて、胸が痛くなりました。
    主人公の心の中にはずっとエミは残り続けるのだと思います。
    ゆげさん、ありがとうございました。

    作者からの返信

    未来屋 環さん

    コメントありがとうございます。
    第三者なら受け入れてくれるようなことでも、家族となると急に難しくなったり、する気がします。何かお届けできたのなら幸いです。
    未来屋さんのおっしゃるように、せめて主人公の心にはエミが残り続けられたらいいなと思います。
    お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    こんにちは。方角企画からきました。

    友人の死をきっかけに自らの人生も考える、静かですが強さもある物語のように思いました。

    指摘ありの企画なので指摘ですが、「細かい化粧」とは言わないような気がします。なにかもっと適切な表現があるのでは。

    ラストの一文、やや唐突に感じました。それまでの流れを壊すような印象を受けまして、表現方法を変えるか、他の文章にするか、なにか方法があるのではと感じました。

    方角は西北西かなと思いました。

    作者からの返信

    オレンジ11さん

    コメントありがとうございます。
    死に触れることで「生」について考えることってあるのでは、と思います。強さを感じ取ってくださり嬉しいです。
     
    化粧のより良い表現、探してみたいと思います。最後の一文は唐突な印象だったのですね。ここは他にも指摘を受けており、やはり良くなかったのだと反省しています。ご指摘を参考に修正しようと思います。
     
    方角は西北西なのですね。初めて参加するのですが、ご意見を聞けて楽しいです。お読みくださりありがとうございました。


  • 編集済

    生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    【4/18追記】
    所要でコメント遅れましたが、なかなか考えさせられるお話でした。


    >なんだかんだ気が合ったのは、互いに寂しかったからかもしれない。私は家族から遠ざけられており、エミは表面上は良好な関係を保っているように見えて、実際のところは何も語ろうとはしなかった。

    ここは書き方が曖昧過ぎるので明確にすべき。
    表面上は良好な関係に見えたが、「おそらくはそうではない」という示唆が必要な場面です。

    >訃報を受け取ったのは今朝のこと。エミが亡くなってすでに三日が経っていた。

    エミの死因についての言及が皆無なのが気になります。
    あえて触れないという手法もありとは思いますが、もし交通事故で死んでいたら話が成立しないわけで。一言「自殺だという」と加えるだけですっきりします。

    或いは後に出る「私も死のうと思ったことがある」を受けて、どちらとも取れる死因にして、受け止め方は主人公や読者に委ねる、という書き方もいいですね。

    >試着を繰り返して喪服を選び

    パンプスだし「今更着れない」とも言ってるので女性用とは思いますが、ここは明示した方がよいと思われ。男性として弔われたエミとの対比になりますから。

    どちらの服を選ぶか葛藤する場面があっていいかなと考えましたが、主人公を「家族と反目してでも女を選んだ側」とするなら、悩まない方がよいですね。もしそうなら、エミの方は「家族と折り合いをつけたように見えて、実は悩んでいた」として、対比的に描いてもいいかもしれません。

    >受付にエミの同僚らしき人たちの姿が見えた

    ここも同僚がどんな様子なのか気になります。
    具体的には女装カフェの同僚なのか、もしそうなら服装はどうなんだろうとか。
    個人的には、ここはエミの女装を知らないカフェまは違う同僚で、一般的な喪服の方が残酷さが増してよいかと思います。

    >時刻はまだ、通夜の始まる十五分前だった。

    てっきり通夜が始まってから参加したものだと思っていました。他に参列者もいましたし。
    女性の服装なので人目を避けたということなのかな、とも考えましたが、テーマパークは行けるわけで。まあ葬式となると別というのはわかりますが。ここら辺の感覚の違いは、言及があった方がいいかもしれません。

    あと、この一文で締めるなら何かしらの意味があるのかなと考えましたが、思い当たりませんでした。人目を避けてのことなら、結局世間体を意識している自分への皮肉とも読めますが、それなら迷わず女装の喪服を選んでる場面と矛盾しますし。ふうむ?



    拝読。
    今回も男の娘の話ですが、テーマ取りが上手いですね、読後にしんみりと考えてしまいました。性の問題でなくとも、世間に胸を張れない本性を秘めてる人間には刺さるのではないでしょうか。私はフルオープンなので対象外ですが、人の尊厳に関わる話で、想いを馳せてしまいました。

    主人公がエミに共感しながらも違う生き方を選ぶのは、個人的には好ましいです。エミにすれば死後にどうなろうが構わないのでしょうが、葬式は残された人のためのものですから、主人公が受け止め、生き方を決めるのは自然で、訴えが響きます。

    テーマは文句なしですが、反面、内容的にはちょいちょい脇の甘さを感じます。エミの設定が曖昧でテーマが多少ぼやけたり、締めくくりが弱かったり。ここら辺は読みながら指摘した通りです。

    あと指摘していないのは、タイトルですかね。
    正直、この話にはっきりとした「飽和」の印象はなく、雰囲気あるタイトルとは思いますが浮いているように感じます。作者に「飽和」のイメージがあるなら、それをくっきりと、読者に伝わるよう際立たせる必要があるかと。明確に何かが飽和する場面や描写を挿入するとか。

    もう一つ欲を言うなら、最後のインパクトでしょうか。主人公はエミの素性も家も知っていて、これはまだ通夜の話です。まだ何かやれることがありそうだな、と思いました。

    例えば、翌日の葬儀にも参列し、棺に入れる遺品として、エミが女として生きた証を添えるとか。遺族に白い目で見られても、今の主人公なら覚悟を決められる気がします。なんなら通夜は世間体を考えてメンズで行き、葬儀ではレディスに着替えて行く……みたいな展開もよさそうです。実際に描かずとも、「やる」と決めた場面で終わってもいいかも。

    ……なんて想像が膨らむくらいには、良作でしたw
    面白かったです。


    【4/18追記】
    改訂分読んできました、

    >実際は家族に本音を語ることもできず、心の奥では苦悩に苛まれていたのだ。

    前よりはいいですが、これは書きすぎです。
    本音を家族に最後まで見せることなく死を選んだエミですから、主人公にもあけすけに心の内を打ち明けていたとは思えません。同じ境遇でおるが故に慮れるものがあるだけで。

    そこら辺の距離を考えると、この時点では「実際は家族に本音を語れていないように見えた」くらいに留めておく方が、葬儀で目の当たりにする現実のインパクトは強くなるはずです。

    死因と喪服、式前に帰る部分はよいと思います。

    >説明を付け加えてもいいけど、ごそっと削ってしまうのもありのような気もしています。

    そうですね。
    この長さならラストシーンを邪魔しないために、余計な場面は増やすべきではないかもしれません。
    引き算、身についてますねw

    >「一般的な喪服の方が残酷さが増す」という状況がうまく想像できませんでした。すでにだいぶ辛い状況なので、聞くのは少し怖い気もしますが…コメントに追記いただければと思います。

    単純に、ここで女装した同僚が出てきたら主人公やエミ(多分)が慰められてしまうという話ですね。私は普通の仕事の同僚の方が、と書きましたが、ここはカフェの同僚にして、
    「同じ境遇の仲間でさえ、世間体の前では自分を偽る。それはエミを男性として弔った家族らと何ら変わらない行為だ」というメッセージを加えたほうが強烈かも。

    理解のなかった家族はいざ知らず、同じ立場の者さえそうなのか。それを現実と受け入れるのか。自分はどうするのか……なんてことを主人公(と読者)に問う場面にできるかなと思ったんですが、通して読むと蛇足になりそうなので、削る方に賛成しときます。

    >自分だけでもエミとしてお別れしてあげたかったのが理由かなと思います。

    ここ、最重要ですね。

    >でも主人公もきっといろんな感情でいっぱいだっただろうと思うので、少しそんな描写を入れられたらいいなあと思います。

    そうですね。ここが今作の肝になるはずです。
    書き直したラストも読みましたが、これでもまだ足りていません。

    これは一案ですが、最後に主人公を泣かせてみてはどうでしょうかね。「飽和」すると溶けていた物質は表れ出てしまいます。主人公の心が飽和し、涙となって表れ出るという方向でタイトルと重ねる手もあるかなと。「私はあなたのために泣く」ともありますし、うまく繋げる必要はありますけどね。どんなふうに泣くのかとか。

    >どちらもエンタメ感があってインパクトすごいです。ですが、今回はいかせないかも…完全に作者のキャパ的な問題です……。

    まあ私はエンタメ屋なのでw
    こういう私小説に近い作品なら、現実に即した展開のほうがよいとも思います。想像通り、リアルな体験から書かれた作品のようでしたし。加工しすぎるとその良さが失われやすいというのはありますからね。

    >「葬式は残された人のためのもの」と言われてはっとなりました。

    これは昨年末に母をなくした際の、私の体験からです。物語に大事なのは、真実を核にすること。それが感動やリアリティを生むものです。いわゆる「本物」ですね。

    最後にもう一つ。
    書き忘れましたが、サブタイトルはもう少し工夫が欲しい気はしますね。せっかくなので。

    またご相談があれば、近況ノートの方にどうぞ。
    いつでも大歓迎です。

    作者からの返信

    【4/19追記(見やすかったのでマネさせていただきました)】
    梶野カメムシさん

    感想とご指摘、ありがとうございます。
    一言でいうと、友人を見送るために通夜に行ったが辛くなって儀式の始まる前に帰ってしまったという話でした。
    すぐに修正できそうなところは直してみました。
    エミと家族との関係、エミの死因、喪服の部分に関しては、わかりやすくなったと思います。
    以下は、手を加えはしたけれど、これからじっくり見直していきたいと思っている部分です。通夜前に帰ってしまうというストーリーは変えていません。
     
    >同僚がどんな様子なのか気になります。具体的には女装カフェの同僚なのか、もしそうなら服装はどうなんだろうとか。

    女装カフェの同僚たちが数名で来ているつもりでした。主人公も以前働いていたので、一人くらいは顔見知りがいたのかもしれないし、服装はもちろんメンズなんですが、真剣に悩んでレディースで来た子もいたかもしれません。説明を付け加えてもいいけど、ごそっと削ってしまうのもありのような気もしています。
     
    >ここはエミの女装を知らないカフェまは違う同僚で、一般的な喪服の方が残酷さが増してよいかと思います。

    すみません、「一般的な喪服の方が残酷さが増す」という状況がうまく想像できませんでした。すでにだいぶ辛い状況なので、聞くのは少し怖い気もしますが…コメントに追記いただければと思います。
     
    >てっきり通夜が始まってから参加したものだと思っていました。他に参列者もいましたし。

    通夜の始まる前ということが分かるよう、ちょこちょこ加筆をしました。実は先月、知人が亡くなり通夜前にお参りにだけ行きました。各々焼香をあげてそれから席に着いて、といった感じでしたので、主人公が他の参列者にならって儀式の前にお参りする場面を書きました。
     
    >この一文で締めるなら何かしらの意味があるのかなと考えましたが、思い当たりませんでした。

    儀式の前に帰ってしまったことを強調したかった一文ですが、うまくいかなかったようです。他の方からも指摘がありましたし、やはりまずかったのだと思います。
    主人公がすぐに帰ってしまったのは服装や世間体が理由ではなく、分かってはいても現実をつきつけられてショックが予想以上に大きかったのと、自分だけでもエミとしてお別れしてあげたかったのが理由かなと思います。エミの母親の視線(主人公の思い込みかもしれませんが)や場違い感など、会場にいづらい雰囲気も醸し出していたつもりでした。問題のところは変更しました。
     

    タイトルについて。
    通夜に行ったときにいろいろ思うことがあって、毒吐きのつもりであふれてきたものを書き殴っていました。そうしているうちにどうしても書きたくなって物語にしました。考えてみたら、いっぱいいっぱいになっていたのは作者自身なので、これをタイトルにしたのはおかしかったですね。でも主人公もきっといろんな感情でいっぱいだっただろうと思うので、少しそんな描写を入れられたらいいなあと思います。

    ラストについて。
    >翌日の葬儀にも参列し、棺に入れる遺品として、エミが女として生きた証を添えるとか。

    わあ、これは強烈ですね。何かそっと添えてあげたい…でもご遺族は複雑だろうな、いろいろ考えてしまいますね。

    >通夜は世間体を考えてメンズで行き、葬儀ではレディスに着替えて行く……
     
    こういうのもよいですね。
    どちらもエンタメ感があってインパクトすごいです。ですが、今回はいかせないかも…完全に作者のキャパ的な問題です……。

     
    たくさんご指摘もありましたが、面白かったといっていただけたので嬉しいです。「葬式は残された人のためのもの」と言われてはっとなりました。ゆっくり改稿進めていきたいと思います。お読みいただきありがとうございました。


    【4/19追記への返信】
    追記ありがとうございます。

    >この時点では「実際は家族に本音を語れていないように見えた」くらいに留めておく方が、葬儀で目の当たりにする現実のインパクトは強くなるはずです。
     
    書きすぎの部分は直しました。
     
    >単純に、ここで女装した同僚が出てきたら主人公やエミ(多分)が慰められてしまうという話ですね。私は普通の仕事の同僚の方が、と書きましたが、ここはカフェの同僚にして、
    「同じ境遇の仲間でさえ、世間体の前では自分を偽る。それはエミを男性として家族らと何ら変わらない行為だ」というメッセージを加えたほうが強烈かも。

    ご説明ありがとうございました。言葉としては理解できたと思うのですが、感覚的にはぴんときていないというか…少し悩んでしまいました。おっしゃるように短い話でもありますし、ここはばっさり削りました。

    >これは一案ですが、最後に主人公を泣かせてみてはどうでしょうかね。
     
    おお、飽和と涙、うまく繋がりますね。この主人公だったら声を上げて、ではなく、静かに歯を食いしばって泣くのかな、と想像しました。この案をお借りして、ラストを書いてみたいと思います。大事な部分なので、じっくり考えたいです。

    >加工しすぎるとその良さが失われやすいというのはありますからね。

    創作とはいえ、あまり振り切ることもできませんでした。……でも主人公には泣いてもらおうと思います。

    >これは昨年末に母をなくした際の、私の体験からです。物語に大事なのは、真実を核にすること。それが感動やリアリティを生むものです。いわゆる「本物」ですね。

    よいお話を聞かせていただきありがとうございます。もう一度エッセイを読みに行きましたが、涙が出そうでした。
     
    >書き忘れましたが、サブタイトルはもう少し工夫が欲しい気はしますね。

    タイトルが抽象的な雰囲気なので、あえて直球のサブタイトルにしたように覚えています。何か思いつくだろうか、がんばってみます。


    小説本体よりもコメントのほうが長いの、初めてでした。ラストが書けましたら、近況ノートにお邪魔させていただきます。たくさんのご助言ありがとうございました。

    編集済
  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    理解の乏しさ、寛容性の欠如……いろいろ理由は思い浮かぶけれど

    私は敢えて、世間体による同調圧力と体面
    というテーマで読み解いてみました。

    仮に、周囲との付き合いが淡白な家族だったら
    それほど「エミ」に抵抗は感じなかったんじゃないかな、
    と、淡い希望を持ってみたり……

    或いは、同じ世界同じジャンル同じ志向にあっても
    その中での、比較とマウントは、存在していたり……
    そういった残酷さも垣間見えます

    人は、誰かと比べないと生きていられない生き物なのでしょうか
    現代の病巣のようにも思えます
    あたしは、それがたまらなく哀しく……苦しいです

    心に残る物語、ありがとうございます✨

    作者からの返信

    天川さん

    コメントありがとうございます。
    世間体による同調圧力、たしかにあるのかもしれませんね。
    正直、家族だとか親との関係って難しいと思うし、よく分からないのです。でも作中には、きっとみんな愛されていたに違いない、そういう思いも込めています。
    なかなかうまくは書けませんでしたが、たくさんのことを考えてくださって嬉しかったです。
    こちらこそ、お読みくださりありがとうございました。

  • 生まれ変わりたかった友へへの応援コメント

    染みた。
    少なくとも「エミ」はこの記録に残る。

    作者からの返信

    深海くじらさん

    お読みくださりありがとうございました。
    それには気づきませんでした、こうして残すことができてよかったです。