3.淘汰の時代

『ヒト』族が生み出し、進化させてきた『技術』のちからは、『世界』に変容を強いるちからでもあった。

『魔法』の代替として手にした『技術』のちからは、そのリソースをもっぱら『世界』から収奪することで得ていたからだ。

 結果、『ヒト』族版図の規模が拡大し、発展が加速していくと、己の弱点をおぎなうちから、己が強者であることを担保してくれるちから――『技術力』を維持しつづけんが為、そのリソースを『ヒト』族は互いが互いに奪い合わなければならなくなってしまった。

 先天的に付与されたのでなく、後天的に獲得したものであったからかも知れない。

 能力を道具として使いこなすのでなく、能力に道具として使われる、逆転が生じていたのだった。

 繰り返される争い。

 破壊と殺戮。

 離合集散。

 興隆衰亡。

 数限りない争いのなか、『ヒト』族の群は、集落から都市、そして国家へと規模を拡大しながら、

 数千、数百を数えて存在していた群――集団のトータルを数十のオーダーにまで減らしていった。

 社会学者、あるいは生物学者のなかには、そうした悲惨の連鎖を『間引き』――先天的な生物としての特性と後天的に得た社会動物としての能力、そのギャップを解決するための集団無意識領域に起因する代償行為と論ずる向きもあるが、もちろん、これを論証することは困難であろう。

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