2.『上代』のおわり
情勢が変化のきざしを見せはじめたのは、『ヒト』族が、己が手でつくりだした『技術』のちからで、徐々にその勢力を強めだした頃からであったろう。
一般に、被捕食動物は捕食動物にくらべ多産である。
進化上の摂理と言うべきだろうか――種が絶えないための一助としてか、被捕食者と捕食者の数的関係は、誰定めたかそうなっている。
この例外が『ヒト』族だった。
生来『魔法』をその身に宿さぬ『ヒト』族は、『人間』種族は言うにおよばず、生物としては『弱者』に区分される存在であり、事実、『技術』のちからを手にするまでは、その種族的命脈ははなはだ危ういものだった。
『妖精』族と較べて短命でもあり、したがって、『ヒト』族は多産の傾向があったのだ。
その『ヒト』族が、『魔法』に拮抗しうるちからを手にした。
結果、地に横行していた『獣』は狩られ、『魔』なるモノは封じられて、そのぶん『ヒト』族の版図は拡がっていった。
問題は、ちからを手にした『ヒト』族が、『強者』として振る舞うことが可能となったにもかかわらず、生物的には『弱者』のまま――多産動物のままな事だった。
多産な捕食者――数の多い収奪者。
こうした存在が、『世界』――そして、そこに住まう他の生き物たちに負担にならない筈がないからだ。
やがて、ローレンシア大陸西部域のあちらこちらに散らばっていた『ヒト』族版図の数々が、たがいに境界を接し、領域全土をおおってしまうまでになると、『世界』は新たな
『ヒト』(族)の世――『現代』のはじまりである。
戦争の時代――そう換言しても良いかも知れない。
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