第1章 【先見の書】と【Z-1】

1話:愛を知らない少年

まだまだ初心者なので寛大なお気持ちで読んでいただけるとありがたいです。

─────


 愛とは何だと思いますか?


 恋人との愛、家族との愛、仲間との愛、親友との愛、宝物への愛、性欲としての愛。

 色々な『愛』を思い浮かべると思います。この中のどれもが、何かしらに対して強い感情を抱くという点が共通しています。


 問いかけたのは僕ですが、僕は『愛』が分かりません。


 確かに生みの親は僕が4歳の時に事故死、姉は父方の家へ引き取られるときの移動中に行方不明など肉親をほぼ全て失っていますが、母方の祖父母に引き取られてから大事に育てられていますし、精神肉体共に理不尽な暴力も受けていません。


 愛が分からないのは本当にというだけなんです。


 僕はまだたったの9歳で、恋愛などとは全くの無縁なので、こんな痛い事を言えるのだと思うかもしれませんが、僕の育ての親の祖父母への愛情や飼っている猫への愛情も感じた事がありません。


 だからといって夜な夜な猫や犬などの動物を殺したり、人の心が分からないから解剖したりなどのサイコパスな訳ではないと自分では思っています。


 唯々僕にとっての愛は強い気持ちを向けるという事しか知らないので殺意とほとんど変わりが無いというだけです。


 こんな僕ですが、趣味があります。それは読書です。

 自分の知らないことは大体本に書いてあるので、分からないことがあれば本に答えを求めます。まぁ、分からない時も多々ありますが。


 僕が本の虫になったの理由わけは僕の住む場所が少なからず関係はしていると思います。スペルタル帝国の北西にあるメルカド管区の中でも更に北にあるホースト村という田舎に僕は住んでいて、田舎のくせに村にある別名がついています。それは、図書村としょそんです。

 そうなんです、僕の住んでいる村はスペルタル帝国の中でも1番本の多い村として少し有名なんです。村だけじゃなく町なども含めると全然低いですが。


 ですが腐っても、帝国で1番本のある村なので私の祖父母の家にも100冊程の本があります。


 そんな僕の1日を、今日は紹介していこうと思います。


◆◆◆◆◆


 朝起きて最初にする事は昨晩遅くまで読んでいた本の整理です。これをしなければ部屋から一歩も出られないので。

 ある程度片づいたら、洗面所へ行き顔を洗い口も軽くゆすぎます。


 次はリビングで朝食を食べます。僕の朝食は毎朝、黒パン,自家製リンゲン菜と鶏胸肉のクリーム煮,牛乳と決まっています、結構油が少なくてとても美味しいです。


 ささっと朝食を食べ終わると、歯を磨き肩まである髪を後ろで結び、ある場所で借りた本を返すのと、新しく借りる為に何冊か本を持って外へと出かけます。


 僕は早起きが苦手で、この時点で11時なので外では僕と同年代の子供達が遊んでいます。元気いっぱいで良いですね。僕ですか?いやぁ、お恥ずかしい事に運動神経が良くないもので体を動かすのは苦手なんですよ。


 そうして歩いている内に、この村のガキ大将であるタッペルくんから声をかけられました。


「あっ!家から全くでねぇで毎日毎日本ばっかり読んでる頭でっかちがいる!へへへ、今お前が読んでる本俺にも見せてくれよ、俺が中身を確かめてやる!」


 挨拶だった様です。いつもは急いでるのではぐらかして逃げるのですが、今日はいつもよりも人数が多く、完全に囲まれています。それならこちらからも挨拶を返しましょう。


タッペルガキ大将くん、君だって君の家の庭に生えている大きな樫の木の下にふしだらな本を隠して偶に読んでいるじゃないか、ごめんけど今僕の持っている本にはそういう性的な描写が無いんだ。そういった本に興味があるならまた次の機会に声をかけて欲しい、時間があれば話を聞くよ。」


 タッペルガキ大将くんは返事を貰えたのがよっぽど嬉しかった様で、顔を赤らめて泣きながら逃げて行きました。それでは早く目的地へと急ぎましょう、本が僕を待っています。


 村と面しているホーストの森のすぐ近くに、【魔女の小屋】と呼ばれている少し小さな家があります。大きさは大体20㎡位のはずなんですが、中がぎっしりと本棚と本で埋まっているため、体感は2/1程の広さに感じます。

 実はこの小さな家こと【魔女の小屋】には誰一人として入ってはいけないと村の子供達には強く言い聞かされていて、「あの小屋に行くと『先見の魔女』に脳みそを引きずり出して殺されるぞ。」と昔は良く言われた物ですね、しかし村中にある本を全て読み切ってからは読む本が無くなりこっそりとこの小屋に忍びこんでは本を借りて家にもちかえって読むという日々を送っています。


「よし、誰も居ない……。」


 周りに人が居ないことを確認してダッシュで家の中まで駆け込む!といっても扉を開けるために元々この家のポストの中に隠してあった鍵を僕のポケットから出して使わないと入れないんですけどね、案外【先見の魔女】は防犯意識が低かったのかも……?


 キィィィと音を立てながら扉が開く。まさに魔女の小屋にふさわしいインパクト、様々な言語で書かれた本から、絵本、哲学について書かれた書物まで色々な物があり、変わった物だと石碑や巻物だとか、この小屋だけで村の全ての蔵書数を超えているほどの書物があるだろつ。


 しっかりと分けられた本棚の区分に従って借りていた本を返していきます。こんなにも多かったここの書物も残すは後3冊かぁ……早いですね、時間がたつのって。

 題名はそれぞれ『私の小石とあなたの小鳥』,『忘れられた国の王』,『あいのほん』全て絵本で、読み終わるのにそこまでの時間はかからないでしょうがしっかりと噛みしめて読みます。


 1冊目、2冊目と本を取り出すとある違和感を感じる。なぜここの本の整理は完璧なのに『あいのほん』だけ間違っているのだろうと。

 『私の小石とあなたの小鳥』も『忘れられた国の王』も同じくスペルタル語でのなかでも最後の方の言葉なのになぜ急に『あいのほん』が来るのだろうか。

 しかし、こんな疑問はこの『あいのほん』を引き抜くと同時に消えた。


 『あいのほん』を本棚から抜き出すとズズズと音を立てて本棚が動き、謎の小さな部屋が開く。


 なるほど、隠し扉の目印だったんですね……。というかまだ秘密があったんですねこの小屋。


 少しするとその小さな部屋に明かりが灯り、明るくなる。まるで、僕を誘って居るかの様だった。

 湧き上がる好奇心という名の欲望には逆らえず、気づくとその部屋に入り、ついていたボタンを押してみる。


 扉が閉まり、中に閉じ込められウィーンという音だけがなる、なにかに押されているようなそんな味わった事の無い感覚を耐えながら周りを観察してみると、正面右にある光る板が下をさす矢印とB1という文字を写しだしているのが目に入る。

 チン!となったかと思えば正面の扉がひらき、先程とは違いそこには巨大な薄暗い空間が広がっていた。


 名をつけるのなら『超巨大図書館』と言っても過言ではないと思う。


 そんな超巨大図書館の中央と思われる場所に向かって歩いて行くと、そこには1つの薄い板と筒状のガラスの中で眠っている全裸の少女が居た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る