会食はつづく
俺たちを含む
もっとも、ここでコミュニケーション能力をいかんなく発揮するのは一部のようだ。
談笑しているのは今晩の主役
冷たい目をした叔父は黙って聞き耳を立てている。
桂羅は食べる方に忙しいようだった。恐らくは長い寮生活でテーブルマナーは学んだものの美食を口にする機会はなかったのだろう。俺もだが。
そして俺は左隣の
「――そうか、剣道で初段をとったのか。俺も中学の頃にとったな」すっかり錆びついているが。
「姉様は中三でとったのですよ」
現在中二の
まあ俺も似たようなものだ。とかく男の精神は成長に時間がかかるものだ。
「今度一度お手合わせを」
「そうだな――って道具も何もないが」
「我が家に一通り揃えていますよ」
光輝が言うには敷地内に道場まであるらしい。どんな家だ?
俺の生まれ育った祖父の邸宅にもあったが、近所のこどもに武道を教えるために作った道場だぞ。ここではそんなことをしていないだろう。身内のためだけに用意したのか?
「泉月お姉さまも剣道と合気道で初段もちです」
「一度見てみたいな」あいつの道着姿。
そう言えば俺の父母は何かの武道大会で知り合ったと聞いたな。東矢家もまた代々何らかの武道をやらせているのか。見た目だけではわからないものだ。
少なくとも優雅な所作の真咲が剣道をする様も思い浮かばない。真っ白なドレス姿の真咲は可憐な花だ。
「何を楽しそうに話しているの?」真咲が俺と光輝に向けて言った。
「今、剣道のお手合わせを兄様にお願いしていたところだよ」
「まあ楽しそう」
「オレのはすっかり鈍っているけどね」俺は軽く頭を掻いた。
ハハハという俺の笑いは虚しく響いた。和紗叔母の視線が痛い。何かやらかしたかな。
「私も観てみたいわ。
「君の従兄――
「よくご存じで。でもオレはあいつにはまるでかなわないっすよ」
また和紗叔母の痛い視線が。同時に右隣の
「いて!」
テーブルの下だから誰も気づかない。しかしそれでさすがの俺も気づいた。どうやら俺の態度言葉遣いが和紗叔母の不興を買うらしい。これは少し自重しなければなるまい。
「ねえ――お兄さま、お姉さま。今晩は泊まってくださいまし。わたくし、おひとりずつお話がしたいですわ」
「は?」俺と桂羅はひきつったような顔を見合わせた。
泉月は無反応。想定内の顔だ。
「明日……」も普通に通学するのだがと言おうとしたら、「朝早くお送りしましてよ」ときた。
マンションに戻って制服に着替えて登校かよ。何時起きになるのだ?
「よろしいのですか?」楓胡がワクワクを隠さない。
これは決まりだと俺は思った。俺たち四人のイニシアティブは楓胡が握っている。楓胡が微笑んでねだると俺たちに拒否権はない。
「部屋を用意させよう。ゆっくりしていきたまえ」
叔父が笑ったように見えたのは気のせいか。
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