そして俺は対面する
その後、ひとりで学校周辺を散策し、最寄り駅周辺を散策したら夜になってしまった。
新しい
「お前の机の上にあった封書の中身を画像で送る」と返事が来た。
やはり肝心の封書を置いてきてしまっていたのだった。
早く送ってくれよと思ったが、忘れた俺が悪いのだから文句も言えない。
俺は感謝の返信を叔父に送った。
ようやく住処となるマンションの住所を手に入れた。まるでひとつひとつクエストをこなしていくゲームの主人公だ。アイテムはあちらこちらに落ちているのか?
俺の住処は高層マンションの二十九階らしかった。そこは学園最寄り駅から電車で十分乗った駅のすぐ傍だった。
おお! 駅から見えるじゃないか。
そこにおれのきょうだいが待っている。まだ会ったことのない――いや生まれる前は胎内で同居していたのだろうが――きょうだいが。
何だか、緊張するな。
連絡のしようがなかったので、いきなり押しかける形になるが仕方あるまい。
三十階建てのマンションに到着した時には午後七時を過ぎていた。
玄関の自動扉が二重になっていて、一つ目は開いたが、二つ目を開けるには鍵が必要だった。
俺は部屋番号を押してインターホンを鳴らした。
「はーい」という女性の声が聞こえた。
え、女の人?――と思いつつ「
「ほのかちゃんね」という明るい声がして扉が開いた。
途中にいくつもの関門があり、エレベーターさえキータッチなしで呼ぶことができない。
鍵を持たない者が部屋まで辿り着くのは容易ではないことがわかった。
インターホンのやりとりを繰り返し、そしてようやく二十九階の一号室に着いた。
呼び鈴を鳴らすと間もなく扉が開き、眼鏡をかけた三つ編みの女の子が出てきた。
「あっ!」
俺は思わず声を発した。
新聞部の女子生徒ではないか。確か
予想外の人物の登場に俺は混乱した。
「え、あの、こちらは……?」部屋を間違えたか?
「私たちのおうちよ、
「えええ!」
それまで同じ日に生まれたきょうだいと言われ、俺は双子の兄のような人物を思い描いていた。同い年の従兄
まさか双子の相方が女子だとは思いもしなかった。
「さ、中に入って。疲れたでしょう、みんな待っているわ」
「え、みんなって?」誰のことだ?
これ以上予想外のことは想像もできない。
彼女に案内されて、さらに奥へと行き、扉を開いて広いリビングに入った。
そこで待っていたのは長髪とショートボブの女子二人だった。しかもショートボブの方は何度も出くわした相手だ。
「あ、お前……」
驚いたのは相手も同じだった。
「な、なんで、あんたが……」
「ほのかちゃんよ」と三つ編み眼鏡の伊沢が笑った。「これで同じ日に生まれたきょうだい四人揃ったわね」
「「えええ!」」
後で知ったのだが、顔合わせ前に全員の顔を知っていたのは
編入試験の時から何度も顔を合わせているショートボブの娘が
俺と
楓胡は目を細めて楽しそうに笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます