結局、占いの結果は変わらなかった。咲は一人で祭壇の前で呆然と立ち尽くしている。

 ……三万人が死ぬ。

 そしてその死者の中には私の家族や友達や、近所の人たちや、それから、……私自身もふくんでいる。(自分の死を占ったのは初めてのことだった。ほんとうに嫌な、冷たくて恐ろしいお化けのような死にそっと背中から抱きしめられたような、そんな感じがした)

 やがて、咲は力なく(へなへなと)床の上に座り込んだ。

 どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうし……。(何度も何度も、同じ言葉を繰り返す)

 どうしたらみんなを救えるのだろう? 私に今できることはなんだろう? なにをすればいい? どうすればいい? どうすれば、……、どうすればいいの? お母さん。


 悩んだ挙句、咲はいつものように幼馴染の秋月仁くんにだけ、占いのことについてお話をすることにした。

 咲の占いには変わった制約があった。

 占いの結果を誰がに話すと『その占いを変えることができなくなってしまう』のだ。どうやら咲から遠いところにいる人に占いのことについて話をすればするほど、その制約は強く働いてしまうようだった。咲の近くにいる人にならその制約は弱く働いた。(制約の距離は時間と場所に影響を受けるようだった)小さなころから占いをしながら人助けをしては咲はいろんなことを(あれこれと)試しているうちにある一つの結論に辿り着いた。

 それは自分の運命の相棒(パートナー)が自分の小さなときからの幼馴染である隣の家に住んでいる男の子、秋月仁くんであるということだった。

 秋月仁くんだけ占いのことを話しても未来を変えることができた。今のところ、占いの話をしても占いの未来を変えることに制約が働かないのはこの世界に仁くんただ一人だけだった。



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