本当はお父さんにも相談がしたい。(きっと力になってくれる)でもそれはできない。もしお父さんに占いのことを話して仕舞えば、もう未来は変えられなくなってしまうからだ。

「どうしよう。仁くん」

 放課後の時間に春原神社の隅っこにある大きな木の下に座り込んでいる咲は言う。(その木の下がいつもの咲と仁くんの小さな子供のころからの作戦会議の場所だった)

「まあ、いつも通りだろ」と仁くんは言った。

「いつも通り?」

 咲は体育座りをしていて、自分の脚に埋めていた顔を上げる。

「なあ、小学生のときにさ、助けた太郎のこと覚えてるだろ?」

「覚えてる」と食い気味で咲は言う。

 仁くんが言っているのは、本来なら事故で亡くなる運命だった子犬の太郎のことだ。咲は仁くんと一緒に太郎を助けた。占いから未来を予測して、行動して、その未来を変えたのだ。咲の占いは百パーセント絶対に当たるが、占いの結果を知った上でその占いを回避しようとして意識的に咲が行動することで、その未来を変えることもできた。(占いの未来を変えられることがわかったときは本当に嬉しかった)

「みんな助けようぜ」

 にっこりと笑って(あぐらをかいて座っている)仁くんは言う。

「私だってそうしたいよ。ても三万人だよ。みんな助けるなんて無理だよ」

 泣きそうな顔をして(実際に泣いていたかもしれない)咲子は言う。

「できるさ。咲なら。いや、違うな。俺たちなら絶対にできるよ。咲」仁くんは言う。

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