第48話: ありがとうございます! ありがとうございます!
※ホラー注意
グロテスクな表現もありますので、注意要
読まなくても、本編の話には影響しない感じ、いわゆる番外編みたいな?
――――――――――――――――――――――――――――
──■■■村関係書類(極秘)──
原本記録は破損や劣化が酷く、現在では『■■■村』という文字しか読めない。また、書き写した写本も残されていない。
そのため、当時の『■■■村』に関係していると思われる新聞や証言のメモなどを保管、あるいはおそらく書かれていたであろう文字を補足する形で、要点をまとめている。
この記録はあくまでも様々な記録の切り取りであると同時に、そもそもの原本に記された出来事が現実に起こったのか、その明確な資料は見つかっていない。
なので、現状のこの記録は信頼性に欠けるが、必ず保管しておくようにとの通達が○○年前よりされているので、新しい記録、あるいは補強するような記録が見つかり次第、この記録に追加するものとする。
※ この資料の持ち出しには、現時点での総理大臣の承認と、幹事長の承認と、×××神社にて清めと祈祷を行った後で──を行い、その後、必ず──を行ってから持ち出すことを厳命する。
※ 保管方法に問題があったとのことで、現存する『■■■村関係書類』の数は少なく、素手で触る事は厳禁である。
――――――――――――――――――――――
×月×日(朝一新聞の切り抜きを添付)
未明、××県××市にて、一家惨殺事件が発生。警察などが駆け付けた時には──(破損大・この後の記録が見つかれば補足要)
犯人は一家の旦那である、『────さん(44歳)』、現行犯として逮捕されました。
当初は傷害事件として取り扱われましたが、病院に運ばれた『────さん』の被害者が死亡したのを確認後、殺人事件として捜査が切り替わりました。
しかし、取り調べが始まってまもなく原因不明の病気を発症し──(以降の記録の破損大のため、記載せず)
※補足1(当時の警察官の証言)
『────さん』は取り調べの最中、「俺はやっていない、俺じゃないんだ、俺の中に何かが──」と、意味不明な供述を繰り返し、容疑を否認し続けているとのこと。
また、『────さん』を発見した際、『────さん』は生後半年の我が子の腹を開いて、内蔵を食べていたとの報告が上がっているが、それを目撃したらしい現地の人達が揃って退職してしまったとのことで、詳細は不明。
※補足2(当時、担当した医師の証言・口語をそのまま記載)
「兎にも角にも、あんな病状は初めて見る。全身に重度の火傷と思わしき反応が出ているが浸出液などは確認されず、しかし非常に神経が過敏に反応しているようだ」
「また、全身のリンパが腫れ上がっているのか、気管が圧迫されて強烈な息苦しさを覚えているようだ。処置として管を通して空気口は確保出来たが、それ以上は手の施しようがない」
「おそらく、饒舌にし難い苦痛が全身から起こっていると思われる」
「こういう場合は御家族の確認の下でモルヒネなどを使用して、安楽死の方向へ持って行くのだが、『──さん』の御家族……いや、親類とも連絡が取れないので、それが出来ない」
「……残念だけど、『──さん』は先日の事件の容疑者なのでしょう?」
「これが身寄りのない一般人なら、そうしてやりたいけど……出来ないからね、可愛そうだけど、『──さん』は長く苦しむと思うよ。痛みが出ているだけで、出血とかそういうのはないから」
※補足2.1(看護婦の証言・口語をそのまま記載)
「とにかく、可愛そうでした。そりゃあ、酷い事をしたとは思いますよ……でも、あれは……本当に、気が滅入りますよ」
「そう、貴方達も知っていると思いますけど、ちょっとだけ回復したんです。そう、なんとか声が出せる程度には」
「でも、『──さん』……声を出せるようになった途端、『殺してくれぇ』としか言わないんですよ」
「よっぽど、苦しかったんでしょうね。何を聞いても、『殺してくれぇ』、『殺してくれぇ』、もうそれだけしか言わないんです」
「あんまりにも訴えるから、当時の看護婦……私の同僚ですけど、何人か先生(医師のこと)に、楽にさせてあげたらと訴えに出た人がいたぐらいですから……そりゃあ、気も滅入りますよ」
「……それでも、不思議ですよね」
「それだけ死にたがっていた『──さん』、死ぬ数日前ぐらいには、逆に『死にたくない』、『逝きたくない』、って言い出したんですから」
「たぶん、痛みと妄想で自分が何を口走っているのか分からなくなっていたんだと思います」
「何を聞いても支離滅裂というか、返事をしているようで返事をしていませんし……とにかく、『死にたくない』、『許してくれ』、『そっちに行きたくない』、『助けてくれ』って繰り返していましたから」
「……ああ、でも、死ぬ少し前ぐらいですかね」
「それまで『──さん』、そんな感じの事を繰り返すばかりでしたけど……唐突に、変な事を呟き出したんです」
「『出られない』、『出してくれ』、『何処にも行けない』、『嫌だ』、『何処へ連れて行くんだ』って……ね、意味が分からないでしょう?」
──注1・当時の捜査資料や医療資料などは全て破棄されている。破棄された理由は不明である。
──注2・類似した事件が同時期に多発したらしいが、同様に記録が残されていないので、真偽は不明である。
──────────────────────
××月××日、気象災害並びに──記録(原本資料消失・注意要)
××県××日の未明、突如発生した局所的豪雨により、全国18箇所にて被害が確認されました。
原因は(××年時点でも原因不明)不明で、この豪雨による被災者は9800人以上、死傷者は416名に及びました。
この豪雨により、××地区の特産品が壊滅的な被害を受けました。
この豪雨を原因とした破産申請は、畜産業者が2件、農業関係が4件、一般企業が11件との報告。
※補足1(○○関係者の証言・口語)
「これはもう、生き残った親族の人から相談を受けた時は、本当に哀れに思ったよ」
「なにせ、持っている土地が雨やら地滑りやら色んな事件が重なっちゃったせいでぐちゃぐちゃになって、住んでいる人が居なくなっちゃったから」
「そう、収入源が無くなっちゃったの。税金だけ取られる真っ赤な債権だけが残っちゃった」
「しかもね、その豪雨だけじゃなくて……そこの人達、すごい惨い死に方をしたみたいでね」
「悪い事が重なっちゃったせいで、余計に誰も近付かなくなっちゃって、被害を受けていないところも連鎖的に不渡りが起こっちゃったらしいのよ」
「そんな事が起こる一ヶ月前は、そりゃあ羽振りの良い人だったのよ。なんの副業をしているのか知らないけど、車もエアコンも持っていたし、ちょくちょく寿司も頼んでいたっていうんだから──え?」
「惨いって、なにかって?」
「……頼むから、私から聞いたって周りには言わないでくれよ。正直、あそこの事はあんまり話したくないんだから」
「そうだね、これはあくまで噂なんだけど……豪雨が降る二週間ぐらい前にね、あの家に子供が生まれたらしいんだよ」
「そう、それ自体はめでたいことなんだけど」
「その、生まれてきた子がね……その、いわゆる、奇形ってやつでね」
「……私も又聞きの又聞きだから、本当かどうかは分からないけど……全身にね、生えていたらしいんだよ」
「手が」
「そう、子供の大きさだけど、全身からいっぱい……産毛の代わりみたいに、いっぱい小さな手が生えていたらしいんだ」
「それでね、どうやらその手が悪かったみたいで……これも噂なんだけど、出産の時に、その手が母親のおなかの中を引っ掻き回したみたいでね」
「布団どころか畳まで真っ赤になったらしくて……それなのに、痛みに耐えながら産んだ我が子が、それだったのを母親が見ちゃったらしくて」
「それはもう、凄い死に方だったらしいよ。発狂っていうのは、あんなのを言うんだろうね」
「あそこからけっこう離れているここに、あの悲鳴が聞こえたんだから……結局、そのお母さん狂っちゃって、自分で舌を噛み切って死んじゃった……ん?」
「その赤子は、どうしたのかって?」
「……これも、又聞きの噂なんだけどね」
「笑っていたらしいんだよ」
「お母さんの血を浴びて、お母さんが舌を噛み切っている最中……泣くんじゃなくて、けらけら笑っていたらしいんだよ」
「……本当かどうかは、私も知らないよ。あの場に居た人たちはみ~んな、豪雨の時に死んじゃったから」
※補足2(発見された──家の人達の遺体の状況)
後の司法解剖によって分かったことなのだが、『──家の人達』は全て、地滑りによる土砂に埋まった後、掘り起こされる直前まで生存していた可能性が浮上している。
遺体に触れた者の証言に、『胸部が温かく、数名はまだ心臓が動いていた』とある。
しかし、例外なく手足が壊死を起こし、加えて、全身の皮膚も膿んでしまっていることもあり、蘇生させるのは苦しみが長引くだけと判断された可能性がある。
また、掘り起こされた者たち全員、偶発的に呼吸が出来る(つまり、空気が吸える)状態だった可能性が高いとのこと。
写真が残されていないので判断は出来ないが、そうでなければ窒息死しなかった説明が付かない……とのことらしい。
なお、地滑りにより、家屋が全て土砂に呑み込まれたことで救助が困難。雨が止むまでは危なくて手出しが出来なかった。
実際、局所的な雨は断続的に続いたらしく、救助を行っても良いと判断が下るまで約40日近く掛かったとのこと。
※補足3
『──家』の親族並びに血筋は、××年××日の時点で途絶えているのが確認される。
──────────────―────―
××月××日 切り取られた○○新聞(現在劣化が進み、持ち出し禁止)
××日未明、○○町の町長を務める『────さん(64歳)』の幽霊が出る!?
『────さん』は、○○町に住んでいる者ならば一度は名を聞いた覚えがあるだろう。
先日、家族全員が次々に死亡した後で亡くなったというニュースも覚えは新しく、この新聞でも一面に取り上げた。
その『────さん』だが、どうやらこの世に未練があるらしく、幽霊となってさ迷っている姿が目撃されている。
それも、致し方ないだろう。
『────―さん』は近隣住民からは『とても家族思いの人で、怒っている姿を見たことがない』という人物であり、10年以上に渡って町長を務めてきた人物でもある。
実際、『────さん』はとても社交的だったらしく、様々な施設などに寄付を行っている篤志家(とくしか)としても有名であり、彼を慕っている者は多かったのだとか。
そんな人物が、死ぬ直前には家族を全員失っているのだ。未練を覚えてしまうのも致し方ないのかもしれない。
さて、そこで本題に入る。
実は近隣住民の希望と依頼により、『────さん』の成仏を願ってお祓いをしたいとの事らしく、わが社を使って目撃情報を集めたいとのこと。
お手紙でも電話でも良いので、目撃者は時間などの余裕がある方は、わが社への連絡をお待ちしております。
────────────────―────―
××月××日 切り取られた○○新聞(現在劣化が進み、持ち出し禁止)
××月××日の『────さん』の目撃情報の件ですが、問題が生じたため取り止めと致します。
関係者一同より、深くお詫び申し上げます
※補足1
○○新聞は、取り止めの記事を掲載した三日後に本社に火災発生。社長を含む職員32名が焼死したとのこと
※補足2
死亡した32名の関係者(家族・友人など)が多数行方不明になっており、現在でも行方は分かっていない。
現在、この件で行方不明だと断定されているのは290名である。
──────────────────―
『 』(名前は伏せる。当時、取り締まりを行った警官たちの証言を元に書き上げ)
××月××日の午後1時15分ごろ、○○教の住職『 』氏が強姦事件を起こし、警察による現行犯逮捕。
『 』氏は篤志家としても有名であり、自ら炊き出しなどを行っていて、警察にも顔見知りがいるらしく、逮捕時はとても驚かれたとの報告あり。
当人は警察官に対して全く抵抗はせず、取り調べにも素直に応じていた──が、途中から反応がおかしくなったとのこと。
調書は取られていたらしいのだが、現在では破棄されて確認が取れていない。
「終わりだ、もう終わりだ」
「おまえらも、みんな終わりだ」
「恨むなら、そいつらを恨め、ワシのせいだけじゃない」
「終わりだ、終わりだ、終わりだ」
「仏を怒らせた、もう駄目だ、みんな駄目なんだ」
「もうワシは助からない、もう駄目なんだ」
「縋っても助けてくれない、縋る相手が罰を下してくる」
「ワシは死にたくない、死にたくない、死にたくない」
「死んだら終わりじゃない、死んでから始まりなんだ」
「何でも払う、何でもする、うちの娘、いや、孫娘でもなんでも好きにしていい、だから助けて──」
──以降の証言は、あまりに自分勝手な供述に嫌気が差してメモを取るのを止めたらしく、現在でも確認されていない。
なお、『 』氏はこの証言の翌日、留置所にて変死している
後日、『 』氏が管理している神社にて『異臭がする』との通報有り。
数名の警察官が伺ったところ、御神託が置かれた部屋より異臭を嗅ぎ取り、内部は酷い有様だったとのこと。
※補足1
取り調べの最後に、『 』氏から「『■■■村』に行き、そこにおわす尊き御方のために動かなければ、貴方達も全員死ぬ」と、×××議員に伝えるよう発言あり。
報告が成されたのかは不明だが、×××議員はそれから10年後に病死が確認される。
その際、×××議員は、「ありがとうございます、ありがとうございます、穏やかに死なせてくれてありがとうございます」と涙を流しながら呟き続けて亡くなったとの証言が報告されている。
※補足2
この年、○○町、××町、△△町の三つにて死亡事故並びに不審死が多発しており、当時の署長より安全週間という名目での注意喚起がなされ、お祓いも行われたらしい。
ただ、効果があったのかは不明だが、死亡事故により署長が2回入れ替わり、辞職者が多数出たとのこと。
この死亡事故多発の傾向は翌年の10月に入るまで、例年の平均よりも3112名多く死亡者が確認されている。
※補足3
御神託があったと思われる本殿内部の報告はほとんど残っていない。また、中を見たその警察官たちは一週間後までに全員退職届を提出しており、その翌日に全員行方不明となった。
その後、神社は不審火により全焼、焼け跡からは熱によるものなのか、歪に変形した白骨が多数見つかったとのこと。
当時の医学では正確な人数を割り出せてはいないが、おそらく同時期に行方不明となった『 』氏の家族と親戚の者だと思われる。
何者かの放火によるものと思われるが、目撃情報がないので、現在でも未解決のままである。
──────────―────────―
××月××日 『感謝遊び』(真偽不明の目撃情報のみ)
○○町にある○○公園にて、子供が子供を集団で暴行し、あるいは拷問的な行為を行い、動かなくなれば公園の砂場等に埋めるといった遊び。
通称、『感謝遊び』が子供たちの中だけでなく、一部地域で大流行しているのが多数目撃されている。
集団で暴行する際の道具は多岐に渡り、近隣の家や目に付いた家から使えそうな物を借りて行われる。
その際、どの家も集団暴行を行うことを伝えると快く了承し、率先して、より危険性が高く、より痛みが強く、より長く続き、取り返しのつかない物を貸し出してくる。
この『感謝遊び』には地域によって多少なりルールが違うとのことだが、基本的なルールは同じである。
暴行を行う側が、『良い子』。
暴行を受ける側が、『悪い子』となっている。
より危険性が高く、より痛みが強く、より長く続く、取り返しのつかない怪我を負わせられた方が『良い子』である。
常識的に考えたら、誰も『悪い子』には成りたくないと思われるが、子供たちの間では男女問わず『悪い子』が取り合いとなり、『悪い子』になるために殴り合いの喧嘩が起こるほど。
『感謝遊び』のルールは、単純である。
暴行を行う側は、『悪い子! 悪い子!』という言葉と共に、順番通りに『悪い子』の身体を傷付けて行く。
殺してしまうのは駄目らしく、目を抉り、鼻を削ぎ落し、皮膚を削り、爪を剥ぐ……といった行為を出来うる限り長く行えば行うほど、『良い子』の証とのこと。
暴行を受ける側は、埋められる寸前まで『ありがとうございます!』と笑顔で連呼し続け、埋められた時には、『○○は悪い子です! 良い子にしてくれて、ありがとうございます!』と告げて息を引き取るのがマナーとのこと。
そして、『良い子』の中で最も良い子に選ばれた者は、道具を貸し出した家の者たちの手で解体され、調理され、『感謝遊び』に参加した子供たちと一緒に食事を取る……というのが、一連の流れである。
なお、道具を貸し出した家の者は、子供が居る場合は『感謝遊び』に出させるのがルールである。
※補足1
ある種の都市伝説ではという結論が出されている。
○○町はあるのだが、そんな遊びをしていたという人は1人も確認されて──そもそも、そんな遊びなど行われていないので、記録に残す必要はない。
はい、そうです、ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます
※あなたは、悪い子ですね
悪い子です、ありがとうございます、悪い子です、ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます
良い子です、良い子になりました、ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます