第31話: なお、トイレのアレは喜んでくれると本気で思っている





 ──深呼吸をして、気を取り直す。



 制札を通り過ぎて参道を進み、おそらくは御神木ごしんぼくと思われる大きく太い、注連縄が撒かれた巨木が右側に。


 左側には、手水舎ちょうずやがある。


 手水舎は手や口を清める場所(身を清めるという意味で)であり、だいたい柄杓ひしゃくもセットで置かれている……が、ここはどういうわけか、蛇口も取り付けられていた



「なになに……『無限に綺麗な水が出ます、この水に汚染が混入することはありません。諸々の細かい事はぜ~んぶ解決しちゃっている、私からの褒美の一つです』……え、なにそれは(絶句)」



 そして、その手水舎の傍に設置されている制札を読んだ千賀子は……マジかよ、と千賀子は言葉を失くした。


 女神様の言う事をそのまま受け取るなら、無限に湧き出る水源(それも、そのまま飲用可能)が手に入ったも同然だから。



 ──これ、下手に露見したら、血みどろの殺し合いに発展するのでは……そんな予感が千賀子の脳裏を過る。



 それは、けして誇張ではなく……というのも、だ。


 けっこう誤解されがちだが、日本という国は世界的に見て非常に水資源に恵まれた国……というわけではない。



 むしろ、逆なのだ。



 日本は雨量だけを見れば世界平均よりも多いのだが、実際に得られる水と国民使用量を考えれば、日本はむしろ水資源が少ない方なのだ。


 その理由としては、日本は国土が小さく高低差があるせいで河川の多くが急勾配きゅうこうばいになっており、短時間で海に流れ出てしまうから。


 前世の世界においてもそうだが、『日本は水が豊富にある』という誤解が常識になってしまったのは、ひとえに上下水道の開発と整備と維持に尽力を注いだからに他ならない。


 実際、日本の歴史を少しでも紐解けば、『水』が原因で殺し合いが多発しているし、『水』の奪い合いで村同士の戦にまで発展したケースもあり、明治の頃ですら起こったのだ。


 そんな国で水が……それも、消毒不要の飲用可能な真水が無限に出る不思議な蛇口があるだなんて知られたら、どうなるか。



(──ぜ、絶対に誰にも知られるわけにはいかん! 墓まで持っていかなくては!)



 少し想像しただけで色々と恐ろしくなった千賀子は、その場を離れて先へ進む。



 そうして、目に留まるのは三つの石像。



 狛犬こまいぬが、左右に一体ずつ。少し離れたところに、神馬じんめの像も設置されている。


 狛犬は神様の使いであり、邪気を跳ね除ける神社のガードマンみたいなもの。特別、福を授けるといった類の存在ではない。


 神馬は、神が地上に降り立つ時に乗ってくるもの……あるいは、捧げものとして。つまり、絵馬の事である。



 ……そして、その二つの傍に設置されている制札には、だ。



『この狛犬は一日に一度、新鮮な食材を運んでくれます。食材は自動的に調整されます。右側が肉を、左は野菜を……しっかり食べてね❤』


『この新馬は、寂しくなったら乗ってね❤ 何時でも迎えに行きますからね❤ 遠慮しなくても大丈夫だからね❤ 待っていますからね❤』



 と、書かれていた。




 ……。


 ……。


 …………??? 



 千賀子は、首を傾げた。



 神馬の方はまあ、分かる。


 たぶん、乗ったら女神様が迎えに来て、そのまま連れて行かれるタイプの罠だ。


 女神様としては、『生きるのに辛くなったら……』といった優しさなのだろう。


 とりあえず、乗らなければなんともないので、そこはいい。良くないけど、そこはいい。



 問題なのは、狛犬の方だ。



 食材を運ぶというのは、いったいどういうことなのか。女神様が用意した物を運んで来てくれたりするのだろうか……と、思っていると。



 ──ワンワン! 


「おわっ!? び、びっくりした!」



 いきなり、前触れも無く狛犬像が吠えた。


 石像が動くこともそうだが、まさか吠えるだなんて思っていなかった千賀子は、思わずその場から飛び退いた。



 ──今日の収穫だワン、受け取って欲しいんだワン。


「ひぃえあ!? 喋ったぁあっ!?」



 直後、まさか話しかけてくるだなんて想像すらしていなかった千賀子は、普通に悲鳴を上げた。


 たかが石像が喋っただけ……と、思われそうだが、冷静に考えてほしい。


 常識的に考えて、動かないと思い込んでいるモノがいきなり動き出したら、普通に驚くか、恐怖を覚えて距離を取るかのどちらか……ではないだろうか。


 けれども、そんな千賀子を他所に、二匹(2体?)の狛犬はワンワンと吠えると……パッと、その正面に光が生じたかと思えば、後には巨大な葉っぱに包まれたナニカが二つ残された。



 言っておくが、誇張抜きで本当に巨大なのである。



 見たところ、ナニカはどちらもかなり大きめのダンボールサイズ。中身は分からないし厚さも分からないが、それだけ大きいのだ。


 つまり、丸ごと包めるサイズともなると、広げれば千賀子が両腕を広げてもなお端が届かないぐらいの……巨大な葉っぱということになる。


 もう、この時点で普通の葉っぱではないのが分かる。


 というか、もしかしたらこの世界には存在していない……止めよう、考えるだけ無駄だ。



「えっと……コレ、なに?」


 ──肉ですワン。


 ──野菜ですワン。


「あ、えっと、ごめん、質問が悪かった」



 とりあえず、率直に尋ねたら、率直に返答をされた。


 でも、尋ねればちゃんと返答をしてくれると分かった千賀子は、そのまま質問を重ねた。



「何の肉と野菜? まさか、何処かから盗んできたとかそういう類じゃないよね?」


 ──盗んでいない肉ですワン。この肉は、この山に住まう主様ヌシさまへの捧げ物ですワン! 


 ──盗んでいない野菜ですワン。この野菜は、この山に住まう主様ヌシさまへの捧げ物ですワン! 


「ん~、とりあえず、盗品の類ではないってこと……?」



 とはいえ、犬だからなのか微妙に言葉が足りていないようなので、根気強く詳しく尋ねて……簡潔にまとめると、だ。


 どうやら、この『山』には女神様の御力によって用意された、『家畜場』のような場所があるらしい。


 そこで生息している食肉用の獣は、比喩でも何でもなく、『千賀子へ捧げられるためだけに育てられている家畜であり、そのためだけに生み出されている家畜』である。


 それゆえに、他の獣とは違って、そこの家畜たちには意思が無く、一切の感情もなければ、痛みを始めとして感覚すら無い。



 例外は、千賀子に利用し使用される事に対してだけ。



 その際、強烈な喜びと快感を伴う達成感を覚えるため、そこの家畜たちは、捧げ物として食肉にされるのを心待ちしているのだとか。


 同様に、野菜も同じような感じで生み出されているらしく、季節に関係なく、その時に最も美味しく実ったモノが自動的に摘み取られ、用意されるのだとか。


 そして、共に世話の必要がない。両方とも自動的に世話が行われて育つようになっているらしく、千賀子から世話をしに向かう必要はないらしい。


 また、両方とも千賀子以外は立ち入り出来ないようになっているらしく、如何なる方法を用いてもその場所を見つけ出す事すら出来ないようになっているのだとか。


 ちなみに、『果物』と『米』は女神様基準では野菜に分類しているらしく、米の方は精米された状態で用意される……とのことだ。



 雑なのか精密なのか、いまいち判断に困る女神様だ。



 とはいえそれは、女神様の尺度があまりにも大きくて広すぎるせい……なのかもしれないけど。


 ……で、そんな説明を一通り受けた千賀子は……思った。



(墓に持って行かなければならない秘密がまた一つ、増えてしまった……)



 無限の水も大概だが、無限に得られる食糧もヤバい。


 幸いにも女神様の計らいによってよほどの事が無い限りは露見する事はないだろうが、露見したが最後、間違いなく戦争が起こるだろう。


 なにせ、元手0で毎日食糧が得られるのだ。それも、パッと見ただけでも1人で消費しきれないのが分かるだけの量が、である。


 前世の現代に至ってもなお、食料危機問題は絶えず警鐘が鳴らされ続けていたのだ。


 人類全体からすれば砂粒以下の量しかなくとも、その有用性は語るまでもなく……なんだか頭痛がしてきたかも……千賀子は、グリグリと頭を摩った。



 ──この葉っぱに触れている限り、食材は腐らず常に一定の温度に保たれ、雑菌などに汚染もされず鮮度も保たれるワン! 食材を使い切ると葉っぱも消えるワン! 


 ──消費しきれなかった捧げ物は溜め込まれるワン! 毎日追加されるから、気にせず使ってほしいワン! 溜め込まれる量は実質的に無限だワン! 



「お、おう……そっすか……」



 ──一度に一日分を出すと困るでしょうと女神様より言われているワン! ここにある分だけじゃないから安心してほしいワン! 


 ──そうだワン! 使い切れる量を小まめに出した方が良いでしょうという女神様の優しさだワン! だから、遠慮なく使ってほしいんだワン! 



「ふ~ん、そっか、それはありが──待って、一日分ってコレだけじゃないの?」



 衝撃的な事実に、言い掛けていたお礼も止まる。



「一日分の量ってのは、実際にはどれぐらいなの?」


 ──おおよそ2トン分の肉ですワン! 豚、牛、鳥、その他含めて全部で2トンですワン! 


「2トン? 2トンって仰いました? 嘘でしょ? 毎日2トンってこと? 山の動物とか、絶滅しちゃわないの?」


 ──大丈夫ですワン! 『家畜場』の中は空間が広げられていて、その広さはこの星よりも広大だワン! 


「えぇ……さ、さすがは女神様……規模が違い過ぎる……!!」



 思わず、千賀子は悲鳴にも似た恐怖に声を上げた。


 2トンなんて量、一般家庭で消費する量じゃない。


 精肉店……いや、大繁盛している大型焼き肉店クラスでも、一日で捌ききれない量だ。


 仮に、千賀子が2トンの肉を消費しようと思ったら……毎日休まず雨の日も風の日も頑張って200グラム食べたとしても、1年で73kg。


 2トン分の肉を消費しようと思うなら、約27年掛かる計算になる。当然、時には肉を食べたくない気分の時もあるから、もっと掛かっても不思議じゃない。


 そして、狛犬たちの言う通りに27年間、ずっと絶えずストックされ続けられた場合……その量、約1万9710トンという途方もない数字になる。



(いったい、女神様は何を思ってこんなに大量にしたんだろう……?)



 到底、千賀子だけで消費出来る量ではない。家族に協力を仰いでも焼け石に水でしかないだろう。


 断言するが、超常的な力を発揮する千賀子は、大食漢というわけではない。そりゃあ平均より食べる方だが、それでも同世代の男より明らかに少ない。


 それは、女神様も分かっているはず……はず、だよね? 


 一抹の不安を覚えた千賀子だが、不安を覚えたところで女神様が手加減してくれるわけではないことを思い出し、ソッと溜息を零したのであった。



 ──あ、それと、7日間に一度、牛乳もサービスするとお話していましたワン! 


「女神様、もしかして私を太らせたいと思っていませんかね???」


 ──ちなみに、野菜などは育ち盛りだからってことで、3トンですワン! お願いすれば、もっと用意するって話ですワン! 


「あ、合わせて5トンが毎日……い、イカン、確実に殺し合いになる……!!!」



 考えれば考えるほどに頭痛が出て来そうな話にギブアップをした千賀子は、眼前に置かれた肉と野菜(葉っぱ巻き)を神通力でふわりと浮上させる。


 女神パワーによって安全性が保たれているとはいえ、地べたにドカンと置かれているのは気分的によろしくない。


 せめて、もう少し清潔な場所に置いておきたい……そう千賀子が思うのも、当然であった。



 ──気になるなら、本殿の中に冷蔵庫があるから、それを使えば良いワン! 


「あ、御親切にどうも……それと、女神様にも、有り難く頂戴致しますと伝えておいてくれますか?」


 ──分かりましたワン! 


「私からは、どう声を届ければ良いのか分からないので……お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」



 ちょっとズレているけど親切な狛犬にお礼を述べた千賀子は、そのまま荘厳な佇まいの建物の中へと……分厚い扉を開けて、足を踏み入れた。



「…………???」



 直後、千賀子は目を瞬かせた。


 いったいどうして……それは、正面の扉を開けた千賀子の目に飛び込んできたのが。



「あれ……何も無い? なんか色々と置かれていると思っていたけど……これから自分で用意しろってこと?」



 何も物がない、最低限。


 有るのはせいぜい畳や障子や照明といった感じで、まるで引っ越し直後のスッキリとした光景が広がっていたからだ。



「……あ、室内の見取り図がある……中央には広い畳部屋、その左に風呂とトイレ、右側はキッチン……畳部屋の裏側、奥にある部屋が、私の自室ってこと? 女神様のセンスってけっこう独特なのかな?」



 そして、神社とは言ってもここで生活出来るようにされているみたいで、扉を開けてすぐは玄関になっており、下駄箱の上には内部の見取り図が張られていた。


 とりあえず、探す手間が省けた有り難い。


 女神様に感謝の念を送りつつ、通路を通ってキッチンへ……そこで、「ああ、そうだった、女神様のやることだものなあ……」千賀子はカクンと肩の力を抜いた。


 何故ならば……そこには、大きさにして高さ2m近く、奥行きは5m近く、横幅に至っては10m以上もありそうな……超巨大冷蔵庫(横開きっぽい)がどかーんと置かれていたから……なのと。


 その冷蔵庫の隣に、これまた巨大な水槽……その中には、淡水海水の区別なく元気に泳いでいる魚やら何やら……そう、生け簀(す)が置かれていたからだ。



『──毎日追加されるし常に新鮮だから、いっぱい食べてね❤ ダイエットとかしちゃ駄目だからね❤ 元気に健康なのが一番だよ❤』



 そして、その傍に置かれている看板には、女神様からの伝言。


 これはもう、先ほどの狛犬のアレ……すなわち、捧げ物の類なのだろう……と、千賀子は理解した。



 だって──うん、だって、そうだろう? 



 水槽からピシャンと飛び出した魚が、綺麗な放物線を描いて……おそらく、海鮮物専用と思われる、幅広く大きな流し台にビタンと着地したかと思えば。


 ──捧げる。


 そう、言わんばかりに千賀子の方へ向かってピクピクと頭をケイレンさせた後、誰も触れていないのに勝手に鱗が取れ、身が切り開かれ……見事な三枚おろしになったのである。



 ……正直に言おう、千賀子は、めたくそにその光景が怖かった。



 なんでかって、『巫女』の影響から、うっすらと感じ取ってしまうのだ。


 この、目の前で自らの意志で三枚おろしになった、魚の狂喜を。心の底から、このために生まれてきたのだという達成感の中で死を迎えているということを。


 しかも……この魚だけではない。


 水槽の中で泳いでいる他の魚たちから向けられる、熱い視線。そのどれもが、『羨ましい……上手い事やりやがって(嫉妬)』というモノなのだから、余計に。



 ……。



 ……。



 …………とりあえず、冷蔵庫(というにはデカいけど)に肉と野菜を入れた千賀子は……畳部屋を通り、反対の風呂とトイレの方へ。



「おお、広い……しかも、これってまさか、温泉!?」



 そこで、思わず……ある意味、初めて喜びの声を千賀子は上げた。


 なにせ、入浴施設などの脱衣所みたいな感じだなと思ってしまうような内装の先には、そう、これまた見事な露天風呂があったからだ。


 正直、これだけでも、なんか諸々のアレが癒される気がする。温泉、その二文字が持つ力に、千賀子はニコニコと満面の笑みを浮かべた。



「さすがです、女神様……広々と手足が伸ばせる風呂、これだけで大抵の事は流せそうです──」



 そう、たとえ、『豊穣の湯』という意味深な看板が建てられていても、笑顔で流すことが出来た。


 そうして、その勢いでトイレの扉を開けた千賀子は──眼前の洋式トイレを見て、真顔になった。


 何故なら……そのトイレの形状が……こう、抱き締める形というか、女神様に抱き締められる形になっていたから。


 具体的には、用を足すために座ると、背後から伸ばされているいくつもの手に包まれるかのような……そんな造形。


 しかも、女神様の顔が、ちょうど千賀子の首筋に当たるようになっており……うん、まあ、その……うん。



「…………」



 無言のままに、千賀子は……扉を閉めたのであった。






 ……。


 ……。


 …………さて、だ。


 千賀子の自室として用意された部屋は、広さが違うだけで畳部屋と同じだったので割愛するとして、だ。



 千賀子は……悩んだ。


 なにをって、捧げ物の使い道である。



 神社自体は、良いのだ。


 温泉もあるし、食べ物だってあるし、探せば調理器具も道具も有って、水道設備も別で揃っていて、押入れには布団や多少の着替えまで入っていた。


 ある種の秘密基地として考えれば、良い。密かに訓練をするにしても、これ以上ないぐらいに理想的な場所である。


 しかし、毎日追加される捧げ物が、あまりにも勿体無い。


 千賀子と家族が腹いっぱい食べる分を差し引いても、余り過ぎる。しかも、一日経過するごとに増えていくのだから、余計に使い道に困る。



「……狛犬さん、毎日来る捧げ物って、何時まで来るかって決めてあったりする?」


 ──主様が死を迎え、女神様のみもとに行くその時まで、ですワン! 


「そっかぁ、私が死ぬまでかぁ……ちなみに、この捧げ物って他の誰かに配ったりとかしたら、女神様って怒るかな?」


 ──怒らないですワン! まったく気にしないですワン! 


「そっかぁ、怒らないかぁ……女神様、そういうところは本当に心が広いね……」



 なので、千賀子はこの神社の中で唯一コミュニケーションが採れる狛犬たちに相談をしたわけである。


 ……まあ、明確なアドバイスをくれるわけではないけど。


(下手に配っても出所を言えないから警察が動くだろうし、あんまりやり過ぎると周囲のお店に影響が出ちゃうかもだし……どうしたものかな……)


 このまま何もしないでいると、毎日合計約5トンの食糧が死蔵され続けることになる。


 だからどうしたと言われたらそれまでだが、千賀子のために多くの命が死に、その糧が千賀子の下へ送られるわけだ。


 望む望まないに限らず、命を奪っている以上は……それを使わなければ無駄死にではないか……と、思ってしまうのだ。



(家ではカップ麺とかそういうモノ以外の食料品は取り扱っていないし、そもそも、どんな理由で持って行けばいいのか……)



 でも、考えたところで……下手に明美たちに渡せば、そこからどう話が転がるか分からない以上、迂闊に動くことも……ん? 


 ……。


 ……。


 …………いや、待てよ。



「地元で駄目なら……他所で売れば……足が付かないのでは?」



 この時、千賀子の脳裏に電流走る! 



「今は夏、東京は空梅雨で水不足……ジュースとかなら、素人の私でも……行けるのでは?」



 それは、正しく悪魔の発想。



「……道子に、ちょっと相談してみようか」



 あるいは、無慈悲な天使の発想であった。








 ────────────―




 千賀子の知らない神社の秘密・その1。


 境内にある御神木を左回りでグルグル回り続けると、あるタイミングで男性(女神様チョイス)が右回りで出現する


 この時、男性は千賀子を強く求め、千賀子もそれを断れない(断りたくないと思うようになっている)


 その結果、必ず子供が生まれる


 ただし、求めるのは常に男性側が先であり、千賀子の方から求めてはならない。逆の場合、子は産まれない


 ちなみに、男性はこの一連の行動を行う度に変わる




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る