【KAC20246】極楽鳥花
属-金閣
第1話 《クエスト》幻のトリアエズを記録しろ
「あ、来た」
「こっちだよ、
紅いオーラが出ている大剣を背負う女子が片手を上げ手を振る。
その隣には、七色に輝く宝石が加工されている杖を持つ老人が立っていた。
二人の元にケープを身に着け、腰には一冊の本と右手に指輪を付けた女性が小走りで合流した。
『ごめん、ちょっと迷った。てか、聞こえてるよね?』
その声はこの世界の中ではなく、外の世界で通話を繋げての声であった。
「うん、バッチリだよ」
「僕も聞こえてるよ遥姉さん」
『それは良かった。てか、私の役職だけマルチなのにゲーム内で会話出来ないとか、マジでクソゲー・オブザ・クソゲーね
遥の言葉に二人は強く頷く。
クロポ――正式名称はクロス・ポイント、と呼ばれるフルダイブVRゲームだ。
様々な理由からこのVRゲームは、クソゲー・オブザ・クソゲーと呼ばれている。
このゲームをやる者はよほどのもの好きか、ゲームクリアをし囚われたハードを解放したい者の二択と言われている。
『で、どっちが
「僕だよ。だまし討ちな感じだったよ」
「私はアイツの連絡がウザ過ぎて折れた」
『なるほどね。まあ私も茜とほぼ同じかな。で、
その問いかけに二人は一度見合って首を横に振った。
どうやら勇が誘っているらしいが、連絡がないらしい。
別に居て欲しいわけでもないので遥はそこでその会話を止めた。その後、三人はある場所に向けて歩き始める。
今日三人が集まったのは、とあるクエストをクリアするためであった。
その内容は、黄金の洞窟に存在しているとされる幻の生物を記録することである。
記録は事前に渡されるクリスタルの十二面体で行う。それは対象に向け、軽く上から押し込むとカメラの様に対象を撮ることが出来るという物なのだ。
「ここが黄金の洞窟か。てか、響兄その浮いてるのズルい」
「こうでもしないと体力的についていけなんだよ。後、茜のその剣のお陰で体力がより減ってるから歩くの辛いの」
『はいはい、喧嘩しない。とりあえず、私がテイムした子らで捜索してみるから』
そう告げ遥は腰から本を取り開く。そして右手をかざすと、四体の狼の魔物が出現した。
「★□●◎●」
遥の何とも聞き取れない言葉を聞くと狼たちが一斉に洞窟内へと走り去っていった。
「本当に、遥姉さんは何て言ってるか分からないね」
「うん。遥姉、今何て言ったの」
『こいつを探してって命令したの』
そう言いながら遥は依頼書を二人に見せた。
依頼書には黄金の中で白く輝く生物あり。名をトリアエズ。
何かを背負っているかの様に横には広く、また頭なのか首なのか分からないが長い。観測した者によると岩の上に居るのか、座しているのか分からないため脚部は不明。見つかると即座に周囲が眩しく輝き、次の瞬間には姿を消す幻の生物。
「そんな相手を撮るなんて出来るのかな?」
「洞窟内で輝き、目くらましをする。そのまま逃走か。捕獲罠もかわすし、魔法で瞬時に覆っても消えるらしい」
「そんなの無理じゃん! どうやってクリアするのさ」
「こっちが知りたいよ。でも、ここには最初に選択出来る役職全員がいるんだし、クリア出来るでしょ。でなきゃ、次のメインクエストクリアするための道具手に入らないし」
『まあ、実際に遭遇しないと本当のことは分からないよ。こういうのは大体盛られてらりするからね』
しばらく洞窟の入り口で待っていると、先行していた一匹の狼が戻って来た。
遥と何か会話をしている様だが、二人には全く分からなかった。
その後、遥から探している生物を見つけたと聞き狼を先頭に三人は洞窟内に入っていく。
洞窟内は名前とは違い、最初は普通の薄暗い洞窟が続いた。だが、次第に下っていき深くなっていくと徐々に周囲が色づき出す。そして遂には周囲が黄金に囲まれ出すのだった。
そしてある洞穴の前で、先行していた残りの三体の狼と合流した。
どうやらこの先の洞窟内に目当ての生物がいるらしい。遥はそれを聞いた後、呼び出した狼を本の中へと戻した。そのまま遥は入れ替えるようにカメレオンの魔物を一体呼び出した。
実際に狼らが中にいると確認したわけでは無く、この洞窟内で異様な反応を感じた程度であった。そのため、最終確認を周囲に同化できる魔物で確認することにしたのだった。
『さて、居るかな?』
「遥姉さん、またあの子が戻って来るまで待つ感じ?」
『いや。あの子は特別で視界が共有出来るから、それで確認する』
「ザ・テイマーって感じの能力でいいね」
『人語話せなくて、ゲーム外でこうやって別アプリ開いて通話しないと会話出来ないのがいいなら喜んで代わるけど』
「いや~遠慮します。すいません」
「響兄は最初三つから選んでるんだから、他を羨まないでよ」
『そうそう。私なんて選択なかったんだからね。選べたら絶対これは選ばないよ』
そんな雑談している間に、カメレオンから視覚共有来る。
遥はそこで洞窟内は入り口は一つしかなく、水飲み場として小さな湖があるのを確認する。そして目的の生物が湖付近で、背を向けて水を飲んでいるのを見つける。
『居た。……あれは、後ろ姿的に鳥だね』
「鳥か。確かに依頼書にあったやつで、翼広げればそうだし。仮に口ばしが長ければ上に向くとそういう風にも見えなくもない。てか、名前にも鳥あるしそうだよね」
「岩場とかにいて脚部も分からないのも納得がいくって感じ?」
『詳しい正体は後回しだ。響、ここの洞窟内だけ結界で覆うことは出来るか?』
「周辺把握できれば、やれると思う」
『よし、なら確認は私の魔物も使う。幸いこの洞窟は入り口が一つ。結界なら基本外に出ることは出来ない。結界を張った後、中に突入しよう。それまで茜には周囲の警戒を頼む』
そうして、対象生物トリアエズを逃がさないための下準備が行われた。
相手に気づかれず響は何とか結界を張り終える。茜も迫って来ていた魔物を排除し、作業中の二人を守るのだった。
そして遂に洞窟突入前の最終確認を行う。
「一応張れるだけの結界は張った。どんな耐性持ちか分からないからね」
『ありがとう響。茜も守ってくれてありがとう』
「うんん。今の私に出来ることはそれだけだったから」
『よし、最終確認だ。クリスタルは皆持ってるな』
遥の問いかけに二人は頷き、クリスタルを手に持つ。
作戦はいったってシンプル。響が全員に速度上昇のバフをかけ、一斉に洞窟内に突入。そのまま三人で対象を囲み撮影。
一番入り口から遠い場所には身体能力が一番高い茜。手前左右を遥と響が担当する。
発光時の対策もしている。それはサングラスである。
普通のサングラスではなく、こちらも響の魔法付与をした特別仕様だ。
「発光に耐えられるのは一回だけだから。それだけ注意してね」
「了解。もしその間に逃げても私が絶対に逃がさないから」
『その時はよろしくね。それじゃ、行こうか』
響が全員に速度上昇バフをかけ終え、遥の合図と共に一斉に洞窟内に突入する。
茜が二人よりも先に定位置にたどり着き、クリスタルを押す。その後、遅れて二人も後ろから対象目掛けてクリスタルを押した。しかし、直後に対象は強く発光する。
洞窟内が黄金に包まれる。想像以上の眩しさに、魔法付与したサングラスをしていた遥と響は目を瞑ってしまう。
『これはっ!』
「眩しすぎる!」
次に目を開けれた時には、居たはずの対象が消えていたのだった。
すぐさま響に視線を向ける。
『響、結界の方は?』
「……いや、破られた感覚はない」
『そう。茜は』
そう茜に目を向けると、何故か茜は天井を向いていた。
『茜?』
遥がそう呼びかけた直後、突然真上に茜が飛び上がったのだ。そして、天井に生えていた黄金の結晶を一本引き抜いて湖に落下するのだった。
突然の行動に唖然としていた二人だったが、湖に落下したのを確認して慌てて助けに行くのだった。
「ありがとう。遥姉、響兄」
「急にどうしたんだよ茜」
『そうよ。ビックリしたんだから』
「ごめん。でも、捕まえたよトリアエズ」
「「え?」」
そういって茜が差し出して来たのは、先ほど天井から引き抜いた黄金の結晶であった。訳が分からず二人が首を傾げていると、その結晶がゆっくりと動き出すのだった。
「うわぁ……気持ち悪い」
『……え、本当にこれ、さっきの?』
「うん。私ずっと見てて上に物凄い勢いで跳躍したの見たから間違いない」
その後、響の鑑定魔法を使い正体が判明した。
茜が捕まえたのは【
依頼で探していた生物トリアエズは、鳥に見える動く植物だったのだ。
『確かに鳥に見えなくもない、けど』
「鳥じゃなかった。でも、さすがに植物なんて予想できないでしょ普通。名前から鳥想像するでしょ!」
「う~ん。トリアエズ……鳥、会えずって洒落?」
「「いや、それはない!」」
遥と響が同時にそう口にするのだった。
暫くすると、三人の視界にクエストエクセレントクリアの文字が表示される。
どうやら捕獲までしたことで、特別なクリアになったのだった。
そして同時に特別なアイテム報酬名が表示される。
【トリアエズを獲得】
それを見て、遥は呆れてそのまま仰向けに倒れる。
『これ何に使うのよー?』
その後、普通のクエストクリア報酬も表示される。
【トリアエズの種を獲得】
「「いや、これが必要になるメインクエストって何?」」
――三人の冒険はまだ続く。
【KAC20246】極楽鳥花 属-金閣 @syunnkasyuutou
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