第11話 手加減って難しいですよね

第11話 手加減って難しいですよね


「何だてめえは。グダズ、これはどういうことだ。ギダをやりやがったのはどいつだ

 後ろのとっぽい男か?

 何にしてもここから生きて帰れると思うなよ、野郎どもかち込みだー!」

 男は大声で仲間を呼んだ。


 しかし、悪党の巣窟といえど深夜のこの時間。

 見張り以外は飲んだくれて寝ている者もおり、そうそう集まるものでもない。


 私は殴りかかってくる男をしたから蹴り上げる。

 男はそのまま天井に突き刺さり、シャンデリアと並んで汚いオブジェとなる。


 さすがに天井が穴あきになったときの音と衝撃が大きかったのか、眠そうな男たちがぞろぞろと奥から現れた。


「ちょうどいいわ。

 ボスのところに案内しなさい」

 私の命令への答えは、襲撃だった。

 思い思いに棒や椅子などを武器にし殴りかかってくる。


 しかし、身体強化が使えていそうな人間はいない。


 数で襲うと言うことだろうが、それならこちらは魔法で迎撃だ。

 私は無詠唱で火炎魔法煉獄を発動する。瞬間、あたりが明るく輝いたかと思うと、私より前にいた有機物は全て二酸化炭素と水蒸気になった。

 レンガ作りの建物は溶融して溶けた岩塊となった。


 しまった。やり過ぎである。屋敷そのものが私の背後の入口側の壁しかなくなり、当然ボスも一緒に蒸発した。


「奥様、やり過ぎです」

「まさか魔法防御を施していない建物があるなんて思わなかったのよ。

 実家・ドレスデンの領地じゃドラゴンのブレスでもはじくくらいどの建物も魔法防御をしているんだもの」

「ドレスデン伯爵領とうちを一緒にしないでください。マコゴレイ領は毎日ドラゴンと戦ったりするような領地ではないのです。

 というか、領内にドラゴンはいません」

「あら、そうなの。それは残念……。

 まあ、とりあえず縛り上げといた彼は生きているんだから、ワルイダー組と繋がっていた黒幕のもとには彼に案内してもらいましょう」


「ひっ、勘弁して下せー。あっしは下っ端中の下っ端なんですー」

 ワルイダー組最後の生き残りが泣きわめいているが知ったことではない。

 こちらの目標は……

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 まずは犯人をしばく。←イマココ

 次に黒幕をしばく。

 最後に関連団体もしばく。

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 なのである。


「さあ、次は黒幕の政治家に突撃よ。案内しなさい」

 私たちはさめざめと涙を流す血ぬれの下っ端ごろつき男をせかせて、問題の政治家の家へと深夜の訪問を決行した。






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