第8話 とりあえず潰しましょう

第8話 とりあえず潰しましょう


「それで、どうされるのですか奥様」

 唯一面会に同行したアンが聞いてくる。


「そんなの決まっているじゃない。

 まずは犯人をしばく。

 次に黒幕をしばく。

 最後に関連団体もしばく。

 これで解決よ」


「いえ、あのときの院長の様子では、早く王都に帰って侯爵様に報告して対処して欲しい様子でしたよ」


「そんなことしてたら遅くなって被害が拡大するわ。

 大丈夫よ、こっちには凄腕の護衛が2人もいるし、いざとなったら私が出るから」


「奥様はもう少しご自分のお立場をお考えください。

 次期侯爵夫人自ら悪人をしばき倒すとか非常識です」


「でも、西のドレスデン伯爵領では令嬢であった私も、夫人であったお母様も、普通にみんなで魔物をしばき倒していたわ。そのとき森に逃げ込んでいた盗賊団や悪質なテロ組織と戦闘になることもあったけど、魔物であれ人間であれ、悪い奴らは容赦なくしばき倒していたわよ。

 悪い奴、野放し、絶対ダメの精神で、ここは頑張りましょう」


「ここは奥様の実家と違い平和な領地のはずなんですけど……」


「現状、はびっこている悪があるなら、今は平和といえないわよ。私だけでも頑張るわ」


「奥様がお強いのは理解していますが、さすがにお一人はおやめください。必ず私かタムのどちらか、あるいはその両方を同行させてください」

 護衛のプライドだろうか、トムも心配しているようだ。


「みんなそんなに心配しなくても大丈夫よ。魔法も剣もここらの戦闘経験があまりない地域の人には負けるつもりなしよ。こと戦闘面で、私が苦手なのは手加減だけよ」

 言い切る私にみんなはため息をつき静かになる。


「まあ、奥様が手加減は苦手のなのは、盗賊との戦闘でもそうでしたから理解しています。

 くれぐれも間違って関係ない人を殴らないでくださいね。

 貴族特権で相手が平民なら問題化はしないでしょうが、評判は落ちますから」

 タムは一言多いのだが、まあ許すとしよう。

 盗賊団以来暴れていないから、ヤクザものでもしばかないとやってられないというのも本音なのだ。健康維持のためにも適度な運動は大切だ。


「任せなさい。私が切るのは悪人だけよ」

「奥様、剣は手加減の難易度が拳より格段に上がります。ご自重を」

「そうね」私は短く返事をした。



 こうして私たちの最初の慰問地、マコゴレイ侯爵領最北の町ノスゴレイへの逗留が決定した。






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