手紙

もちっぱち

手紙

3月某日


6歳の息子が幼稚園の卒園式を迎えた。




息子は

生まれてすぐに黄疸の症状で

入院することになり、

当時2人目ということもあって

落ち着いて対処はできたが、

不安で仕方なかった

0歳のあの年は

母としてもう命が絶えるんじゃないかと

いうくらい子育てに向かいあってきた。


いくら眠くても起きて授乳やおむつ交換、

昼夜問わずつまらないとグズって

泣いたら色んなおもちゃや歌、

アニメたくさんのものを用意して、

泣くのを鎮まらせた。


結局は抱っこで落ち着いたり、

とりあえず授乳しておけば

お腹空いてなくても泣き止むこともあった。



片乳を触り母乳を飲むのは

サラリーマンのおっさんかと

考えてしまうほど笑えてしまう。


同じ男の子のママ友の話でも

同じ出来事があるらしい。


0歳児は侮れない。赤ちゃんの話です。

すいません下ネタでした

ごめんなさい。



他にもたくさんのいろんな思い出があった。



ここでは割愛させていただくが

6年の歳月を経て、4月から小学生となる。



幼稚園を修了となり、

寂しいような悲しいような気持ちで

参加したその日。



息子から母への手紙を渡された。




これは1人目の娘の時もあった。


娘は


いつもあそんでくれてありがとう


と覚えたての文字で丁寧に書かれていた。

綺麗だった。

多少でこぼこだったがそれもいい味だ。


ここで感動して泣くべきが

私は感動よりも悲しくなった。


色んなことを教えたりしてきたが、

遊びしかフォーカスされてないことに

悲しくなった。


私はひどい母だ

せっかく書いてくれた手紙に

感動できなかった。


ご飯たくさん作ったよ?

お勉強っぽいこともさせたよ?

ひらがな書いたり足し算とか。


遊びは確かにたくさん色んな公園に

連れて行ったり絵本もたくさん読んだ。


私は私に厳しいのかもしれない


娘に期待したかもしれない


気持ちを切り替えてこの手紙でもいいんだと

言い聞かせる。


娘が一生懸命に書いた手紙

ずっと大事にしよう。




そう過去を思い出しながら、

息子の手紙を見る。


開ける前から涙が出る。


おかあさんへ 

いつもごはんつくってくれて

ありがとう

だいすき


おんおん泣いた。


確かに息子よ、私はご飯作ったが

食べてくれない時が多かったぞ



なんでご飯なんだと問いたかったが

グッと堪えた。


姉と一緒の遊びでもよかったぞと

思ってしまう。


それでも

手紙に書かれたひらがなは不器用で

完成形ではなかった

一緒に勉強する時間少なかったね

ごめんなさい。


アンバランスで

すという文字なんて

上の棒すらなかった


封筒に書かれたフルネームの息子の

名前なんてパズルがバラバラのように

並びが変だった


でも私はそれでもいい

可愛い字だ。


息子はオリジナル!と大きな声で言うだろう


完璧じゃなくて

間違いだらけの手紙の方が

圧倒的に胸に刺さるのだ


私は指摘はしなかった


ありがとうって

芸術的な手紙だねと言った


相田みつをさんみたいとでも言っておこう


ある程度成長したら

間違うってことはそうそう無いだろう



この手紙は捨てられない



でも成長した息子は

わざと間違うのかもしれない



オリジナルって言って

自分にしか書けない手紙をくれるのかも

しれない



それはそれで楽しみだ


また書いてというと

もう書かないと

言われました



悲しい



それでも

子どもが書いた手紙って

本当に嬉しいものです





【 完 】

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手紙 もちっぱち @mochippachi

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