エクスプローラーキョウコⅢ

最時

第1話 トリさんの天敵

「ふう」


 深雪の斜面をラッセルする。


「代わろうか?」


「まだ大丈夫です」


「ガンバ💓」


「・・・」


 有名な登山家のキョウコさんと冬期北アルプス横断中だ。

 今回で二回目。

 正直断りたかったのだが今年も来てしまった。


「付き合ってくれてありがとう。

 流石に単独横断は無理だからさあ。

 あいつが骨折したのがいけないんだから」


「・・・ 大丈夫です」


 キョウコさんのパートナーの中山さんから代役を頼まれた。

 お世話になっているし、行きたかったルートに付き合ってくれると言うことで引き受けてしまった。

 俺が受けると言ったとき中山さんすごい嬉しそうだったな。

 これ見よがしに骨折を強調して、本当に骨折しているのかな。

 断ったら中山さんどうなってたんだろ。


 時間的にも体力的にもそろそろ幕営の時間だが


「キョウコさんそろそろ」

 

「もうちょっとだから、代わろうか?」


「・・・ 大丈夫です」


 あの日の出来事が思い浮かぶ。



「着いたー。

 とりあえず私、食糧見てくるからテントお願い」


「・・・ わかりました」


 キョウコさんはピッケルを持って消えていった。


 こういう長距離登山の場合、秋に食糧を置いておくというやり方があるが、キョウコさんの場合そういうわけじゃない。

 冬山で食糧を現地調達する。



 テントが立つとキョウコさんの足音が・・・

 恐る恐る顔を上げると


「トリ会えなかった・・・」


「そっ、そうでしたか。

 残念でしたね~ 仕方ないですよ」


「なんか嬉しそうじゃない?」


「そんなことないですよ。

 食糧はたくさん持ってきたのでそれを食べましょう」


「うん・・・」


 そう、この女が北ア横断する大きな目的は天然記念物ライチョウを狩ることだ!

 それも食用に!!


「大丈夫。

 キツネさんとかタカさんも食べてるから💓」


 とかほざいていたが100%犯罪だ。

 酒じゃないが同伴者も罪に問われるのだろうなあと


「はあ」


「どうしたの元気ないね?

 大丈夫!

 トリさんはここだけじゃないから明日はきっと会える💓」


「そっ、そうですね」


 はあ

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