チーム結成
両手いっぱいに荷物を持ちながら夕方に帰宅した翔と黒姫を見て神鳴が怪訝な顔をする。
「ちょっと買いすぎじゃない?」
黒姫はデレデレしながら嬉しそうに答える。
「楽しくて…つい」
「そう、まぁいいわ、翔に客人来てるわよ」
リビングの方を指差して微妙な顔をされて翔は首を
「俺に?誰だろう」
リビングで待ってたのは神螺との戦いで死んだと思っていたもう一人のいい年齢になった自分のアキトだった。
「よう、両手に花だな、元気だったか?」
「…生きてたのか」
嫌味な言い方に翔は溜め息をつく。
「そう嫌そうな顔するなよ、氷雨の様子見に来ただけだから。あるんだろ?」
アキトの手元に刀が出て刀身を確認する。小さくデフォルメされた氷雨が出て来てアキトにあかんべーとする。
「俺も嫌われたな、武器は精霊の魂維持するのに重要だから折れやすい刀は丁寧に使えよ?」
翔は直前の戦闘を見透かされたかとドキッとして玉藻前の攻撃をモロに受けた焰鬼を心配する。
「兎に角元気そうで良かった、んじゃ俺は神楽に報告してくるから」
アキトは物置の扉を開き中に入っていく。それを見て翔はハッとしてツッコミする。
「物置直ってねえ!おい神鳴ぃ!」
黒姫が神鳴と扉越しに二人の会話を聞いて怪しんでいた。
「様子見に来ただけ…?本当でしょうか?」
「どんな意図があろうとどうせ姉さんの差し金よ、妹は辛いわ」
「妹は関係ないけど…その気持ちはわかります」
二人は妹という立場で意気投合する。
「二人とも何してんだ?アキトさん帰ったから晩飯にしよう、あと神鳴物置直せって」
「嫌よ、せっかく客人来れるようになったんだから楽しみましょう」
楽しむって何だよと思いながら直す気のない神鳴に落胆して説明する。
「…夜中とかに来られたら困るだろ、あと不在時」
「わかったわよ、就寝時と不在時は閉じるわよ」
あっさり細かい設定出来ると聞いて黒姫も呆れる。
「閉じようと思えば閉じれるんですね…」
冷蔵庫の余り物を黒姫が鼻歌混じりに調理してテーブルに並べる。食卓を囲み神鳴が丁度良いと突如提案をする。
「退魔士として私達で魔物退治のチーム組まない?」
ニコニコする神鳴に黒姫は不思議そうに聞き返す。
「え?神鳴は戦えないんじゃ…?」
「そもそも退魔士って神鳴が考えていたのであって神藤のとこでは覚醒者とかなんとか…なんか古くさい」
翔は退魔士なんてネーミングセンスが凡庸だと笑う。
「ああ!?文句ある?チーム名でそうすればいいじゃない!古いって何よ!?」
戦えない事ははぐらかしながら神鳴は無理矢理チームを結成を宣言して翔達は付き合わされることになる。
「一対一なら黒姫強すぎて仕事がないんだよな」
黒姫の持つデスの能力の高さを思い返して翔は自分の役割に自信をなくす。
「昨日みたいに玉藻前のような複数相手は私無理なので…」
「そうか、武器もナイフだし精霊だけだと近接は無理だもんな」
神鳴は二人がガチガチの近接な事を不安に愚痴る。
「…遠距離とサポートが欲しいわね。やっぱり雇う?」
神鳴が考えスカウトをしようと提案すると黒姫が拒否する。
「雇えるほど資金無いので…ダメですよ」
「…生活費分しか母さん達残してないからなぁ」
「皆でお財布共有してから簡単に外の人を入れるわけには…」
友人達は未だに記憶戻らず翔も神鳴も腕を組み悩む。
「まぁ仕方ないか、今は二人で頑張るか」
「三人!私も頑張るわ」
「異世界の時を思い出しますね。頑張りましょう」
こうして一旦はチームを結成して活動することになるのだった。
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