初仕事
帰宅後に早速街へ出る。
「なんでついて来てるんだ…」
「ほら免許とか無いし…武器持ち歩くのもアレじゃない?時間操作サポートするわよ私の便利さ覚えてるでしょ?」
「確かに…ちょっと思慮不足だったな…あと刀持ってきちゃってるけど」
刀を持ってると聞いて神鳴が目を丸くする。
「魔物出たら呼び出せるって言ったじゃん!」
「いや、不安だった…隠すから許せって」
気まずそうに上着で何とか刀を隠す翔。
「格好良く名前叫んで武器を呼ぶ姿を…」
「それは恥ずいわ!」
衣装を現代風にした神鳴とウィンドウショッピングがてらに探索してみる。
「そういえばなんで家にいたんだ?」
「面白い拠点がある訳じゃないし、いつかこんな日が来る気がしてたのよね」
「やれやれ、巻き込みたくないのか巻き込みたいのか…」
望み通り敵が現れたのは収穫無しで帰ろうかと思い始めた日が落ちかけた駅前の広場。
空間を引き裂いてゴブリンが現れ回りの人や建築物に棍棒を振り回し無差別に攻撃を始める。
「…出たな!危うく帰るところだったぞ!」
久し振りの戦いに緊張しながら刀を腰に携えてゴブリンへ突撃する。
(体が軽い、マジで身体能力上がるのか…)
百メートルを10秒切るほどの驚異的な身体能力の向上に驚きながらも一気に距離を詰めて一刀両断でスパッと退治する。
「ふぅー…あっさりだな」
軽い感じの戦いに周囲を確認してから納刀し一息入れる。
「翔ぅー、その石拾ってー」
神鳴が必死に追いかけて魔物の死体が消えて出てきた透き通った小石を指差す。
「死体消えるのか…偉く処理が楽だな、んでこれか?小さい宝石みたいだが…」
「はぁはぁ、その魔石を役所に届けて賞金と交換、大事だからね」
肩で息する神鳴を見て自分の身体の強化に改めて驚き安直なネーミングを笑う。
「魔物石だから魔石ってか?」
神鳴から色々と説明を受ける翔に顔をしかめた八坂が近寄ってくる。
「っち、獲物取られた後か…」
「八坂!すまないな、お先に失礼だ」
片手で軽く謝るも不機嫌な八坂は不満たらたらそうである。
「邪魔するなとは言ったがまさか当日にするとはな…」
舌打ちしてグローブを絞め直す八坂は翔の持つ魔石のサイズを見て軽く溜め息を吐いてやれやれと首を横に振る。
「なんだ、雑魚か…じゃあな」
どうやら小物にはあまり興味はないようで一触即発は回避できた。
「雑魚って言っても初仕事なんだがな」
小馬鹿にされたが喧嘩しないで済んだことに安堵しながらポケットに魔石を入れる。
役所前の専用ボックスに魔石を入れてそれに合わせた金額が払い出される。
「ちぇ、二千円か…飯食って帰るか?」
うどん位なら奢れるぞと笑う。
「あら良いの?トッピングいっぱい頼んじゃおうかしら」
「二千円だっつてんだろ遠慮しろー!」
神鳴の涎垂らす姿にがめつい奴だなと翔は苦笑いしてしまうり
そこに見計らったように強面の黒服の男が二人現れる。
「我々と共に車に来て欲しい」
その風体に拒否すれば危険と感じた翔は仕方なく着いていく。
「妹さんはお帰り願おう」
黒服の言葉に神鳴が過激に反応する。
「いも…何ですって!?」
翔は神鳴に賞金を手渡す。
「先に帰ってくれ、大丈夫だってもしもの時は…うん、連絡する」
流石に暴力沙汰はダメだなと携帯を見せて家で待ってろと笑う。
「仕方ないわね…気を付けてね」
不安そうにする神鳴を尻目に翔は黒いリムジンに乗せられるのだった。
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