三、とりあえず、今からそっち行きます

【前回までのあらすじ】


 職場でいつも通りルーチンをこなしていた島本に母親から緊急の連絡が。

「トロイの木馬に罹った」と衝撃の報告する母。

そして今このときも、母はサポート詐欺に操られてコンビニに走りだそうとしていた。

 島本は無事に母を守ることができるのか!?


◆ 


 さて、私は今すぐにでもコンビニに向かって飛び出していこうとする母を必死に止めた。行かせてなるものか。

 

「あかん、あかん。それは間違いなく詐欺やで。絶対にコンビニには行かんように。あと、繋がってるという電話もすぐに切って」

「うん、わかった」

 

 母は案外素直に言うことに従った。どうやら、なにかおかしいとは思っていたようだった。ただ、どこを触ってもパソコンが思うように動かないので相当に慌ててしまったのだ。相談できる者と話して安心したということだろう。

 

「パソコンは今どうなってるの?」

「どうもできないから点いたままになってる」

「よし、とりあえず電源切ろっか」

「ハイ。切った」


 こういった詐欺の場合は、なにもアクションしなければ基本的には被害にあわないのだが、母は既に電話をかけてしまっている。これはもう少し詳しく聞かねばねるまい。

 

「電話でサポートという人と話したんよね?」

「うん、ええとね──」


 まとめると以下だ。


●サポートに電話すると、サポート用のソフトのダウンロード&インストールを求められた。ので実施した!


●電話で説明を受けながら、今どのような状況なのかをグラフ?とかを見せて説明された(が理解できなかった)


●ウィルス除去作業に費用がかかるので、電話は繋いだままで、コンビニに行ってAppleのギフトカードを買うように言われた


●あなたのクレジットカードはこれですね、とカードの画像を見せられた。名前や番号が画像に入っていたかは覚えてない


 うん、これは不味い。

 普段はそこまで緊急性の高い相談じゃないため、LINEや電話で対応しているのだが、これはパソコンを実際触って確認するほかは無い状況だった。最悪、クレカの番号を盗まれているまである。


「とりあえず、今からそっち行きます」

 

 実家までは、職場から約一時間だ。

 幸いにも仕事は緊急性の高い案件は無かった。同僚に「母が特殊詐欺にかかりそうなので!」と乱暴な説明して十分後にはオフィスを飛び出したのだった。

 

 

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