花羽


 花御子の花羽の役割は飛ぶためだけではない。恵殿を離れて活動する花御子にとって、酸素ボンベの役割も兼ねているのだ。

 恵殿には花御子が生まれてくる花畑がある。花畑といっても、花は一つも咲いていない。全て蕾だ。その蕾が花開くとき、花御子が土の中から生まれてくる。

 花御子はその花が出すエネルギーを吸収することで生きていくことができるが、このエネルギーが問題なのだ。

 このエネルギーは人間にとって有害で、長い間近くにいたり、至近距離にいると、最悪の場合死に至らせてしまう。

 だから、花御子は人間に近づけないし、よっぽどのことがない限り近づいてはいけない。これは、恵殿と人間との間に存在する暗黙のルールだ。

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