第22話 砂塵の決戦
第22話 砂塵の決戦
ストーム:1123、通称、テスタドラン。その巨体は最大で体長40m、体高30mに及ぶ。このSKを超える大きさのSKは数少なく、アフリカで確認されたSKの中では一番大きい。その恐竜のような巨体と、その背中側にあるいくつもの突起上の背びれから放たれる電撃。これがこのSKをデッドクラスにまで押し上げた要因である。
電撃は突起が光ってから放たれるので多少予測することは可能である。だが、来るとわかっていても避けれるかは運である。なぜなら電撃から逃れる術がないからである。電撃の威力にはかなりばらつきがあり、100V〜15万Vまでの電撃を放てるといわれている。放電機関の問題によりそうなることがわかっているが、問題はそのばらつき具合である。
電撃の威力に違いがありすぎるせいで、いちいち回避行動をとらなければならない。どんな電撃であれ、致命傷になる可能性もあれば、なんともない程度しか威力がない場合もあるのだ。だが、それを目視で測るのは不可能である。戦闘スーツに耐電機能がないわけではないが、さすがに15万Vの電流を食らえば一発でお釈迦である。
こいつと戦うときには基本的にヒットアンドアウェイが望ましい。幸いなことに動きはかなり遅いので電撃さえ気を付ければこちらがほぼ傷を負うことはない。だが、電撃というあまりにも対策のしようがない技を使ってくるため、さらに巨体でありコアが硬く、大きいのがまた一段と討伐難易度をあげている。
「とりあえず最優先は放電機関の破壊や!全員武器を銃器に変えろ!」
サルベルのその指示で団員は次々と銃でテスタドランを撃つ。だが、その銃の弾は全く効いていないようにみえた。
(その皮膚の硬さは誰もが知っとる。アフリカで悪名NO.1のSKを放っておくわけにはいかん)
テスタドランはアフリカでしか出現しない、いや、出現報告がないSKだ。その代わり、各地にいる強力なSKはアフリカには出現しない。そのため、その悪名をアフリカ大陸全体に轟かせている。主にアフリカのデッドクラスSKの出現は、ほとんどこいつであり、生態系が全く分かっていないので、どうすることもできない。しかも巨体で暴れまわり、挙句の果てには人を喰う。困るで済ませてよいものではないのだ。ゆえに別大陸の人からは“砂の悪魔”と呼ばれている(戦争の影響とストームで一時アフリカは砂に覆われた大地となったことから)。
(放電機関を破壊すれば電撃は撃てなくなる!まずはそこから・・・・・・!)
サルベルは一瞬でテスタドランの背後に回り込み、背中の突起をめがけて剣を振る。
(よし!とった・・・・・・)
そう思った瞬間、テスタドランの背中の突起の隙間から紫色の粘液が放たれた。
「うわっ!急になんや!」
サルベルは何とかよけ、迫りくる粘液を切り払った。だが、その直後に異変に気づく。
(剣が・・・・・・)
剣は煙をあげながら腐食していっていた。
「くそっ」
吐き捨てるように言い、その剣を後ろに投げる。腐敗のスピードは早く、あっという間にサルベルの剣を腐敗させてしまった。
(サブの剣を取りにいっといて正解やったな)
サルベルは素早く背中に背負っていた剣を取り出し、起動する。鞘が折りたたまれていき、剣の一部となり、刀身が現れる。
(今までのテスタドランのデータに背中から腐敗性のある粘液を放つなんてものはなかった。つまりこいつは・・・・・・)
一段階、ほかのテスタドランと比べて進化した個体。そういうことになる。
(背中側からしか出せないならまだやりやすいが・・・・・・)
そう思った瞬間、テスタドランは口を開けてそこから先ほどと同じ粘液を吐き出した。
「全員、いったん距離をとれ!後方支援に砲撃準備させろ!」
「でもじゃあ誰がこいつの足止めを・・・・・・」
そう一人の団員が言うと、
「俺が足止めする!後方支援の砲撃に合わせてコアを殺りに行く!」
そう言ってテスタドランに単身で向かっていった。
(こいつの相手は剣じゃ難しい。なら・・・・・・)
サルベルは素早くテスタドランの足元にもぐりこみ、足に傷をつける。
(関節を切り続けて、身動きがとれんようにする!)
素早く後方に抜けて、尾を両断する。すると、後方部分の突起が発光した。
(やらせるか!)
『戦刀術一式
剣が一瞬の間にテスタドランの側面に大きな傷をつけた。
「ギャアアアア!」
突起部分の発光がなくなり、電撃がキャンセルされたことがわかる。
(電撃は巨大なダメージでキャンセルできるのは同じみたいやな。でも・・・・・・)
先ほど傷をつけた時の手ごたえ、明らかにほかの種とは異なっていた。
(想像以上に硬かった。恐らく普通のやつの二倍くらい硬い)
二倍硬いということは今まで通りの火力を出すには二倍の力が必要ということである。
(しかも本来戦刀術は肉体への負担が大きい。威力調整によって意味をなすのに、単純に装甲が硬すぎてこちらも火力をあげるほかがない)
はあ、とため息をつき、剣を握りなおす。
「やっぱ使う分には銃火器のほうが好きやなあ」
そう言いながら次の構えに入る。テスタドランもサルベルを無視できない強敵として見る。
先に動いたのはテスタドランだ。粘液をまとめて玉のようにして発射してきた。
「そんな芸達者なこともできるんかい」
それをあっさりかわしながら足に力を入れて飛翔する。
「ごめんけど、ギアあげさせてもらうで」
『戦刀術二式
サルベルの剣がテスタドランの下あごを切り裂く。
「ガアアッ・・・・・・」
顎を切られて口を閉じられなくなったようだ。だが、まだ目の前にサルベルがいる。手をのばし、サルベルを切り裂こうとするが、
『戦刀術三式
その腕を二本まとめて貫いた。だがその時背中側が発光する。
(もう再生したのか!思ったよりも早いな・・・・・・)
急いで距離をとるが、電撃が先に直撃する。辺りを電気が駆け巡り、多数の岩を砕いた。
だが、その砂塵の中からサルベルは飛び出し、テスタドランの腹を切り裂いた。
(なんで今の電撃を受けても平気なんだ?)
エヴィルは疑問を浮かべる。
「実はテスタドランには蓄電器官がある。背中側にある袋状の器官だ。そこにテスタドランは電気を蓄えている。その器官を応用し、戦闘スーツには多少の電気を吸収できるようになっている。電撃を使ってくるのはアイツだけじゃないんでな」
なるほど、とエヴィルは思った。確かに自分で発電をしてその瞬間に電撃を放つのは効率が悪い。ならば電気を溜め込むのが一番いい。その組織が攻略の糸口になるならそれを応用してしまえばいいのだ。
その時、エヴィルは思ったことを言った。
「じゃあその蓄電器官を破壊すれば電撃は撃てなくなるってこと?」
教官は少し驚いた反応をしたが、次にこう告げた。
「確かにそれも一理あるが、それよりも表面にある放電器官を破壊したほうがラクに電撃を止められる。わざわざ体の背面側にある放電器官を狙う必要はないってことだ」
冷静に考えればそのとおりだ。わざわざ体内の器官を狙うより、体表に露出している器官を狙ったほうがより簡単である。だが、今回の変異体にはそちらのほうがいいのではないかと思ってしまう。
実際にそれはサルベルも同じだった。
(どうにかしてアイツの蓄電器官を破壊できないか・・・・・・。毒液の発射器官が背面についているのでおそらく従来のテスタドランと比べて腹面側に蓄電器官がよっているはず・・・・・・)
先程から彼は手当たり次第に深い斬撃を入れていたのはこの器官を探していたのだ。
(頭部でも、下肢でもない。やはり腹か)
サルベルは少しテスタドランから距離をとると、一気に踏み込んで距離を詰めた。
『戦刀術三式
剣はテスタドランの腹を穿ち、深いところまで刺さった。すると、サルベルは今までとは違う感触の部位に剣先があたったことに気付いた。
「これか!」
『戦刀術五式
剣をドリルのように回転させ、一気に器官をえぐる。すると、急に電撃が流れた。
「がっ!?」
サルベルは距離をとる。だが、よくみると放電器官から放たれたものではなく、腹部の蓄電器官の電気が漏れ出したようだ。
「これでおまえの一つの武器が消えたな」
サルベルはそう言いつつ剣を再び構える。
「決着をつけようか」
この戦いは、まもなくクライマックスを迎える——
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