第2話 光あるところ、影あり

僕たちの職場は遠くない。今日からではあったが、面接試験などで行ったことはあったため、スムーズに行くことができた。

今日はいい天気だ。久しぶりだな。曇っていないのは。

ここいらは雨が多いんだ。単純に鉱業が盛んだし、それを活かした産業が基盤になっているから仕方がないのだが。


彼は職場に入っていった。彼は銀行員の仕事を得たらしく、国営の銀行に入っていった。


この国の銀行は、市役所のような役目もある。故に納税や住民票などの手続き、また普通に銀行の役割も持つため、人員が不足しているのだ。また、世にあまり知れ渡っていない職業ということで、今狙いどきの職種だ。

(教えてくれたおじさんに感謝しないと……。)

中は広いロビーがあり、常に窓口はいっぱいだった。

「さすがだなあ、まあこの地方の銀行では一番でかいから、これも当然か。」

すると遠くから自分を呼ぶ声が聞こえたので、彼はその方へ駆けていった。


午前中は仕事の説明と、初業務などで大忙しだった。やっぱり仕事というモノは面倒だ。理不尽な目にあわなければならないし、ミスをすれば怒られる。当たり前だが、順当に考えるとおかしいよな。


「やっと昼休憩か〜」

エヴィルは午前中の業務を終わらせ、屋上のベンチにいた。手には弁当があり、今から食べるようだ。

(他の同級生はどうしてるんだろうな。まあ大丈夫か)

色々なことが頭の中を飛び交う。もっとも、仕事に関することは最初以外出てこなかった。

「にしても弁当うめぇ〜。半分は人造の合成肉なのになんでこんなに美味しいんだよ」

この世界は土地が少なく、農耕や牧畜のできる場所はもっと少ない。故に食料不足だ。だが、それを解決するために人造肉や野菜工場を造設している。

エヴィルは弁当を食べ終わり、ベンチから立ち、戻っていった。遠くに微かに稲妻が光った。


昼休憩も終わり、自分の業務に戻った時だった。自分と周りの携帯が一斉にブザーを鳴らした。

聴きたくもないこの音。ああ、傷を舐められるような不快感。独特の音が耳を逆撫でする。

『ストーム警報発令。ストーム警報発令。レベルは3です。直ちに近くのシェルターに避難してください。』


——厄災が、やってくる。

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