運命編

第1話 小さな日常の変化

「エヴィル、朝だよ!起きて!」

少年は夢うつつで訴えられる。誰だ……。誰が話しかけている?一体何を私はしているんだ?

「エヴィル!」

激しく体を揺さぶられ、反射的に起きる。

「はあっ!」

少年は飛び起きた。息切れをしている。奥に幻影の炎がゆらめいた気がした。

「……大丈夫?ずいぶんひどくうなされてたけど。」

「大丈夫だよ。おはよう、ハナ。」



第一話 小さな日常の変化



僕の名前はエヴィル。アフリカ大陸の北部にある北アフリカ共和国の国民だ。特に目立って優れているものはない。勉強も少しできる程度だし、運動ももっと上手いやつがいる。良くも悪くも、“普通の人間”だ。

僕は今年でやっと十五歳になった。この国では十五歳から仕事をすることが推奨されている。何よりまだ建国から11年しか経っていないから、経済的に安定していないんだって。だからこそ、僕も今日から仕事だ。

『おはようございます。今日は4月1日、新たな一年の始まりです。新しいことに挑戦してみては如何でしょう』

テレビからアナウンサーの声が聞こえてくる。この国は特にアジアからの移民が多いんだ。四百年前の戦争の跡も残る場所だってある。でも、それが功を奏して新しい国家がすんなりとできたのだ。この功績は、世界各国から称賛された。平和への一歩ってね。

「今日は特に財団からの発表は有りません。今日もいい一日を、お過ごしください」

この世界ではいくつかの財団が国際的に活動している。

財団は、この汚染された世界を少しでも良くしようと、そして恐るべき厄災の被害を軽減するために日々、活動している。

「やっと起きたか。エヴィル。緊張して全然寝れなかったか?」

冗談混じりの声が聞こえた。

この人は僕らを育ててくれてるサチヤおじさん。身寄りのなかった僕とハナを1人で育ててくれているんだ。

本来僕たちはサチヤおじさんの子じゃない。この国、北アフリカ共和国の前身、スーダン・エチオピア連邦国は内部での紛争が絶えなかった。その結果大量の孤児がいるんだ。今も一部で紛争が起こっているけど、昔ほどではない。平和への道のりは、一歩一歩近づいてきている。

「オイ、急がないと遅れるぞ。仕事初めから遅れるなよ?」

この国では十五歳から仕事をするのが当たり前。単に発展途中だというのもあるけどまだ経済的に乏しいところもある。どの国も経済弱国に支援できる余裕などない。なぜなら、恐ろしい厄災がこの世界では蔓延しているからだ。

「じゃあ行ってくるね」

そう言ってエヴィルは家を出た。

「あいつももう一人前か…なんだか寂しいな…。歯痒いものだな、若者の成長というのは」


彼らはまだ知らない。恐ろしい厄災は、その身に迫りつつあることを。そして、彼らが真実に辿り着くのに必要な時間も。


ついに始まるのだ。厄災がもたらす悲劇が、そして世界を破壊するカウントダウンが。

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