第73話 世界大戦

ウニいくら丼マジで美味かったな……?!


新鮮なウニの風味がフワッと広がり、いくらもちょうどいい塩気で……。


サブでついてきた刺身も、新鮮でプリプリだった……。


研究によりダンジョン産の生き物を養殖できるようになったらしく、ダンジョン産魚介類を出していたみたいだが、まあ最高に美味かったぞ。


あまりにも美味かったので、礼として日光名産の高級カステラを札幌の日本冒険者隊支部に置いておいた。


さて、そんなことはどうでもいいな。


演習が終わった後の話をしよう。


まずは結果から話させてもらう。




第三次世界大戦が起きた。




何故なのか、理由を説明しよう。


まず、最初に起きたのは、ロシアと中国による日本侵略だ。


軍事演習で散々脅したのに、なんでこんなことになったのか?


それは、共産圏国家の支配体制による情報伝達の不備によるものだ、と聞いている。


つまり、大統領や総書記が怖いので、部下達は上に都合のいいことしか報告しなかったらしい。


事実では、上位四桁圏内の冒険者なら、戦艦くらいにならまず負けないし……。


上位二桁ともなろう冒険者なら、国と戦っても勝てるほどだ。


それをあの演習で示したのだが、それをストレートに「我が国は絶対に勝てません」などと言えば、イエスマンしか周りに置かない共産圏の指導者はブチギレるに決まっている。


だから部下達は、「日本なんて大したことありませんでした!」と嘘をついて、指導者に怒られないようにやり過ごした訳だな。


噂によると、ロシア海軍のアルチョム大佐?とか言う人は「絶対に勝てないから降伏しよう!」と訴えかけたけど、プチロフ大統領にキレられて虚偽の報告をした罪とやらで収監されたらしい。シベリア送り、というやつだな。


まあそんな訳で、虚偽の報告を信じ込んだ共産圏指導者は、行けると思い込んで日本への攻撃を支持したのだ。


その決定に逆らうまともな奴は、既に左遷済み。


あとは暴走するのみ……。


そうしてロシアと中国は共同で日本へ宣戦布告、米軍はそれ受けて防衛戦力を駐在させると一方的に通告し、東京湾に向けて軍艦を差し向けてきた。


それを受けた世界各国は、痩せても枯れても外国債を山のように持つ経済大国である日本の滅亡を確信したらしく、日本滅亡後の経済が崩壊した世界で少しでも優位に立ちたいがため、同時多発的に紛争が勃発。


世界大戦が始まった訳だ……。




そんな俺は今、嫁と愛人とペットを連れて、熱海に来ている。


高級旅館そのものを貸切にして、広々と使える温泉で混浴という訳だ。


因みに、犬のハヤは最近小型化できるようになったので、特別に用意された五右衛門風呂に浸かっている。


いや、本来この旅館はペットを連れてくるようなランクじゃないからな。


それでも、こうして飼い犬如きに配慮してもらえる辺り、俺も権力者になったなあと思い知ってしまう。


「わー!広いっすねえ!」


初雪のように白い肌、白い鱗に銀の角、翼膜と尻尾を持つ龍心人(ドラグナー)の杜和。


元から、カラシニコフみたいな名前のアイドル集団なんかよりもよほど美人な杜和だったが、種族進化後の杜和は最早人外的な美しさだった。


人間離れした鱗や尻尾も、杜和の美しさを強調するアクセサリーにしかなっていない。


先日、十七歳を迎えた杜和だが、人外へと成ったことにより、活発な少女らしい可愛らしさだけでなく、人外的な妖艶さをも身に付けたと俺の中で専らの評判。


いい女だ、いい女に育った。


抱き過ぎて潰さないように気をつけなきゃな。


「相変わらず、逞しいお方ですわぁ……♡」


そう言ってしなだれかかるのは、時城のジジイの曾孫、時城紗夜。


お手本のような京美人。


「ああ……、幸せだな。こんな良い男とこうしていられるなんて……♡」


スポーティな美女、戦場茉莉。


「本当ですわね……。好みの殿方と逢引だなんて、素敵ですわ♡」


ハーフの美少女、香月朔乃。


それとペット三匹。


綺麗所を揃えて侍らせている。


六人も女を置いているが、これでも全体的にいっぱいいっぱいだな。


何せ、ダンジョンでの殺し合いの後は血の滾りが抑えきれん。


並みの女なら数分で潰しちまう。


アルスター王フェルグスのように、滾った身体を鎮めるには、何人もの女が必要なのだ。


もちろん、ここにいるのは、冒険者やモンスターとしてそれなりに鍛え込んだ女達なのだが、それでも、ダンジョンから帰ってきた時に抱くと、全員使ってもノックアウトしちまうからな……。


そのせいで、この女達は、気絶するくらいの激しい行為じゃないと快楽を感じられない身体になってしまったらしいが、まあその辺は俺が一生面倒を見るから問題はないと言うことで。


ついでに、強烈な快楽で脳を焼かれて、俺にベタ惚れしているが、まあこれも誤差みたいなもんだろう。


「ハぁあ……、ほんまに、ほんまにええわぁ……♡うちももう、世界で一番強い殿方に組み敷かれるんが気持ち良過ぎて、おつむがおかしなってもうたわぁ……♡」


そう言って媚びるように腰を押し付けてくる紗夜。


全く、可愛い奴め。


「こらこら、風呂場で盛るなよ。どうせ戦争が終わって暇なんだし、暫くはこうしてお前らと一緒にいてやるから」


「あう……、うちってば、はしたないことをしてもうた……」


正気に戻り、少し落ち込む紗夜。


これは仕方のないことなので、別に俺は怒ったりはしない。


赤堀ダンジョン研究所の収集データの中にあったのだが……、どうやら、種族進化した存在は、種族進化前の人類を強烈に惹きつけてしまうようだ。


ソラの証言によると、古代、まだこの地球にも神々が健在だった頃は、俺のような進化人類が何人もいたそうで。


その、進化人類を、神話英雄と呼んだそうだ。


ほら、あるだろう?


マハーバータラの大英雄カルナ、龍殺しのジークフリート、ギリシアの半神ヘラクレスに、イラン神話のアーラシュ……。


アラ・ゲゲツィク、マナス、ヒルデブランド、ロスタム、クー・フーリン……。


今の時代では、テレビゲームやアニメなどに登場する、神話世界の英雄英傑……。


これらは全て、人間としての殻を破り、進化した超越種(エクストリア)なんだそうだ。


たった一人で数万の軍勢に打ち勝った英雄、不死身の肉体を持つ英雄、魔法を使う英雄……。


それらが俺と同じように、超越種に至った元人間だとすれば、全て辻褄が合う。


今なら俺も、万単位の人間を刈り取るように殺せるし、人知を超えた魔法で超常的な現象を引き起こせるからな。


事実、ソラが地球に来ていた時代には、まだ存命の神話英雄がいたとかなんだとか。


尤も、今はもう、神話英雄達も寿命などで死に絶えたらしいがな。


古代後期、日本で言えば平安時代くらいまではそこそこいたそうだが……。


中世頃にもなると、外国同士での争いにより神々もまた別の国の神々と戦い合って、その際に駆り出された神話英雄も死んでいき……。


世界大戦によって決定的に神々が死に、神々がもたらすはずの神秘の力の供給が途絶えた神話英雄達は、皆寿命で死んだ、と。


そう言う訳だな。


ああ、いや、神々は死なない、と言うか、死の概念がないんだったか?


神々は終わりと始まりのある生命ではなく、ただそこにある現象や法則に近い概念的な存在。


弱まることはあれども、死ぬことはない。


が、今の状況は死んでいるとしか表現できないとかなんだとか……。


まあその辺はいいか。


そんな感じで、俺の先祖である俵藤太の伝説も眉唾物だが、超越種になりモンスターと戦っていた、今で言う冒険者だったと思えば不思議なことは何もないよな、って話だ。


そして、神話英雄と同じような存在に進化した俺のような存在は、殆どの進化していない人間を魅了してしまうんだとか。


ましてや、ここにいる女達は、元々俺を好いていた。


それもあり、女としての好感と、神話英雄に向ける敬愛がない混ぜになり、重い愛を向けてくるようになったのだ。


「はあい、旦那はん♡お背中流すなぁ……♡」


「あっ!ずるいですわ!わたくしも旦那様のお背中を触りたいのに!」


「では私は前を……」


すっかり色ボケした三人の愛人をあしらいながら、休暇を楽しむ……。




え?


いや、だから、戦争は終わったぞ?


始まったし、終わった。


一日で。

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