第43話 百階層の死闘

九月初頭……。


日光ダンジョン、百階層にて。


通常出現モンスターは、龍に近い姿をした人型のモンスター、『ドラゴニュート』。


そして、ボスモンスターは……。


『ガアアアアアアアッ!!!!!!』


モンスターの王、『ドラゴン』だ。


「ははははははは!!!!良いねぇ!最高だ!!!!」


ドラゴンは、音圧で周囲の地面が捲れ上がるほどの咆哮をした。


凄まじい、見上げるほどの大きさ。


目算で百メートルはあろうかという巨躯。


明らかに、目に見えるほどに盛り上がった筋肉が、鋼鉄の何千何万倍も堅牢な骨格にびっしりと搭載されており、その超力に満ち満ちている肉体を、身体を覆うほどの翼で空に留めている。


身体から発せられる怪力乱神たる力、『魔力』は、今までのモンスターの比ではない。


先日のグレーターデーモンが原子炉なら、このドラゴンはその数十倍……。後で聞いた話だが、地震に例えればマグニチュード10.0を超える程のエネルギーがあったそうだ。


そんな化け物に相対する俺は、『極打・蜈蚣切丸』を力強く握り、笑いながら構えた。


そして。


「御影流……、『飛酸漿』!!!!」


俺は、抜刀と共に発した魔力を、不可視の刃として飛ばした。


本来、飛酸漿という奥義は、遠い間合いから抜刀して、それと同時に足元の小石やゴミなどを掬い上げて相手にぶつける牽制の技である。


それを俺は、小石ではなく、魔力で作った刃を飛ばす技に作り替えた。


いや、作り替えるという表現は正確じゃないな。


実際、この奥義は、流派の祖たる俵藤太は『見えぬ刃を飛ばせり』と表現されており、それが、時代が下ってから、小石を弾いて飛ばす技や手裏剣術などに応用されるようになったと聞く。


つまり、不可視の刃を飛ばす技に『回帰』させた訳だな。


うちの武術の兵法書はこういう意味不明な文言が多かったのだが、今になって考えると、「魔力を使った戦闘術」と解釈すると腑に落ちる技が多いのだ。


やはり、ソラの言った通りに、うちの先祖は実在していて、本当に魔力を使う剣士だったんだな、と。


おっと、それで。


もちろん、飛ばす刃は一本じゃない。


一拍のうちに千を超える刃を放った。


『ガアッ!!!』


しかし、その軽い牽制を、ドラゴンは簡単に対処した。


俺の飛酸漿の魔力刃よりも高密度な魔力を纏わせた翼で、薙ぎ払ったのだ。


もちろん、そう来るであろうと予測していた俺は、魔力を練っておき……。


「御影流……、『羅漢殺』!」


数百メートルの魔力刃を振り下ろした。


高密度な俺の魔力の塊は、鮮やかな焔色をしている。


この羅漢殺も、本来は『刃を伸ばして斬る』と伝わる奥義を、『刀の持ち方を瞬時に変えて、間合いを伸ばして斬る』技にコンバートされていたのを回帰させたものだ。


にしても、羅漢(聖人)を殺すとはよく言ったもの。


性格がいい人ほど騙しやすく殺しやすいということだろう。酷いネーミングだ。


まあぶっちゃけ、御影流は武術じゃなくて殺戮術だからなあ。その辺はしゃーない。


さて、羅漢殺により伸びた赤い光は、ドラゴンを叩き落としたのだが……。


「ぐ、ぎぎぎ……!斬れねぇ!!!」


羅漢殺の一撃だけでは、ドラゴンに致命傷を負わせることはできなかった。


これも、しゃーない。


切り替えていこう。


ドラゴンを地面に落とすことはできたんだ、あとはこっちのもんだ。


俺は、羅漢殺の魔力を霧散させ、霞の構えのまま突っ込んでいく。


「けええええっ!!!!」


『グオオオオッ!!!!』


俺の全力の唐竹割が、ドラゴンの爪の横薙ぎにぶつかって、火花が散る。


……火花?どういうこったよ。こいつの爪は鉄か何かなのか?


まあいいや、ダンジョンで『どうして?』を考えるのは無益。


そういうのは研究所の方でやれ。


俺は斬るだけだ。


『ガォアッ!!!!』


おっと、ドラゴンのコンビネーション攻撃。


右爪横薙ぎ、左爪袈裟斬り、そして次は……。


「尻尾か!」


尻尾横薙ぎね。


でもそりゃ悪手だぜ。


「ぜぇりゃああああ!!!!」


跳躍、回避。


それと同時に、ドラゴンの背中に刀を突き入れる。


『グオアアアアッ?!!!』


外皮は硬いのはさっきの一撃で分かっていた。


線の攻撃が駄目なら、より範囲を小さくした点の攻撃……、即ち突きだ。


これは通る。


ここに……。


「『火尖槍』ッ!!!!」


刀の先端を基点として、爆熱の大槍を魔法で生み出す。


この火尖槍は、爆撃並みの威力はあるはずだ。


実際、放てば数十キロメートル飛来して、着弾点を半径数百メートルほど融解させるからな。


これを体内に放てば、流石に死ぬだろう。


流石のドラゴンといえども、体内まで頑強ではないはずだ。


『ギ、ガアアアアアアアッ!!!!!』


「ぐああっ!!!」


頑強だったわ。


まさか、体内でミサイルが爆発したくらいのダメージに耐えるとは……。


ドラゴンの背中から振り落とされて、音速の五倍くらい?の勢いで地面に叩きつけられた俺は、受け身を取ったが衝撃で右腕が破壊されてしまった。


「『超速再生』」


破壊された右腕は、骨が飛び出て、筋肉が抉れた、悪趣味な前衛芸術と化していたのだが、それを『超速再生』のスキルで治そうとする。


『グオオオオッ!!!!』


もちろん、ドラゴンはそんなことをする俺に時間など与えない。


自分も大きなダメージを受けていて、事実、全長百メートルほどの緑色の肉体のうち、背中には十メートルくらいの穴が空いているのに、だ。


見上げた闘争心だ。


「良いじゃねぇかよテメェ!大好きだぜそういうの!限界まで逝こうぜぇぇぇッ!!!!!」


俺は、左手のみで刀を構えて、大地を踏み締めた……。




半日に渡る激闘の最後は、ブレスのぶつけ合いにより雌雄を決するというものだった。


俺の全魔力を込めたブレスが、ドラゴンのブレスとぶつかり合う。


その結果、生き残ったのは俺だった……。




起きる。


「あー……。あー……?あ、あー……」


ドラゴンとの激闘でボロボロになった俺は、百.五階層のセーフゾーンで休んでいるうちに、寝てしまっていたようだ。


時刻を見ると午前九時。


やべー、もう学校始まってるじゃねーか。


……なら良いや、今日は午後から行こう。


とりあえず、ポイントで武具を直して……、うおっ、あのドラゴン、討伐報酬が一億ポイントか。スゲーな。


で、ドラゴンの素材のうち、回収できたいくつかをアイテムボックスに入れて、と。


ステータスを……。


×××××××××××××××

赤堀藤吾

人間★

Lv100★

迷宮階位:25012257人中1位

最終到達階層:100階層

《御影流正統後継者》《始まりの冒険者》《百階層踏破者》


HP:559

MP:425

STR:478

DEX:401

VIT:352

INT:331

MND:650


SKILL

《御影流極伝》《紅蓮の業》《絶燃破壊》《絶壊破壊》《諸行無常》《阿頼耶識》《縦横無尽》《覇王咆哮》《金剛羅刹》《百烈拳》《菩薩掌》《斬撃波》《爆砕波》《次元屈折斬撃》《虚空瞬動》《超速再生》《アイテムボックス》《全属性耐性》《寒暖耐性》《魔法耐性》《気絶耐性》《毒耐性》《魅了耐性》

×××××××××××××××


迷宮端末で確認、と。


おー、だいぶ上がったな。


ん?


『人間』のところにお知らせマークが出てんな。


タップ、と。


×××××××××××××××


おめでとうございます!

あなたは、人間という種族の成長限界まで達しました!

更なるレベルアップの為には、《種族進化》を行いましょう!


・笹耳人(エルファン)

→不可:必要アイテム『エルダートレントの実』


・獣牙人(ビースター)

→不可:必要アイテム『キングレオンの瞳』


・鋼指人(メタロン)

→不可:必要アイテム『アークゴーレムの炉心』


・水鰭人(アクアイア)

→不可:必要アイテム『モビーディックの結石』


・妖眼人(フェアリス)

→不可:必要アイテム『アークフェアリーの羽』


・魔翼人(デモニクス)

→不可:必要アイテム『アークデーモンの角』


・天翼人(エンジェリー)

→不可:必要アイテム『アークエンジェルの輪』


・龍心人(ドラグナー)

→可:必要アイテム『ドラゴンの心臓』

!龍心人は龍族の力を持つ超越種(エクストリア)です。

超越種最高の身体能力を持ち、高い魔力と、飛行能力を持ち、超越的な息吹を吐けます。

全ステータス+1000

《超速飛行》《龍の息吹》スキルの追加


×××××××××××××××


ほーん……?

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