第44話 クズ親子

「もしもし?」


俺は速攻でGMコール。


ソラを呼び出した。


『なんだい?……いや、種族進化の話だね?』


「おう」


話が早いな。


「で、こりゃ一体なんなんだ?」


『それはね……、そう、まず、人間の話からいこうか』


ふむ。


『神が眠りについて久しいこの世界の人間はね、神秘の力を失っているんだ』


それはまあ、なんとなく理解できるな。


『そもそも、人間はそこまで強くなれる種族じゃなくてね。どんなに鍛えても、このステータスという数値で示せば、平均300くらいにしかならないんだ。曲がりなりにも、人の身で平均ステータス300を超えている君は超人だね』



なるほど。


神秘の力がない人間には、成長限界がある、と。


『そこで……、君達人間の肉体に、私の力の塊たるモンスターの一部を埋め込むことにより、人間という枠を超えた超越種となり、更なる力を得られるようになる……、という話だよ。君達はこういうことを……、そう、《サイボーグ化》?とか言うんだったかな?』


魔法によるサイボーグ化ってことか。


「あー……、原理とかはよく分からんから聞かないんだが、何かデメリットはあるか?」


『え?ないけど?』


「ないのか?」


『いや……、代償はもう払っているじゃないか』


あー?


ああ、そうか。


「百階層のボスモンスターを倒したから、ってことか」


『そう言うことだね。……これは少しネタバレになるからあまり言いたくはないけれど、選んだ種族によっては、少し苦手なことができたりすることもあるけどね』


あー……。


まあつまり、種族によってはデメリットも少しあるけど、その分強化の幅が大きいとかそう言うアレか。


『……因みに、私が用意した百階層ボスの中で一番強いのはドラゴンだよ』


と、意味深な発言をするソラ。


つまりは、ドラゴンの素材を使った龍心人が一番高性能だと言いたいんだろう。


「なるほど、理解した。何度も聞いて悪いが、デメリットはないんだな?」


『ないよ。断言しよう。……まあ、若干の容貌の変化と、寿命の延長がデメリットと言えばそうかもしれないかな?』


なら良いか。


見た目にこだわりはないし、寿命は長い方が良いだろうし。


「じゃあやるわ。アドバイスありがとな」


『うん。今後も頑張ってね。百階層以降もあるからやり込みプレイしても良いし、他のダンジョンに行くのも良いかもね。あ、それと、ダンジョン創造権も十回分あげるから、うまく使ってね。使い方の方は端末にあるけど、分からないところがあったら聞いて』


「おう、助かる」




さて、進化、と……。


「ぐっ……?!!!」


心臓が痛え……。


あ、やべ。


意識がまた……。




×××××××××××××××

赤堀藤吾

龍心人(ドラグナー)

Lv100

迷宮階位:25012257人中1位

最終到達階層:100階層

《御影流正統後継者》《始まりの冒険者》《百階層踏破者》


HP:1559

MP:1425

STR:1478

DEX:1401

VIT:1352

INT:1331

MND:1650


SKILL

・PASSIVE

《御影流極伝》

《紅蓮の業》

《諸行無常》

《阿頼耶識》

《金剛羅刹》

《絶燃破壊》

《絶壊破壊》


・ACTIVE

《百烈拳》《菩薩掌》《爆砕波》

《斬撃波》《次元屈折斬撃》

《龍の息吹》《覇王咆哮》

《縦横無尽》《虚空瞬動》《超速飛行》

《超速再生》

《アイテムボックス》


・RESISTANCE

《物理耐性》

《魔法耐性》

《全属性耐性》

《寒暖耐性》

《気絶耐性》

《毒耐性》

《魅了耐性》

×××××××××××××××


起きて、端末を確認した。


あ、スキル欄の整理パッチ入ったのか。


時刻は15:00だ。


もう学校終わってんなこれ。


よし、帰るか。




「赤堀さん!心配しま……し……たよっ、てええっ?!!!」


ダンジョンの門から出ると、担当受付嬢の千鶴さんが出迎えてくれた。


「ああ、千鶴さん。心配かけたか……、すいませんね」


俺は、軽く手を上げてそう返す。


「あ……、赤堀さん、です、よね?」


んー?


ああ、容姿が変わるんだっけ?


「そうですよ。まあなんだ、詳しい話は研究所の方で……」


多分、喜んで検査するでしょあの人ら。


「鏡あります?」


「あ、はい」


手鏡を受け取る。


うーん?


髪色は赤くなり、長さが伸びて。


赤い鱗?角?が側頭部から後ろへ生えていて、そこから金色の角が覗いている。


瞳の色も金色。


背中から羽が生えて、2mくらいの細長い尻尾も生えている。


頬に鱗、歯が鋭くなっている。


体感だが、内臓も変質しているようだ。


特に、心臓は異様なまでに強くなっているのを感じられる。


まあ、不細工になった訳でもないし、いいか。




研究所へ行くと、音速で親に捕まり、精密検査三時間コース。


結果を聞くと……。


「えーっとね、前に精密検査した時に、お前は九割方人間と変わらないが、早太郎やモンスターの日和と桐枝は半分以上が地球上に存在し得ない物質でできてるって言ったじゃん?」


と親父。


「ああ、そんな話もあったな。つまり?」


俺がそう返す。


「お前もそのお仲間になったワケだよ」


ほーん?


「特に困らんから良いんじゃないか?」


どうでもいいな。


「嗚呼っ!お母さんがお腹を痛めて産んだ子が!半分以上別モノになっちゃっただなんてっ!」


と、母親が自らを抱くようにしながら、悲しそうな『フリ』をしている。


俺がそれを、汚物を見る目で見ていると。


「……やぁん、熱視線!」


とセクシーポーズを決める母親。


「死ね」


「いやまあ……、仕方ないわよねっ!だって、『面白い』んだもの!自分の息子が人間じゃないナニカになっただなんて、最ッ高に『面白い』わ!!!」


まあ……、俺の親はこんな感じだ。


快楽主義者。


面白ければ、経済が混乱しようと、息子が化け物になろうと構わない訳だ。


とは言え、日本が潰れたり、俺が心まで化け物になれば、自分の快楽追求活動に支障が出るので、そうならない為に本気で働く。それは絶対に確かだ。


「ムスッコさあ……、ちょっと彼女ちゃんを孕ませてくんなーい?」「生殖実験やらなきゃ!」


と親。


「高校生だしなあ」


「良いじゃーん!高校なんてどうでも!俺のコネで適当な大学を卒業したことにしておくからさ!ね?!」


「いや……、あいつも鍛えて、そのうち俺と同じ龍心人にするから……」


「「おおおおおっ!!!」」


「良いねそれ!」「同種交配なら同種が生まれる確率高いよね!」


「「じゃあそれで!」」


うーん、テメェの息子に「生殖実験」させようって辺り、マジモンの外道だよなあ……。


「あ、それとさ」


「ん?どうした?」


「なんか、新しいダンジョンを十個まで作る権利をもらったんだけど、これどうすりゃ良いと思う?」


「……息子よ、お前は俺の誇りだ!」「あなたを産んで良かったわ!」


ハッハー、その台詞の使い所がここかよ。


杜和と婚約の報告をしに行った時も特に何も言わなかったのに?


本当に最低だな。


……だがまあ、普通の親で、普通の反応を返されたら?と、そう思うとな。


やることなすことに一々口出ししてきて、親だからとデカいツラして、親戚付き合いだのを強制されて……。


普通の親ならそうなるだろう。


俺の親は、普段はほぼ不干渉で、金だけは出してくれて、望んだことはなんだってやらせてくれる。……但し、自己責任だが。


今みたいに、メリットを示せばいくらでも力を貸してくれるのも、非常に分かりやすくて助かるってのはある。


本来、十七の若造である俺が、長者番付にランクインするほど稼げば、変なやっかみを買うはずだ。


絶対に、ふざけたマスコミやら、政治家やらの変なのがちょっかいをかけてくるはずだろう。


だが、今そうなっていない。


それは単に、うちの親が交渉関係の一切を引き受けてくれているからだ。


俺がクソほど稼ぎ、親は俺に降りかかる面倒ごとを処理する……。


ギブアンドテイクだな。


最低の親だが、俺とは悪くない組み合わせだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る