第31話 装備をしなければ意味がないぞ

さて、この冒険者資格試験。


これは、丁度、ゴールデンウィークに行われた。


全国で百万人近くの人数が受験したが、合格率は10%前後ほどだったらしい。


前に言ったかもしれないが、知識テストで平均点を取れるのは二人に一人。その中から更に、体力テストで平均点を取れるのは二人に一人。そして更に、知能テスト、武力テスト、特技テストで数人に一人くらいに足切りされる。


勉強も運動もできる奴が、わざわざ危険なダンジョンに潜るか?と言えば微妙なところで、勉強も運動もできるんなら、もっと稼げる仕事をするはずだ、と。


すなわち……、この十万人の冒険者ってのは、勉強も運動もできるのに、命がけでダンジョンに潜ることを決意した変人ってことだ。


まあ……、かくして、約十万人の冒険者が、各国で冒険を始めたのであった。




十万人……、ってことは、大体、一つのダンジョンに一万二千五百人が入ることになる。


が、まあ、いきなりダンジョンに突入しようぜーーーッ!!!!みたいなアホは流石にそうそういらっしゃらない。


何度も言うが、合格率10%前後の難関試験をくぐり抜けてきた冒険者資格所持者は、そこまでノータリンではない。


全員が、それぞれ武器を集め始めた。


あ、因みにだが、冒険者は銃刀法が緩和されるそうだ。その代わり、冒険者が冒険以外で武器を振り回せば、一般人の銃刀法違反よりも重罪になるんだとさ。


さて、そんなこんなで、うちの親父は、うちの蔵にある太刀を引っ掴んで行き、お袋は、親父のポイントで魔法用の杖を買ってもらっていた。


ジジイも、蔵から太刀を掻っ払って行き、門下生達は自費で無銘の居合用の刀を買って行った。


そして、杜和とキチレンジャーは、と言うと……。


「へいへーい、赤堀クゥン?先輩としてなんかアドバイスくれんかな〜?」


と、俺に話を聞きに来た。


殊勝な態度だな。


こいつら馬鹿だから、野球バット持って突撃して死んだりするかと思ったんだが。


そしたら最高に笑えたんだが、まあ、教えを乞うその姿勢に免じて、色々と教えてやろう。


「杜和にはうちの蔵にある刀を見繕ってやる。鎧はポイントで買ってやる」


「え?良いんすか?!高いんじゃ……?」


「良いぞ、嫁だからな」


「えへへ……」


「ヒュウ!お熱いねんな〜、でもどうせ、ボクらにはなんもくれへんのやろ?」


ウザ絡みだな、緑門。


だが……。


「そりゃそうだろ」


例え友人であれど、家族でもない奴に、一本数百万円は下らないうちの蔵の武具をくれてやるのはおかしいだろ。


「いや、そりゃええんよ、当然や。赤堀クン家の段平なんてもう、新車並みにお高いんやろ?そんなもんをくれだなんて言えへんわ」


そうだな。


「ボクらは、単に、これから揃えるべき装備の相談がしたいだけなんや」


「良いだろう、聞いてやる」




そんな訳で、電車にて大都会東京へやってきた俺達。


「じゃあ、まずは靴から買っていくか」


俺とキチレンジャーは、工務店に入る。


「まず、欲しいのは、鉄板入りの安全靴だ。足にフィットするブーツ型が良い」


「硬くないかな?」


「革製だから、使っているうちに柔らかくなるはずだ」


次に、服。


「服は、工務店の作業服や、ライダーパンツ、革製ジャケット辺りが良いだろう。暑くても長袖にしておけ」


そして防具。


「防具は、サバゲーショップにある、米軍の払い下げの防弾チョッキ辺りで良いな。気になるなら、バイクのヘルメットやプロテクターを買っても良い」


最後に武器だ。


「何を使いたい?」


「二刀流!」


緑門がアホなこと言い始めた。


「刃筋の立て方も知らん素人が二刀流なんて使えるかボケ」


「じゃあ、何がおすすめなんや?」


「斧か鉈か鈍器」


重さで斬る武器や鈍器なら、叩きつけるだけでもそこそこに効果があるはずだ。


刀剣で生き物を狙った通りに斬るというのは、意外と難しい。


「じゃあ、鉈で二刀流するわ」


「まあ、そこまで言うならやれば良いんじゃないか?死んだら笑うだけだしな」


「初めは一本から慣らすわ。二刀流にするのは手数が欲しいからや」


「二刀流ってのは、基本的に、片方は受けに使うんだぞ」


「うーん、なら盾……?」


「まあ、どの道、予備を含めて二、三本は持った方が良いだろうな」


「いや、やっぱり二刀流やな。直感や」


なら、好きにしろ。


次。


「僕は、力に自信がなひのだが」


と青峯。


「なら、杖か何かで突け。軽く助走をつけて身体全体でぶつかれば、ゴブリンくらいまでなら倒せるはずだ」


次。


「私、アーチェリー部なんですよ」


と黄場。


「良いんじゃないか?動くモンスターに当てられるならの話だが」


次。


「アタシは、なんか叩く奴がいいな。刃物とか、うまく使えなそうだし」


と桃瀬。


「じゃあ、警棒でも買っていけ」


「あ、それと、盾も欲しいかも」


「ん……、良いんじゃないか?だが、持てるか?重いぞ?」


「ふっふーん、パパ活中にレイプしてこようとするおっさんを何人もノシてきてるもん!体型維持も兼ねて、普段は護身術教室に通ってるんだよ、アタシ!」


「なら良いんじゃないか」




さて、こんなところか。


じゃあ早速、明日からダンジョンの攻略を始めていくか!ってことになった。


俺はとりあえず、杜和をそこそこまで鍛える。


キチレンジャーは四人チームで潜って、現状クソ雑魚の青峯に魔法を覚えさせる。


これを目標にして、明日、ダンジョンを攻略する。

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