第8話 怪しい剣術

ダンジョンで魔法のスクロールを手に入れた。


それを使うと、俺に火魔法のスキルが!


「……これ、どうやって使うんだ?」


試してみるか。


手を翳して叫ぶ。


「ファイア!」


掌から一メートルくらいの距離に短時間火炎放射。


同じく、手を翳して。


「ファイアボール!」


二十メートル先くらいまで、握り拳ほどの火球が飛んでいった。


ふむ。


手を翳さずに、口だけでファイアボール!と叫ぶ。


「ファイアボール!」


結果、目の前の中空から火球が発生し、狙った標的からいくらか逸れてしまった。


詠唱を変えてみよう。


「火球!」


ファイアボールとほぼ同じものが出力された。


なるほど、大体分かった。


『イメージを固めて』『そのイメージに沿う魔法名を叫べば』、魔法は発動する。


「炎剣!……無理だ」


しかし、複雑な魔法はまだ無理。


それに、魔法を使うと疲れる。MP的なものを消費しているらしい。


つまりは、レベルを上げろってこったな。自分のレベルと、魔法の習熟度レベル、両方を上げる必要があるようだ。




八階層。


『チチチッ!』


角が生えたデカいウサギだ。


50cmを超えるくらいデカい。


まあ、そんなに強そうな見た目ではないが……?


『チッ!!!』


「ぬおお!スゲェ跳んだ!!!」


ジャンプで二メートルくらい跳んだぞこいつ?!物理法則って言葉を知らんのか?!


多分、『跳躍』とかのスキルを持ってるんだろうな。


まあ、跳んだからなんだって言うね。


『ヂッ?!』


はい、両断。


あ、死体残るのか。


食えるのかもな。


角も何かしらに使えそう。


そして、数十匹の角ウサギを倒すと……。


「あ、出た」


『跳躍』のスキルスクロールだ。


これは早太郎に使わせよう。


にしても、スクロールは出にくいんだな。


ゴブリンメイジも百体近く倒したからなあ。


さて。


「どうだ、ハヤ?」


「ワオン!」


おお、四メートルくらい跳んだぞ。竜騎士かな?リューサンインザスカイだ。


ん?てか、それより……。


「ハヤ、お前、真っ黒じゃね?」


「ワフ?」


早太郎は甲斐犬だから、黒のマダラ模様だったんだが、マダラが消えて真っ黒になっちゃった。


「身体に変なところはないか?」


俺がそう訊ねると、早太郎は、自分の身体を嗅いだり、舐めたりしてる。


「……ワフ?」


うーん、異常はないみたいだ。


一応、GM(ソラ)に聞いてみるか。


「もしもし、ソラ?」


『どうしたんだい?』


「なんか、早太郎の色が変わったんだけど、心当たりない?」


『あー……、それは多分、早太郎君は君のテイムモンスター扱いになっているからだと思うよ』


「テイムモンスター?」


『そうだね。テイムモンスターはレベルが上がれば進化するから、色や模様が変わったり、大きくなったりするんだ。申し訳ないんだけれども、これは仕様だから変えられないよ。ごめんね』


「まあ、それは良いんだが……。うん、分かった、ありがとな」


さて……。


「ハヤ、このまま行くと、お前は甲斐犬じゃなくなるかもしれねーぞ?それでも行くか?」


「ワン!」


うん、大丈夫っぽいな。


なら、次に行こう。


あ、余談だが、角ウサギのポイントは四十だった。




九階層。


先日の赤犬とゴブリンナイト。


うーん、たまにはやってみるか?


ゴブリンナイトは鎧を着ている。


「御影流……、『鎧通掌』」


『ガ……、プゲッ?!!!』


「おー、効いた効いた」


この技は、相手の鎧に手を触れた状態で筋肉を硬直させ、衝撃を内部に与える技だ。中国拳法の発勁みたいなもんだな。


ゴブリンナイトは、どうやら内臓が全部潰れたらしく、夥しい量の血と臓物だったものの塊を吐いて死んだ。


「なるほど、威力上がってんなこれ」


普段なら、相手の心臓を一時的に止めたり、内臓にダメージを与えて気分を悪くさせるくらいしかできないんだが、まさか内臓を潰せるほどに強くなっているとは。


レベルアップの力ってスゲーや。


あ、ゴブリンナイトから『騎乗』のスキルスクロールが出た。いらねーや、後でポイントショップに売ろう。


ゴブリンナイトは四十、赤犬は三十ポイント。




十階層。


錆ロングソード持ちのホブゴブリンの群れだ。


まあ、レベルも上がったし……。


お?


へー、ホブゴブリンってポーションを落とすのか。


ドロップ率は十匹につき一つくらいかな?


で、十階層のボスは……。


『ガアッ!』


先日のゴブリンチャンピオンか。


鉄のロングソードと木のヒーターシールド、革製の鎧を装備している。


ふーん……。


やってみるか。


「御影流……、『断刃閃』」


『ガアッ?!!』


これは、相手の剣の平を打ち、剣を破壊する技だ。


これ、めっちゃコツがあるし、こっちの刀も痛むんだけど、俺の刀はレベルが上がってるから何ともない。


そして、丸腰になったゴブリンチャンピオンの首を刎ねた。


ゴブリンチャンピオンは、何と百ポイントだ。流石はボス。




うん、今日はこんなもんかね?


あ、ソラから電話だ。


「もしもし?どうした?」


『十階層攻略おめでとう!十.五階層の休憩ルームには、ワープゲートがあるから、それで戻ってね』


「おう、助かるわ。それとさ、返り血を浴びるから、Dポイントで使える……、なんかこう、浄化の魔法陣?みたいなの、用意できないか?」


『なるほど!それも良いアイデアだね、明日までに用意しておくよ』


よし、と。


さあ、帰って飯だ!腹減ったー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る