第7話 チュートリアルダンジョン

チュートリアルダンジョン。


と、その前に、若返りの秘薬をD(ダンジョン)ポイントで購入して、試しに早太郎にぶっかけてみた。


すまん、早太郎。


人で試すのはまずいからなぁ……。


「ワウ?!」


すると、早太郎は一瞬、ピカッと光って……。


「うお、若返ってる」


毛艶が一歳前後くらいの頃に戻ってる。


この秘薬、本物なのか……。


十万ポイントもぶち込んじまった。犬に。


もったいない気がするが、まあ、早太郎は嬉しそうだし良いか。




さあ、気を取り直してチュートリアルダンジョンを攻略していこう。


まず、第一階層から。


一階層は……、石畳の建物の中で、側面に松明がずらりと並んでいる。つまりは、結構明るい。


モンスターは……。


あ。


『キー!ピキー!』


お、スライム。


わざとらしいブルーの、サッカーボールの二倍くらいの大きさのスライムだ。


『ピキー!』


おっ、体当たりしてきた。


ボヨン!


んー、まあ、一般成人女性の本気ビンタくらい?


その後、2、3分ポヨポヨ体当たりを受け続けたが、溶解液プシャー!とか、コアを破壊しない限り物理無効!とか、そんなことは一切なく、蹴り一発で弾けた。


すると、スライムのコアらしき、青い塊が転がった。


「なんだこれ?」


スライムの中心核……、だろうか?


今回倒したスライムは、薄い水色で、この中心核は濃い藍色だ。


とりあえず貰っとこうか。


あ、そうだ。


ダンジョン電話、と。


「もしもし、ソラか?」


『うん?どうかしたのかな?』


「ダンジョンでドロップしたアイテムを撮影して、どんなアイテムか鑑定できる機能とか付けられないか?」


『それは良いね!考えておくよ!』


あ、それとポイント確認しとこ。


えー、スライムは……、一ポイント。


まあ、妥当だな。


あ、因みに、十年若返りのポーションが十万ポイント、最低級のポーションが三十ポイントだ。




次、二階層。


『ヂュチュ!チュゥウ!!!』


「ネズミか」


でかい。


50cmくらいある。


PUIPUI鳴きそうなやつじゃなくって、もっとこう、灰色のハツカネズミっぽいのだ。


攻撃は噛みつきのみ。


「よっと」


『ヂギィ?!』


頭を踏み潰したら死んだ。


すると死体が残った。ひょっとして肉が食えるとか?まあ、今は火もないし、別にスルーで良いかね。


ネズミは複数の群れで現れるので、集団戦の練習になるな。


とはいえ、一度に現れるのは3、4匹くらいだが。


ポイントは……、一匹につき三。




三階層。


『チチチッ!!!』


「コウモリかあ」


でかい。


こちらも50cmくらい。


攻撃は噛みつきのみ。


「シャアッ!」


『ヂッ?!』


刀を抜くまでもない。孤拳で受ける要領で打ち払う。


死体が残る。こいつもやっぱり食えんのかな?昔、親父が南米で、コウモリのスープを飲んだとか言ってたし、食えるんじゃねえかな。


コウモリでは、飛行する相手との戦いの練習になる。


コウモリは一匹五ポイント。




四階層で……。


『ゲギャ!』


「棍棒ゴブリンね」


ふむ、良いんじゃない?


段階を踏んでいる。


ゴブリンも死体が残り、手持ちの武器も残った。


ゴブリンは一匹十ポイント。




五階層は……。


『『『ギャギガァ!!』』』


ゴブリンの群れか。


そして、ボスに錆ロングソード持ちのホブゴブリン。


ホブを倒すと……。


「おっ」


五.五階層、休憩ルームってことか。


ここに、アンティークな机と椅子が置いてあり、机の上に火の灯った蝋燭。


その隣にポーションと端末が置いてある。


なるほど、このポーションと端末を持ち帰れってことだな。


あ、ちなみに、ホブは一匹五十ポイントだった。


「うん、どうだったかな?」


お、ソラが出てきた。


「良いんじゃね?これ、回復ポーション?」


「そうだよ」


ふーん。


「どのくらいの怪我が治るんだ?」


「まあ、ホブゴブリンにやられた傷くらいなら治るよ」


「なるほど、階層に対して相応しいポーションが得られるのか」


実際、今まで戦っていたが、死ぬとポーションを落とすケースもあった。


ポーションを落とす……、こう、肉体を砕くと、死体の隣が光って、そこにポーションが落ちてるという形式だった。


そんなことをするくらいなら、死体が消えたのちに、ポーションやらドロップアイテムを落とす感じでいいんじゃないかな、とは思うんだが……。


だが、それはなんか違うかね。


剥ぎ取りもやるべきってことか。


とにかく、階層にふさわしいポーションがたまにドロップする感じだな。


「うーん……、そうではないね。普通の人間の怪我や病気なら、大体二十階層から取れるポーションで完治すると思うな。けど、ダンジョンに潜る人間の怪我はそうはいかないんだ」


「え?治りづらいのか?」


「そうではなくて、うーん、そうだね、最大HPがレベルと共に上がる、と言えば分かるかな?」


「ああ、なるほど」


つまり、レベルが上がれば怪我しにくくなる。


しかし、回復するには、強い回復力が必要ってことか。


「でも、もちろん、レベルを上げたから怪我が治りにくくなる訳ではないんだ。レベルを上げて損することはないと明言するよ」


一番正しい表現では、レベルを上げると、ランクの低いポーションは効きにくくなる、って感じかな?いや、それも若干語弊があるのだろうが。


よし、じゃあ、チュートリアルもクリアしたことだし、先に進むか。




六階層。


景色は依然として、石畳に松明が並ぶ古典ダンジョンだ。


と、そこに。


『ガオッ!』


犬の頭の矮躯の人型。


察するところ……。


「コボルトか」


『ガオッ!』『ガアッ!』『グオッ!』


しかも群れで出る。


手元には鉄のナイフ、口は鋭い歯。


身のこなしは……。


『ガガアッ!』


割とすばしっこい!


一体目を斬り捨てたら、二体目が間髪入れずに飛びかかってきた!連携もするのか!


だが……。


「ハヤ!」


「ガオッ!」


『ギャッ?!』


ハヤのぶちかまし!


早太郎は最早、犬としては最強だろうな。


物凄い速さで二体目コボルトに体当たりした。


身長120cm程のコボルトに、体高55cm程の早太郎が体当たりして勝てる道理がないのだが、かなりのスピードでの突撃により、自分よりデカいコボルトを転倒させた。


「ガウガウガウ!!!!」


『ガハッ!!!』


そのまま、倒したコボルトの喉笛を喰いちぎる早太郎。素晴らしいな。


俺は、一体目を斬り伏せて伸ばした腕を即座に引き戻し、三体目を両断した。


チームプレイの勝利だ。


コボルトは一匹二十五ポイント。




七階層。


『ゲギャ!』


ゴブリンファイターとゴブリンメイジ。


まあ、一度勝った組み合わせだ。どうとでもなる。


あ、ゴブリンファイター、メイジ共に、一体三十ポイントな。


「お?」


ゴブリンメイジの死体の隣に、一枚の羊皮紙がドロップしたぞ?


これは?


羊皮紙を手に取って見る。


よくわからん文字で魔法陣が描かれているが……?


あ、迷宮端末が鳴ってる。画面を見ると……。


《スキル『火魔法』を修得しますか?》

《はい/いいえ》


じゃあ、はい、で。


すると……!

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