012号室 ビジネスホテル体験 その1
宿泊客の役をするのは、僕、アルフレド、セシリオの3人。アルフレドとセシリオはこれからも客として来る可能性が高いけど。
入館してロビーに入ると、モニカがロビーから挨拶をする。
「レッツォインへようこそお越し下さいました。お客様は3名様でしょうか?」
「いや、僕は1人」
「俺とセシリオは1組だぜ。2人で1部屋ってことで頼む」
「かしこまりました。それでは何泊ご宿泊になりますでしょうか。シングルルームは1泊5000V、ツインルームは8000Vとなります」
僕は1泊で申し込んだが、アルフレドとセシリオはとりあえず5泊し、調査状況次第で延泊、ということにしたらしい。
「かしこまりました。それではこちら、シングルルーム503号室、ツインルーム1008号室のカギとなります。お部屋に入りまして左右どちらかの壁に穴がございまして、そこにカギのアクセサリーを差し込むとお部屋の照明や機材を使用できるようになります。
また、お部屋は扉を閉じると自動的にカギが閉まるオートロックとなっております。カギをお部屋に置いたまま外出なさらないようご注意下さい」
なるほど。カギのアクセサリーで部屋のブレーカーを起動させるシステムというのは、ビジネスホテルではよくある仕組みだな。
渡されたカギは、よくあるシリンダーキー。アクセサリーとしてアクリルの四角柱にレッツォインのロゴが彫られている。このアクセサリーを専用の穴に差し込むのだ。
ここで、セシリオがモニカに質問をぶつけた。
「万が一、カギを部屋の中に忘れて外出した場合はどうすれば?」
「受付カウンターにお越し下さい。その際、セキュリティの関係で身分証明書をご提示いただきます」
「身分証明書……冒険者ギルドのギルドカードで大丈夫か?」
「はい、それで結構です」
ギルドカードとは、冒険者ギルドを始め各ギルドの構成員である事を示すカードのこと。パラドール王国やルッツ王国では身分証明書として機能しているそうだ。
また、各ギルドで構成員の口座を作って報奨金を振り込むという銀行っぽい事をしており、口座を使ったお金のやり取りやお金の預かり、引き落としにもギルドカードが必要になるのだそう。
「その他の詳しいことはお部屋にあるガイドに書かれておりますので、よければ目を通して下さい。何かありましたら、受付カウンターへお越し下さい。内線で通話いただいても結構です。
あちらにございますエレベーターから客室の階へ向かうことが出来ます。それでは、どうぞごゆっくり」
そして僕達は、それぞれの部屋へ向かった。
「えーと……穴はこれか。お、これはすごい」
部屋に入って左側にあった穴にキーアクセサリーを差し込むと、すぐに部屋の明かりが付いた。
入室して右側に扉、左側に引き戸式のクローゼットがある。奥は客室のメインとなる部分だろう。
まず、部屋のメイン部分から見ていく。左側にはカウンタータイプの机が設置されており、かなり大きい。
その代わり備品が多く、机に上に電気ケトル、サービスのティーバッグとスティック包装のインスタントコーヒー、コップ、マグカップ、メモとペン、テレビ、電話機があり、下には引き出しと冷蔵庫があった。
なお、机に面している壁には鏡が貼り付けてあり、その上に机を照らすライトがあった。どうやらこの机は机、テーブル、化粧台の3役を担っているらしい。
ちなみに冷蔵庫の中には何も無く、買ってきた物を入れておくための物のようだ。テレビの内容はファシルキャビンでチェックしたときと変わっていない。どうやらまだ番組が増えるレベルに達していないらしい。
引き出しの中には大きめの冊子が入っており、部屋の機器の使い方、内線の番号表、ホテルの共用設備の紹介といった情報が書かれていた。
続いて机の反対側。こちらにはセミダブルサイズのベッドが設置されている。
またベッドと机の間に窓が取り付けられており、ネゴシオの町並みを眺めることが出来る。
「クローゼットの中を見てみるか。……へぇ、泊まる分には困らなさそうだな」
クローゼットにはハンガーが何個か吊られており、このスペースを使って上着を掛けておくようだ。
他には貴重品保管用の金庫、寝間着、部屋で使うスリッパ、アイロンセット、ズボンプレッサーがあった。
「最後はこの扉か」
クローゼットの反対側にあった扉を開いてみると、予想通り水場のスペースだった。
洗面台、ウォシュレット付きトイレ、バスタブとシャワーという、いわゆる3点式ユニットバスであった。
このうち洗面台にはうがい用コップと液体石けんが置かれており、他にアメニティとして歯磨きセット、使い捨てカミソリ、シェービングローション、綿棒、コットン、櫛があった。このアメニティ類は持ち帰りOK。
また、洗面台の上にタオルが置かれており、手拭き用、フェイスタオル、ボディタオル、バスタオルが揃っていた。
風呂の方だが、こちらはバスタブに足拭き用マットがかけられていた。さらにバスタブの中にシャンプー、リンス、ボディソープのボトルを置くスペースがあり、風呂に入るときはこの石けん類を使うらしい。
シャワーの勢いは満足がいく物であった。ただ、シャワーや蛇口から温水だけ出すと痛くなるくらい熱くなってしまうので、冷水を適度に出しながら温度調整する必要がありそうだ。
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