003号室 カプセルホテル『ファシルキャビン』開業!!
「あの人は良さそうですね」
「よっしゃ。それ!」
現在、僕は従業員を確保すべく屋敷を探索している。どうやら最低3人の従業員を雇用しないと、チュートリアルが先に進まないようなのだ。
従業員の確保には、モニカが非常に役立ってくれた。どうも彼女、人を見る目がかなりあるようで、ホテル運営において高い能力を持った人材を簡単に見抜いてしまうのだ。
なお、ゴーストは調伏された際、僕のスキルについて解放されている部分のみ知識が共有される仕組みになっている。モニカが調伏されてから僕のことをオーナーだと認識したのはそのためだ。
……ちなみに、ほとんどのゴーストが雇用契約書1枚か2枚で調伏されていた。モニカはよっぽど強力なゴーストらしい。
「これで5人雇用出来たな」
「はい。スキルの説明では3人で良いらしいのですが、ホテルの運営を行うには最低これだけの人数は確保しておきたいですから」
少し多めに従業員を雇用した僕達は、ようやくチュートリアルが示す場所へ移動を開始した。
チュートリアルに示された場所に来てみると、そこは廃墟だらけでボロボロだが大きな広場だった。
「ここ、エントラーダの門前広場ですね」
「『エントラーダ』?」
「この街の名前です。門前広場は文字通り街の出入りに使う門の前にある広場で、人の往来が激しかったから賑わいがあって、一等地として扱われていたんですよ。……まぁ、今は見る影もないですけど」
言われてみれば、廃墟になっている残骸の一部は門っぽい気がする。
それはさておき、僕はチュートリアルに指定された場所の前に立った。
『それではこれより、ホテルの建設を開始します』
チュートリアルのメッセージが出現した直後、僕の目の前で強烈な光が発生した。
それが収まると、目の前には全面ガラス張りの5階建てビルが建っていた……。
『ホテルは指定された場所に建ちます。また、ホテル名は自動的に決定されます』
それはありがたい。自分で建てる場所を決めるとなると悩んじゃうし、自分にネーミングセンスはないから良い名前が思いつかないしね。
「オーナー、見てください。街が……」
「うわ、いつの間に……」
振り返ると、なんと今まで廃墟だった街が、まるで新築のように真新しい建物が林立していた。道も綺麗に修理され、見事な石畳が敷かれている。
『ホテルを建設すると、街全体が浄化され、人が住める状態になります。ゴーストは調伏された者以外は追い出され、街に侵入出来なくなります』
なるほど、だから街が廃墟じゃ無くなったんだ。しかも重苦しい雰囲気がきれいさっぱり消えている。
「まさか、あの事故が起こる前の街の姿をまた見ること出来るなんて……。さぁ、オーナー。ホテルの中を見てみましょう」
「そうだね、モニカ。中に入ろうか」
というわけで、僕とモニカ達ゴーストはホテルへ入館した。
ちなみに、このホテルの名前は入り口横の看板に書かれてあった。
『カプセルホテル ファシルキャビン』
ホテルに入ると、シンプルな内装の受付ロビーが見えた。ロビーの右側には共用スペースへの入り口があるようだが、宿泊者でなければドアを開けられないらしい。
反対にロビーの左側にはエレベーターがあるが、これも宿泊者でなければ使えないシステムであるらしい。
『以上でチュートリアルを終了します。新たな機能が追加された場合、またお知らせします。
なお、本機能はスキルのステータス確認やヘルプ機能として自由に確認できます。どうぞ気軽にご利用ください』
そう知らされ、チュートリアル画面は消えた。
せっかくだからステータスを見てみよう。
『スキル:ホテルオーナー
ランク:駆け出しホテルオーナー
運営ホテル:カプセルホテル『ファシルキャビン』』
「オーナーのスキル、ランク式だったんですね」
「ランク式?」
モニカが聞きなれない単語を言ったので、僕は聞いてみた。
「スキルには色々な分け方があるのですが、その一つに成長方式で分類する方法があります。
例えば、レベルで表される『レベル式』、成長について一切表示されない『無表示式』などです。
ランク式はレベル式と似ているという指摘があるのですが、レベル式は数字で表されるのに対しランク式は称号で表されるのです。おそらく、オーナーのスキルは成長すると称号が変わるのでしょう」
ということは、今ランクの欄に書かれている『駆け出しオーナー』が今後変化するということか。
「ところで、オーナー。私達はスキルの力でホテルの機能や業務の進め方について一通り知識が伝えられるのですが、やはり実際に業務を行わなければわからないこともあると思うのです。
なので、本格的にお客様を迎える前に予行演習をなさいませんか? オーナーがお客様役になって一晩宿泊してください。オーナーもホテルの設備や機能を確認できるのでいい提案だと思うのですが」
「そうだね。僕もホテルの泊まり心地とか気になってたし、やってみようかな」
というわけで、僕が客になって仕事の実践練習を行うことになった。
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