第七話 北方海域海戦 1

 9月28日、北大帝本土よりはるか北方の北方海域に集まった、北大帝海軍の連合艦隊、第1、第2、第3艦隊、その総旗艦『天神』…


 連合艦隊、それは北大帝の戦艦や重巡洋艦などを結集し、砲打撃力を最大にまで高めた艦隊。その打撃力は、世界最強レベル。特に、第一艦隊の攻撃力はピカイチで、「重装甲打撃艦」という、装甲と火力、共に化け物の艦を4隻擁している。


 そして、それらを束ねるのが総旗艦の戦艦『天神』である。40cm3連装砲を4基搭載していて、走攻守、どれもバランスがとれた傑作艦である。これが先頭に立ち、それに各艦が続く。そして、総旗艦なので当然艦隊の司令部が入っている。


 連合艦隊は、長官が中澤大将、参謀長が青葉少将、主任参謀が副丸大佐といった幕僚が率いている。


 話を戻すと、この北方海域に連合艦隊が集まっている。

「なんでこんな寒い日に来るんだよ…」

 と、青葉参謀長は、愚痴をこぼしつつも寒さと格闘していた。そして、第一艦橋でコーヒーを飲んでいた。そんな時、外に出ていた航海参謀の原島中佐が、雪にまみれたドアを開けて艦橋内に入ってきた。外気温を見に行っていたのだ。そして、入ってくるなり震えた声で、

「外の気温…-19℃でした…」

と、奥歯をガチガチ言わせながら言った。こんな吹雪の、極寒の世界を艦隊は進んでいる。窓ガラスの枠には雪がこびりつき、それをワイパーが落としている。ドアを開けたら、目の前に広がるのは別世界である。


「こんな中、本当に敵艦隊なんかいるんでしょうかね…」

 と、皆が口々に言うが、それを中澤大将が沈黙で返した。とことん無口の将である。


 ことの始まりは2週間前、第3潜水哨戒線の「ク-56」潜が、北方にて敵艦隊を発見。続いて、同哨戒線の「ク-98」潜が艦隊を補足。敵艦隊がいることが確定的になった。南方からわざわざ、北方海域を制圧するために来たのだ。これを全力で叩くべく、連合艦隊に出撃命令が出されたのだ。そして今、吹雪の-19℃の海の中にいる。


 この雪でも、マストや露天艦橋の対艦用索敵レーダーは常に電波を発し続けている。戦闘情報室(CIC)に情報を送り続けていた。


 13時48分、戦闘情報室の一人が、

「レーダーに感あり!艦隊補足!」

 と叫んだ。そこに、砲術参謀の神野少佐が駆け込んできた。画面には、縦に並ぶ船団がはっきりと映っていた。

「敵艦隊です!右30°、こちらに向かって接近してきます!」

 と、ちょうど真上にある艦橋につながる伝声管に向けて叫んだ。

「総員戦闘配置」

 と、それまでずっと黙っていた中澤司令長官が低い声で言った。

「総員戦闘配置!」

 これが復唱されていった。

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