第三話 ファーザ島の戦い 2
上陸作戦時のこのとき、空はやはり曇っていた。太陽の光が遮られて、若干暗かった。その空を背景に、海兵隊艦隊の第一戦隊所属、戦艦「
「主砲、撃ち方始め!」
という、指揮の声が艦内に響いた。そして、主砲管制装置の引き金が、引かれた。直後に、砲撃の爆音が響いた。発射された砲弾は、ヒュルヒュルと音を立てながら、島に向かって飛んで行く。そして、一気に着弾。巨大な土の柱を巻き上げた。続けて、砲弾を撃ちまくった。
20発ほど島に撃ち込んだ。硝煙が、いまだに上がっている。この砲撃の最中に、上陸支援艦艇は沖に集結していた。もう、兵士達は上陸用舟艇に乗り込んで、上陸の準備は済んでいる。なお、この作戦の筋書きは以下の通りである。まず、天川、台川の二隻が艦砲射撃、続いて、A、B、Cと、大まかに3つに分けた上陸地点に、海兵隊が一気に上陸する。後方では、橋頭堡を築き、野砲を置いて砲撃支援が出来るようにする。
また、この島の地理も解説しておく。この島は、中央部に滑走路がある。そして、その北側に山があり、そこに陣地がある。
砲撃が終わって10分ほど、上陸用舟艇が、大量に出てきて、白い筋を曳きながら島に接近し始めた。上陸艇は、ゆっくりゆっくり沿岸に接近している。上陸艇の兵達は、先ほどの砲撃で、主力軍は壊滅したのではないか、と思っていたりした。先ほどの砲撃は、それくらいすさまじいものだったのだ。
海岸から50mほどのところまで近づいたとき、上陸艇の操縦員が叫んだ。
「上陸開始1分前!障害物に注意せよ!武運を祈る!」
そして、上陸艇は、着岸した。最前列にいる兵が、ハンドルを回してハッチを開けた。そして、ぞろぞろと上陸を始めた。7時22分、Aビーチに海兵隊第一師団が上陸。B、Cビーチにも海兵隊が上陸を始めた。ライフルを握りしめ、前進を開始した。
Aビーチでは、海岸より50mほど進んだところで、陣地の砲撃が開始された。山の陣地の20cm砲である。砲弾が飛来し、爆発して破片をまき散らした。この砲撃から、さらに砲撃が激しくなった。着弾音が響き渡り、土煙が上がった。前進は、砲撃で一時困難となった。
そこに、陸軍の第23師団、第11連隊が上陸。砲を持ち込み、海兵隊に続いた。海兵隊は、その少し前にある、すこし盛り土になっているところまで到着した。ここあたりにくると、もう目視で砲撃陣地が見える。このぐらいになると、頭上をヒュンヒュンと飛んでいく機関銃の、連続して光るマズルフラッシュ(銃を撃ったときの閃光)が見えるようになっていた。また、先ほどより巨弾をこちらに送り続けている、砲兵陣地も見えた。そこには、37mm対戦車砲もあった。これが、戦車ではなく、歩兵に向けて放たれまくっているのである。
「あれがやっかいだな…」
と、渡部第11連隊長が呟いた。
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