本編

第一話 開戦

1945年5月4日、北大帝共和国の首都、帝都にある外務省の正面玄関から入るとすぐ目の前に見える階段では、慌ただしく職員が、上へ下へと走っていた。四徴連邦から、宣戦布告の文が届いたのだ。

 

 北大帝と四徴の対立は、第一次世界大戦が終わった1920年代、そのころから両国の関係が悪くなった。四徴側が、領海内に入ってくる挑発を仕掛けてきたりしていて、一触即発の事態になっていった。そして、軍拡競争を繰り広げた。海軍では、建艦競争と新技術の開発を、陸軍は、師団の増設や新工場設立、それによる兵器の大量生産、などである。猛訓練も行っていた。


 そして、とうとう宣戦布告である。まぁ、北大帝の軍情報部も、2ヶ月前ぐらいからら、四徴連邦内の開戦の動きを掴んでいたから、今更という感じであるが。


 この報は、駐北大帝の四徴大使館から外務省に手渡された。これを最初に受け取った小見外務次官は、いよいよかと思いつつも、震える手を押さえていた。来ると分かっていても、いざ来ると普通はそうなるものである。そして、迅速に軍や、共和国府に情報が渡った。


 共和国府に渡った情報を使い、政府は政府発表の準備を始め、軍は、待ちかねていたと言わんばかりに、準備を始めた。また、すぐに国営ラジオから、臨時速報を流した。

「四徴連邦は我が国に対し 宣戦布告をする旨を通告」

 という速報が、全土で流れた。そして、情報が入るまでお待ち下さいという台詞の次に、しばらくの沈黙の後、首相会見に入った。四徴連邦が宣戦布告を通達してきたこと、我が国は、全力を持ってこれに対抗すること、それらをラジオを通し発表した。


 軍の方では、常時戦争が起こってもいいように、出動準備状態においてあったので、直ちに出動にかかった。例えば、帝都の南出野みなみいでの軍港からは、世界有数の砲火力を誇る連合艦隊が出撃し、陸軍の第23師団、第25師団、第26師団が出撃準備を整えて、待機していた。これから、太平洋で、激戦が行われようとしていた。

 

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