第14話 (生まれ変わったら鳥になりたい)
☆
機能不全になった。
俺の身体がであるが。
その原因は分かる。
さっきの俺達に対するイジメっ子の襲撃だ。
その為に身体が硬直して動かなくなった。
そして俺と凛子と橋本さんは病院に運ばれたが。
特に重傷でも無かったので直ぐ退院した。
因みに俺もだが。
警察に事情を聴かれたりして今に至っている。
「先輩」
「...何だ」
「今日は御免なさい。最悪な目に遭いましたね」
「...そうだな。...だけど」
警察署からの帰宅途中。
俺は涙を浮かべる凛子を見る。
凛子の涙を拭った。
それから「今日は...運が悪かった」と言う。
「本当に最悪ですね」
「こういう日もあるだろうからな。それが人生だ」
「...そうですね。でも余計な事をしたから先輩が傷付いてしまった。それは反省しかないです」
「...傷付いたというよりかは気が付いたな」
「何にですか?」
「目標を目指すって事にな」
「...先輩...」
「...俺は今まで訳が分からないまま行動していたから。何をどうすれば良いのかも分からなかったんだがそうかこれが目標だって思った」
そう言いながら俺は少しだけ笑みを浮かべる。
それから凛子を見る。
すると凛子は「お姉ちゃんはなんで助けに来たんですかね」と聞いてくる。
俺は「まあマジに助けに来たかどうかは分からんが...」と言う。
「良く分からないですよ。本当に」
「助けに来たっていうよりかはコンビニに本当に用事だったんじゃないか」
「そうですかね。それにしては...自宅から離れています」
「...確かにな。近所にコンビニあるのにわざわざ俺達の居る場所に来るのが分からん」
「...まあどっちにせよお姉ちゃんにはお礼を言いますけど。それはそれで」
「そうだな」
そして俺達は俺の家に行き着く。
俺は凛子を見た。
「今日は楽しかった。色々あったけど」と言いながらだ。
凛子は「...ですね」と返事をしながら苦笑しつつ俺を見る。
「...先輩。また一緒にどこか行きましょうか」
「...そうだな」
「...」
「...どうした」
「いや。今日は楽しかったです」
それから凛子は頭を深々と下げる。
そして俺を見てきた。
「先輩の事が心配ですけど本当に大丈夫ですか」と聞いてくる。
俺は「...ああ」と返事をした。
「...大丈夫だ」
「...そうですか。...高校ですけどやっぱり辞めるんですか?」
「高校は...今は何も考えられないな」
「あ。悩ませてしまったならすいません」
「...悩んでないよ。...俺が馬鹿なだけだから」
「そんな事無いです。人生の分岐点ですからね」
凛子は俺を見る。
そして胸元に手を添える。
俺は「...」と無口になりながら視線を逸らした。
凛子は手を離した。
「...先輩。決める時は私も呼んで下さい。私も先輩と一緒に考えたいです」
「...有難うな。凛子」
「社会に出るお手伝いもしますから」
「...ああ」
俺はその言葉に小さく笑みを浮かべた。
それから俺は手を振ってから凛子を見送る。
凛子は俺に手を振りながら笑顔で去って行った。
あんないい子を巻き添えにした事。
反省しかないな。
☆
私は帰っていると目の前に人影が見えた事に気が付く。
それは...お姉ちゃんだった。
私を見ながら立っている。
その顔を私は睨む様に見るが。
少し経ってからハッとした。
「さっきは有難う」
「...何が」
「...私達を助けてくれたんでしょう」
「1つ言うけど本当にたまたま。だから感謝される必要は無い」
「たまたまにしても遠くのコンビニにわざわざ来るのおかしくない?」
「...あのコンビニじゃないと支払いが出来ない分があったから」
言いながら踵を返すお姉ちゃんの背に「何でこの場所に居るの」と聞いた。
するとお姉ちゃんは「何だって良いでしょう。貴方が居たから隠れていただけ」と言葉を発する。
私はその言葉に「そう」と返事をした。
「...ねえ。お姉ちゃん」
「...」
「...先輩はね。人生の本を書いた」
「...そう」
「自らの人生の本。...一冊にまとめていた」
「...そう」
「そう」としか言わない。
だけどまあ伝わってはいる様だ。
私はその背中を見ながら歩く。
するといきなり立ち止まってから「...私は弟が家族として可愛がっていて好きだったからだからショックだった」と言い出す。
「...だからその分。血が繋がって無いとはいえ。...私は貴方に想う事がある」
「...?」
「...」
お姉ちゃんはそれだけ言ってからそのまま足を動かした。
それから歩き出す。
私は「...お姉ちゃん。...弟さんは...発達障害もあったんでしょ」と聞いてみる。
すると「だからこそ天才だった。私以上に」と答えてくれた。
「...IQは140あったし。天才的だった」
「...確か弟さんは自閉症スペクトラムだったって聞いたけど」
「大体のコミュニケーションが苦手だった。彼は話す度に言葉のどもりがあってそれがキツいと自殺したみたいだけど」
「...」
「(生まれ変わったら鳥になりたい)と言い残して。私は何なんだろうと」
「...そうなんだね」
コミュニケーション...か。
そう思いながら私はお姉ちゃんを見る。
お姉ちゃんは何もそれ以上は語らず自宅にそのまま帰って来た。
するとお姉ちゃんはこう呟いた。
「反省するなら今だろうけど...反省という全てを知らない」とだ。
私は顔を上げて反応するが。
お姉ちゃんは家に入ってしまった。
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