第13話 凛音が狂った原因のピースが嵌っていくとき


先輩の...イジメられていたご友人に関して先輩に許可を貰って聞いた事がある。

その人は本当に正義深い人だったそうだ。

困っていれば助ける。

そんな感じの。


だが彼がいつの間にか標的になり。

そのまま彼は病んでしまい自殺した、となっている。

此処から先は先輩が知らない。


吉田義輝という人だが。

その人は...聞いた事がある。

何故聞いた事があるのかといえば簡単だ。

吉田義輝は...あの人の弟の...部活同士の知り合いだ。

だから知っている。


吉田義輝という人間が...自らの弟を自殺に追いやったと。

その正義故に...だが。

だからあの人は怒り狂っていた。


そして...彼女は壊れた。

弟もイジメを受け。

吉田義輝...の事もイジメを誘発したのではないかと思うが。

滅茶苦茶な安易な理由である。


これを先輩に内緒にしているのには理由がある。

先輩が知ったら必ず...お姉ちゃんに復讐するだろう。

そして私達の関係が壊れる可能性がある。

そうなった場合収拾がつかない。


「...どうした?凛子」

「...あ。いえ。ちょっとボーッとしていまして」


私はこの事を知られる訳にはいかない。

絶対に知られてはならないだろう。

そう思いながら私は購入したアイスを店内の飲食スペースで食べていた。

正直私が...私が。

修復できないレベルまで落ち込む可能性がある。


「お前なんか調子が悪いのか」


そして手を伸ばして来る先輩。

それから私の額に触る。

私はビクッとなりながらもされるがままになっていた。

すると先輩は「熱は無いな」と首を傾げる。


「...先輩。恥ずかしいです」

「お前な。お前がいう言葉じゃ無いぞそれは」

「ま、まあそうなんですけど」

「...全くな」


そうしていると背後から「ちゃお」と声がした。

顔を上げるとそこに恭子が居た。

バイト制服を脱いでいる。

そして私達の横に腰掛けた。


「もしかして休憩中?」

「そうだね。休憩だよ」

「...お疲れさん。偉いな。お前は働くのが」

「...私は仕方が無く働いています。...偉いというよりかはアハハ」

「...だけど何もしてない俺よりかマシだろ」


苦笑する先輩。

それから3人で他愛もない会話をしているとコンビニに3人の男達が入って来る。

その男達は私達を見ながら「あれ?可愛い子いるじゃん」と言って寄って来た。

あ?何?


「ねえねえ。何処の高校?何でそんな冴えないのと居るの?」

「...私の友人です。悪く言わないで下さい」

「そうなんだ。...そうなんだね。凛子ちゃん」

「...!!!!?...どうして名前を知っている!!!!!」

「だってソイツは俺達がイジメていたヤツだし」

「...は?...お前ら!!!!!」


私はアイスを叩きつけた。

それから顔を上げて先輩を見る。

先輩は今にも吐きそうな顔をしている。

「あ、俺さ。佐藤司。んでこっち武。んでこっちは元谷。よろしくぅ」と平然と自己紹介する男共。


「ねえねえ。俺らが言える立場じゃ無いんだけどさ。不登校の野郎なんぞに構わないでさ。遊ぼうぜ」

「そーそー。将来なんて無いんだから」

「嫌だ!汚い手で触るな!!!!!」


そして私は大暴れする。

すると猛烈な激高した声が店内に響き渡る。

それは恭子だった。

「おどれらいい加減にせぇよコラァ!!!!!」という感じでだ。

え?と目が点になる。


「博多っ子舐めんなコラァ!!!!!じゃーしーんじゃよ!!!!!アタシのバイト先で暴れんなカスが!!!!!」


男達は目をパチクリしながらニヤッとする。

「こんな可愛い子達を傍にとか隅に置けねぇな?なぁ?杉山」とゲラゲラ笑う。

完全に馬鹿にしているその言葉に私は力いっぱい平手打ちした。

それから唇の端が切れて出血する男を睨む。


「...アンタ達のせいで...彼はどれだけ...」

「知らんがな。ってか今殴ったよな?慰謝料寄越せ。もしくは...」


そして男共は店員の恭子もろともに無理矢理、外に連れ出した。

だがその時だった。

パトカーのサイレンが聞こえて来た。

非常ベルの音が鳴り響く。

従業員が持っているベルの音が、だ。


「クソ。サツかよ。めんどいな」

「どうする?司」

「警察なんて怖くもねぇし。その前にコイツには金を貰わねぇと」


そう言いながら私を乱暴に地面に叩きつける。

私は「いったい!」と言いながら擦りむいた傷を見る。

このクソ馬鹿ども!

そして私をボコろうとする。


「怖くねぇよ!マッポなんかな!俺はいつも釈放されてんだっつーの!!!!!」

「慰謝料寄越せコラ!!!!!」


そして脅されているとコンビニ内から先輩が現れた。

それから「手を出すな」と言う。

小さい声で、だ。

思いっきり睨んだ。


「彼女に手を出すな!!!!!俺の大切な女性達だ!!!!!」


と声が裏返る様に脅す。

すると不良達は顔を見合わせてゲラゲラ笑い始めた。

「馬鹿じゃねぇの!マジに!そんな声しかでねぇとか!!!!!」と言いながらだ。


ここまでか...。

先輩マジに御免なさい、御免なさい...と涙を浮かべていると声がした。

「すいませんが」という声が。


「...誰だ?おめぇ」

「それ私の妹だから。仮にも。偶然来たら何なのこの状況?」


嫌気がする様な声をしながらあの人が3人の暴れている姿を見る。

そして「雑魚にやられないでよね。...凛子」と言い放つ。

するとその人は私から不良達を押しのけた。


「警察もの確定だよね?大人しく裁かれたら?」

「ばーか!俺の親は金持ちなんだよ!!!!!払ってくれるに決まっているだろ。保釈金とか毎回払っているしな!!!!!」


その姿にお姉ちゃんは「ウザ」と言い捨てる。

そんな間に3人を店長とか店員が抑え込み捕まえた。

それからお姉ちゃんは踵を返して去って行く。

去り行く背に私は聞く。


「助けたの」

「...偶然。コンビニに行こうとしたけど気力なくなった」


それから帰って行くお姉ちゃん。

私はその姿を見ながらハッとしてから恭子と先輩に駆け寄る。

警察官が念の為にと救急車を呼んでくれたが。


先輩の不安が拭えない。

こんな事が起こるなんて...あのクソ野郎ども絶対に許さない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る