第12話 人に触れる
正直俺はコンビニでもそうだが。
お店というお店には行きたくない。
俺が表に出れるのは家の前くらいまでだ。
だからコンビニに行くのも苦痛中の苦痛である。
そんな事で?と言われたら反応に苦しいが。
だけど俺はコンビニですら苦痛である。
家から出れないのだとにかく。
こうなったのはアイツのせいもあり。
そして...友人の自殺が絡んでいるが...。
「先輩。...先ずは一歩を踏み出してみませんか」
「...そうだな。...このままではいけないしな」
「はい。...だけど無理だと思ったら中止します」
そう言いながら凛子は俺の手を握ってくる。
それは恋人が繋ぐというより。
補助されている様な感じだ。
お爺さんを見守る為みたいな。
「気を付けてね」
「...叔母様。行って来ます」
「...宜しくね。小太郎を」
「はい」
そして俺は心臓が高鳴る不安。
それを持ちながら俺はエレベーターを降りて行く。
それから表に出る。
すると凛子が「先輩。大丈夫ですか」と聞いてきた。
「...ああ。...今の所は」
「きつかったら言って下さいね。...中止しますので」
歩くがまるでアスファルトが沼の様だ。
ドロドロのヘドロを歩いている感じだな。
こんなに駄目になっていたとは。
思いながら俺は歪む視界を何とか整えつつ。
そのまま歩いてからコンビニに着く。
「先輩。大丈夫ですか。中に入れますか」
「...ああ。今の所は大丈夫そうだ。...特に」
「...無理して体調が崩れたら意味無いので。...気を付けましょうね」
「サンキューな。...凛子」
「私は先輩が好きですから」
そう言いながら凛子は周りを見渡す。
それからコンビニに入る。
するとコンビニの店員が「いらっしゃいませ。あ。凛子ちゃん」と笑顔で挨拶をしてくるがそれにビクッとした。
視線が俺に向けられている。
絶望を感じる。
凛子の知り合いなのか。
そんな感じで思っていると凛子が俺の手を握る。
そして笑顔になってから店員に挨拶をする。
「恭子ちゃん。私の好きな人だよ」
「...あ。その人が!?噂の彼氏ちゃん!」
恭子?と思いながら俺は凛子を見る。
凛子は「この子は別の高校だけど高1の同級生。橋本恭子(はしもときょうこ)さんです」とニコッとする凛子。
俺はそんな姿に恭子さんを見る。
恭子さんは複雑な顔をしてから「宜しく」と笑顔になる。
「初めまして。俺は杉山小太郎だ」
「...初めまして。...その。大変な人生だって噂だよ。彼氏さん。貴方の事が」
「そうか。...まあでも...そんなに大変な人生でも無い。コイツが居るしな」
「そうなんですね...どんな人生を歩んで来たんですか?」
「具体的には生きている人が死ぬ姿を見たって感じだな。心が折れた」
そう言いながら俺は恭子を見る。
恭子は「...私も大変な人生だけど...貧困とかですから。...彼氏さんの様に大変じゃないです。...本当に大変な人生ですね」と言ってくる。
俺はその言葉に「そう言ってくれて感謝だよ」と言う。
「...ねえ。凛子」
「...何?恭子」
「告白したの?」
「ぶはぁ!!!!!」
凛子は噴き出す。
それから「ゲホゲホ!」と咳き込んだ。
ぶっちゃけた質問だな。
俺は苦笑いを浮かべながら凛子を見る。
「したよ。告白」
「...そっか。でも今はそんな感じならまだ付き合って無いんだね」
「俺が保留してしまったからな」
「そうなんだね。ふむ」
そう話しつつ恭子はニコッとする。
それから「まあでも。楽しんでね」と言ってくる。
俺は凛子と見合う。
そして胸に手を添える。
何となく落ち着いた。
「凛子」
「うん。何?」
「応援してる。...貴方が幸せになる事を友人として」
「...有難うね恭子。私、頑張る」
目の前にその人物が居るのにそういう話は。
思いながら俺は苦笑いを浮かべる。
それから凛子を見ていると凛子は「先輩。どうですか?落ち着きましたか?」と聞いてくる。
俺はその言葉に胸にもう一度手を添える。
そして凛子達を見る。
「...ああ。有難う。落ち着いたよ」
「良かったね。凛子」
「...うん。恭子。実は...今が一歩目なんだ」
「今が一歩目?」
「彼は...家から出れないから慣らす為にここに来たの」
「...そっか。選んでくれて嬉しいな」
そんな言葉を聞きながら「凛子。子供じゃないからその言い方は」と言うが。
「まあまあ先輩。恭子ですから」とニコッとしてくる。
俺は盛大に溜息を吐いた。
だけど何だかな。
悪い気はしない感じだ。
「...因みに私は凛音先輩とも友人でした。...だけど」
「例の件で完全に決別した感じか」
「そうですね」
そう言いながら恭子はレジを触る。
それから「彼女自身にも色々ありますけど。言い訳にしかならないですから」と眉を顰めているとお客さんがレジにやって来た。
それを見てから恭子は「また後でです」と笑顔になりながら商品をレジ打ちした。
俺はその姿を見てから凛子を見る。
「何か買って行きましょうか」
「そうだな」
正直頭痛はする。
だが多少はマシになった感じだ。
人と触れ合うのはこういう事をいうんだな。
そう思いながらだ。
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