第11話 ゲーム


凛子が帰ってから俺は部屋の中を見渡していた。

そして新聞をまた切ってはっ付けていた。

俺は正直、物欲が無い。

物欲が無いってのはつまり...何も欲しくない。

もうこれが正常な脳みそでは無いってのは知っているが本当に物欲が無いのである。


「...」


久々に教科書に触れてみたがやはりゲロってしまいそうだった。

何も出来ない自分がもどかしくて...もどかしくて。

そう思いながら居ると玄関が開く音がした。

俺は「母さん」と言いながら玄関に向かった。


「ただいま。小太郎」

「...大丈夫だった?仕事は」

「仕事は順調ね。ゴメンね。今日も仕事で」

「いや...大丈夫だよ。俺は」

「...何かあった?」

「...何も無いよ。...俺はいつもの通りだ」


察しが良いのも母親だな。

そう思いながら母さんを見る。

正直...悩んでいるとは言えなかった。

それも凛音の件でだ。

母さんをこれ以上悩ませたくない。


「...もしかして凛音ちゃんと何かあったの。それか凛子ちゃん」

「本当に察しが良いね。母さんは」

「母親ですから」

「...凛子がこっちに引っ越して来るんだけど...それとは別に凛音に...会ってね」

「...そう」


そんな事を言いながら眉を顰める母さん。

それから上がってから鞄を置いた。

そして上着を着替え始める。


「...小太郎」

「何。母さん」

「...私も正直、怒りしかない。...だけど和解案とか成立しないのかな」

「...無理っぽいよ。アイツは変わってなかったしね」

「そう。...じゃあ無理はしないでいきましょう」


そして母親はポニテに髪の毛を纏める。

それから「ねえ」と言ってくる。

俺は顔を上げた。

そうしてから母親を「?」を浮かべて見る。


「スイッチしない?...ゲームで身体動かそう」

「...そうだね」


それから俺は笑みを浮かべてスイッチを動かす。

そしてゲームで遊び始めた。

それは...とてもリラックスした感じになった。

ゲームは難しかったけど母親とすると難なくクリアできる。

母強し、だな。



「小太郎」

「...何。母さん」

「確か...凛音ちゃんは虐待と弟さんを失っていたよね?」

「そうだね。結構前に聞いた覚えがある」

「...私達と同じね」

「...そうだね」


俺達の父親は船の事故に遭った。

貨物船の船員だったのだが。

今でも行方が分からない。

その事もあってか俺は結構、頭がぐちゃぐちゃだ。

行方不明者リストに父親の名前も載っていたし...だ。


「...でも私達の場合は自殺じゃないしね」

「うん」

「でも彼女の気持ちは分からんでもない」

「...そうだけど」

「...」


母親はそれだけ言ってからゲームを片す。

それから「お風呂に入って来るね」と言ってくる。

俺はその姿を見送ってから俺はスマホを弄る。

そこにはメッセージが入っていた。


(先輩。今日は有難う御座いました)


という感じでだ。

メッセージに全く気が付かなかった。

というのもゲームに熱中していたもんだから。


(すまない。テレビゲームで身体を動かしていた)

(いえいえ)

(すまないな)


直ぐに返事をくれた。

俺はその事に(ありがとう。...スマホが傍って事は今は何をしているだお前は)と聞いてみる。

すると(はい。実はコスプレの衣装をネットとかで探していました)と書いてくる。

オイ。マジにコスプレする気か。


(本当にコスプレするのか?)

(ですです。...だって私、してみたいですから。人生は1度きりですから)

(早いと思う。幾ら何でも人生を考えるのは)

(遅かれ早かれ私はコスプレはしてみたいです)

(...)

(若い時にしとかないと)


俺はそんな言葉に(そうか)とだけ返事を書いた。

そしてスタンプを送る。

すると(でもゲームって珍しいですね。先輩が)と書いてくる。

俺は(ああ。まあな)と目線をずらしながら答える。


(母親と一緒だったからな)

(そうなんですね)

(...お前に聞くのは癪だけど。...アイツはどうなった)

(あの人とは仲たがいになりました)

(...そうなのか)

(あの人が幾ら酷い人生でも私達が苦しむのはおかしいですから)


そして(私は...あの人とは一生仲良くなれません)と書いてくる。

怒っている様なスタンプも送ってくる。

十分にキレている様だ。

俺は考えながら(母親も気にはしていた。それも凛音をな)と書く。


(あの人を心配しても意味無いです)

(だがそう言っても家族だという感じだ)

(...それはさっき私も考えたんですけどね。だけどあの人は何も変わらない。何よりもまず努力しないですから)

(ああ)


(だからもう諦めました)と文章を送ってくる。

俺はその言葉に複雑な顔をする。

すると母親が「お風呂入って良いよー」と言ってきた。

俺はそんな呼び声に「はい」と返事をする。


(風呂に入って来るから)

(はい。先輩)


そして俺は風呂に入ってからゆっくりしてから。

色々と切り抜きをしたりして夕飯を食べ寝て翌朝になる。

朝早くから凛子がやって来た。

俺に「コンビニ行きませんか」と言ってきながらだ。

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