第9話 歪んだ性格

「...凛音。...どういう事だつまり。凛子の引っ越し用品を持って来たのか」

「そうそう。持ってきてあげたって感じだね」

「...有難う。...だけど出来れば触ってほしく無かったかな」

「はい?せっかく持ってきてあげたのに何?その態度」


凛子は凛音から奪い取る様に荷物を取った。

それから凛子は冷徹な顔をする。

「貴方がこれまでやった事を考えると素直に喜べないの」と告げた。

そして冷たい眼差しを自らの姉に向ける。


「...貴方は恋人を捨てた。本当に非難に値する」

「まあ私も貴方の事は妹として見てないから大丈夫だよ。寧ろ歓迎だね。今回の貴方の決めた事は」

「昔から鬱陶しいって思っていたんでしょ。...凛音」

「そうだね。...正直再婚してから鬱陶しく思っていた。貴方の事。だって...成績も優秀だしね。お父さんとか周りにちやほやされて。鬱陶しかった」

「...だからと言ってここまでする?最低だね」


「まあどうあれ私はもう関係無いでしょ」と言いながら凛音は手をひらひらさせる。

俺は青ざめていたが...声を発した。

「お前本当にドの付く屑だな」とだ。

凛音は「アハハ。私は私自身が幸せになれば何でも良いから」と言い出す。


「今ですら宗助さんと幸せだしね」

「俺と付き合ったのは何だったんだ?結局」

「まあATMみたいな?アハハ」

「...」

「凛音。本気で貴方を殺したいんだけど」


俺は殺意満々な感じになってマジにキレる凛子を見る。

「落ち着け。凛子。キレても仕方がない」と言い聞かせた。

そして凛音は「私は初めから使い捨てるつもりだった。そもそも貴方は...意志が弱いから」と言う。

それから凛音は「じゃあね」と手を振って去って行った。


「...クソが」


そんな事を凛子は呟く。

それから俺に向いてきながら「これ先輩の家に置いてて貰って良いですか?引っ越しの日まで」と言ってくる。

俺はその言葉に「ああ」と返事をした。

そして俺を見てくる。


「...先輩。嫌なものを見せましたね」

「もう良いよ。アイツの事は。慣れているから」

「...あんな女に巡り合った事が不幸でした」

「そう言うな。...確かにクソではあるがそのお陰で俺はお前と知り合えたんだから」

「...そうですね。前向きに考えましょうかね」


そう言いながら凛子は柔和な感じを見せる。

そして横を見た。

俺はその姿を見ながら「気を付けて帰ってくれ」と声を掛ける。

複雑な顔をしていた凛子は「ですね」と答えた。


「...先輩。有難う御座います。いつも」

「俺は何もしてない。...お前に助けられてばかりだから」

「でも先輩の存在があるからこそ頑張れます。...じゃなかったらとっくの昔に刺し殺してます。あの人を」

「なんであんなに歪んでいるのかだな」

「...愛情を貰って無いからじゃないですか。...母親に」

「...母親...か」


「先輩が知っているか分かりませんが彼女の母親は先生でした。大学の...それも教授です。だからこそ母親にビシバシ鍛えられていたそうです。歪んだのはそれが理由ですね。彼女が話しているかどうか分かりませんがそういう事です」と言ってくる。

俺はその言葉に目線を逸らす。

それから考え込んだ。


「成程な」

「だからと言ってこれが言い訳になりません。イジメはイジメですから。歪んでいようがいまいがやった事はマジに最悪です」

「...確かにな」

「...私はあの人からしたら使い捨ての人形みたいな感じでしょう。怒りしか湧きませんね」

「...」

「許す気は無いです。到底。...私が周りからちやほやされている?あの人は何も知らないんだ」


「私は苦労の末にこの場所に居るのに」と吐き捨てながら荷物を持って踵を返してから俺に向く。

「じゃあ荷物を置いていきます」と言いながらだ。

俺はその言葉に「待て。それは俺が持って上がるから」と話す。


「え?良いんですか?」

「下着とかじゃ無いよな?」

「これは私の私物ですがそれでは無いです」

「...そうか。なら持って上がるから」

「そうですか...。有難う御座います。先輩」


そして俺はその荷物を受ける。

それから俺は凛子を見た。

凛子は俺の姿を見ながら「先輩。いずれにせよ私の家族が迷惑を掛けています。すいません」と頭を下げてくる。


「...気にすんな。有難うな」

「あの人の事は親も...相当に気に掛けていますが...何も変わらないですから」

「愛情を貰っている癖に蔑ろか...厳しいもんだな」

「...もう諦めました。あの人は最低というイメージのままです。永遠に変わらないでしょうしもうどうでも良いです」

「...」


俺は考える。

それから苦笑していたがやがて「じゃあ先輩。立ち話もなんですし。..体調も心配ですし別れましょう」と笑顔になる凛子。

その言葉に「ああ」と返事をした。

そして俺は凛子と別れ...そのまま部屋に戻った。

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