第7話 殺意と病気
☆
私はあの人を決して許さない。
法律が無く殺せるものならぶっ殺したい気分である。
思い出す度にその様な怒りが湧く。
私の大切な大切な人を裏切った挙句。
イジメを誘発した可能性があるあの女を。
私はそう思いながら複雑な顔で料理をする。
正直、私はこうして料理をするのが苦手だ。
そして...美味しく出来ない。
だからこそ料理はしたく無いが。
だけど...愛しい先輩が居る。
待っているからこそ私は料理をする。
今日は...チャーハンを作ってみた。
とは言ってもそれじゃ物足りないと思うのでエビチャーハンにする。
エビは冷凍で申し訳無いが。
そう思いながら作っていると横から先輩が「何か出来る事は有るか」と聞いてきた。
私は顔を歪ませるのを止めてから「大丈夫です」と笑顔になる。
「...凄いな。チャーハンを作れるとは」
「私、頑張ってお勉強しました。母親と一緒に」
「...みたいだな。...だけど無理はしない様にな。...お前は...」
「...病気の事ですか?今はもう出ませんから」
「...」
私には病気がある。
その病気は...熱が直ぐ出る病気。
薬を服用している。
熱が出ると...何も出来ないが今は薬で一般人になっている。
介護職の母親に助けられた。
「...熱が出ると何も出来ないよな」
「そうですね。熱は...視界を歪ませますしね」
「...」
「何でしょうね。...私はこれがあるからあの人にも見下されました。...許せないですよ。絶対に」
「...そうだな」
あの人にはこう言われた。
「アンタは障害を持っているから子供を生んだら大変な事になる」と。
障害者差別であるが。
それにカチンときたけど私は怒らなかった。
偉いと思う。
「...正直。...あの人のお父さんは良い人なのに。何故あの人はあんな感じなのか」
「...追い出せば良いのにな」
「お義父さんは...それもやろうとしましたけど実際失敗していますからね」
「未成年だしな」
そうだ。
あの人は未成年であり追い出しても仮にも警察に厄介になったら終わりだ。
だからこそ私は私が家を出る事にしたのだ。
もう直ぐ私はあの人から離れられる。
それは本当に嬉しい。
「あの人もタカをくくっている様ですが。...正直ウザい」
「...だな」
「私が一歩を歩みだそうとすれば陰口。...ウザい」
「...ああ」
私はネチネチ文句を垂れる。
そしてハッとして先輩を見る。
先輩はずっと話を聞いてくれていた。
その姿に私は「すいません」と謝った。
「...もう直ぐ出来ますよ」
「...そうだな」
「...先輩。私は頭がおかしいんですかね?私がおかしいんですかね?」
「そんな訳ない。...お前は正常だよ。おかしいのは凛音だ」
「...」
静かに私はグッと拳を握る。
それからチャーハンを盛り付ける。
そして先輩を見た。
先輩は私を見ながら笑みを静かに浮かべた。
「...お前の助けもあって俺は生きている」
「...はい」
「自分を誇っていい」
「...先輩...」
その言葉に私は一気に救われた気がする。
それから私はチャーハンを乗せたお皿を持ってからリビングの机に乗せる。
そして私は「失礼します」と言いながら椅子に腰掛けた。
先輩は手を合わせる。
「...先輩」
「何だ?」
「...食べれますか」
「食べられますかというのは?」
「一人で食べられますか」
「...はい?」
私は対面から先輩の隣に座る。
それから私は「はい。あーん」と言いながらチャーハンを見せる。
先輩は「は!?」と絶句しながら「いや良いよ!?俺自身で食べられるから!」と大慌てになる。
「でも」
「お前は甘すぎる。何もかもが」
「そりゃ先輩相手ですし」
「...だからと言って...」
すると先輩は「...大丈夫。食べられるよ」と私の頭に手を添える。
そして頭を撫でてきた。
私はごつごつした固い感触の先輩の手を持つ。
それから頬に押し当てた。
「ま!?」
「...暖かいですね。先輩の手」
「そりゃそうだろ。生きているんだから...と言うか恥ずかしいから!」
「...私はそうは思いません。先輩の手は暖かいです」
「あのなぁ...」
「...もう暫くはこのままで」
そして私は先輩の手を握ったまま先輩を見る。
「実は私、色々な人に告白を20回ぐらいされています。まあでも全部顔だけ目当てで」と言う。
それから先輩を見つめる。
先輩は「!」となっている。
「その中で内心を見ているのは貴方だけです」
「...内心を見ているかどうかは...」
「先輩。貴方は...私もあの人もみんなの内心を見ます。...もう一度言いますが貴方だけですよ。外見を求めず接してくる人は」
「...」
先輩は「...それが礼儀だからな」と呟く。
私はその言葉に鼓動が高くなる。
そして私は「何度でも言いますが。私はそこの点が惚れました。...大好きです」と告げながら私は先輩の手を離した。
「...正直。凛音にそう言われたかったな。心からな」
「...ですね。気持ちは分かります」
「...疲れているんだろうな。俺」
「そりゃそうでしょう。...先輩は疲れているんですよ」
「...有難うな。凛子」
私は先輩を見てから「じゃあ食べましょうか」と笑みを浮かべる。
先輩は手を挙げる。
それから袖をまくってから私の頬に触れた。
そして「感謝だよ」と柔和になった。
「...これからも宜しく」
「...先輩...」
そして私は自らの頬に触れている先輩の手に手を重ねた。
それから目を閉じて赤くなって和む。
暖かい。
まさか先輩が自ら...私の頬に手を添えて来るとは思わなかったし嬉しかった。
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