憂愁が襲う春

アラームが聞こえてくる。

ジリジリと1日の始まりを教えるために、無機質な音が部屋に響く。

腕を伸ばして、恐る恐る止めた。

重たい瞼を開けて、スマホを見れば、もう7時になったらしい。

頭が重たい。全身に力が入りにくい。外に出ることへの寒気が止まらなかった。

これは駄目だと察して、昨日計画したことを全てキャンセルすることにした。

力の抜けた手はスマホをベッドに落として、布団を頭から被る。

もう一度寝ることにしたが、とりあえず、休むことだけを伝えようと、スマホをもう一度手に持ち、連絡する。

自分勝手であることも承知の上で、言い訳は別の予定がある事にして、全ての予定に断りを入れた。

申し訳ないが、この状態で人と会うこと、取り組むことの方が失礼だという言い訳を自分にしながら、入力する。

そんな自分自身の情けなさに呆れつつ、そう思うくらいなら動けばいいのにと囁かれるが、無理なものは無理だ。どっちに転んでも地獄であるが、この選択の方がまだ最善だと念じるように送信した。

スマホを定位置に置くと、ふぅと息を吐いた。

無意識のうちに緊張していたのだろう。肩の強ばりもなくなった。そして、頭から布団を被り直した。目を閉じて、胸の引っかかりを感じながら、意識を飛ばそうとしていた。


今日は何もしたく無かった。

何か嫌になったのだ。

やろうとしていたことも、予定もどうでも良くて…。

いや、めんどくさいと思ってしまった。

無理だと、会いたくないし、やりたくないという言葉に埋め尽くされて、動けなかった。

そういう時は全てを諦めることにした。

勝手に自分を傷つけて、他の人と比べて何にも出来ない自分を見て、ダメな人間だと思う。

そういう日が来ただけだ。

ただそれだけなのだ。

自分が分からなくなって、不安になって、苦しくなって、諦めてしまおうと決意して、かまってちゃんかよと思い、めんどくさい人間だと実感する。

こんなのに襲われる日がたまにあるのだ。

ただそれだけのことなんだよ。

理解してくれる人がいるのかもしれないが、それを言ったところでどうなる?

社会人としてはふさわしくないと言われるだけだ。皆も同じだから、怠けるなと言われるだけなのだから。

うるさいなぁ。分かってるよ。でも、無理なものは無理なんだよ!

この時期は特に無理なんだ。

新年度の始まりで、不安が、恐怖が襲ってくるんだよ。

自分は何も出来ない人間だって、成長しない、口だけの人間だって、思うんだよ。


思考が止まらず、意識なんて飛ばせやしないと思い、顔を出した。

息を吐き出して、呼吸を整えようとすると、ピコっと音がする。連絡が来たようだ。

見たくないけど、一応見て、頭が痛くなる。呼吸が苦しくなる。

バイト先からの連絡だ。

シフトの件での問い詰めがあった。はぁ、前にも説明したのに、文句を言われてる。

そりゃそうだと分かってはいる。自分にも非があり、バイト先に迷惑がかかっていることも。今日だって、予定があったので休みますと当日に入れたことだって、失礼なことは分かってる。

でもまぁ、契約更新する時にあまり入れなくなることも伝えたのに、契約を続けたそちらが悪いのでは?とも考えてしまう。

そろそろ辞め時かと思いながら、働く友達と比べられて文句でも言われてるんだろうな。それと比べると自分は要らないだろうなと感じて、また嫌になる。そこから飛躍して自分は何も出来ていない。他と比べ出して絶望するのを辞めるべきだと理解していても、やってしまう。

胸が痛くなってきて、だんだん身体が熱くなったことに気がついた。

これは熱出したのではと思い、体温計を取りに行く。そこは行動出来るんだと自虐しながら、測っていると、案の定微熱であった。

そのまますぐにベッドに戻り、なんてダメな人間なんだろうと思いながら、また目を閉じるのであった。




4月になる直前か、最中に度々訪れるこの気持ち。何度来ても、慣れず、悪化の一方。


春には憂愁が襲ってくる。









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