#3 光

-あの人は、神様のような人でした。



どうか、あの人を殺してほしいのです。


あの人は、私の主でした。


私には、あの人が全てでした。


忘れないでいてほしかっただけなのです。


私というものをあの人に刻みつけておきたかっただけなのです。


私がつけたその傷さえも、覚えていてほしかっただけなのです。

たとえそれが、愛でなくともよかったのです。


どうか、あの人を殺してほしいのです。


あの人は、私の道標でした。

あの人は、私の希望でした。


あの人がいたから、私もこれまで生きてきたこれたのです。


これまで全てをあの人に捧げてきました。


あの人は、私の唯一でした。

あの人は、私の太陽でした。


光の無い世界など、もう生きている意味がないのです。


どうか、どうか、あの人を殺してほしいのです。


あの人を心の底から愛しておりました。


これは、私があの人へ捧げる最後の祈りです。



あの人を私だけのものだと思っておりました。


心の中で密かにそう思っておりました。


それは、どうも間違いだったようで。

それは、どうも私の思い込みだったようで。


私は酷く落胆いたしました。


あの人は、何者でもありません。


ただの、一人のちっぽけな人間だったのです。


私は、もうあの人を愛してなどいない。


これっぽっちも愛してなどおりません。


私がこの手で殺して差し上げます。


そうしてあの人と共に、私も死ぬのです。


これは、私があの人へ捧げる最後の祈りです。


あの人は、私の宗教でした。

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