おっさん


 深夜に目を覚ましたらおっさんがいた。

 窓を開けてたせいかもしれない。

 幽霊ってのは大体が空き巣と同義なので、窓を開けてると入って良いもんだと勘違いして侵入してくることがある。

 郵便物を溜め込んでたり、近隣に人気がなかったりしてもよく来る。


 おっさんは勝手に侵入して勝手に出られなくなったくせに、まるで被害者みたいな面をして部屋の隅で喚いていた。

 哀れにも拐われて閉じ込められている善良な市民みたいな態度で俺を糾弾し始めたので、口に生肉の切れ端をねじ込んでやった。


 おっさんは最後まで哀れな自分を盛大にアピールして、のたうち回ってから消えた。

 本当の本当に、最後の最後まで、自分は人生という舞台において恵まれない被害者そのものであると主張していた。傍らに青黒い老婆の首をぶら下げながら。


 老婆の首は打撲の痕が酷く、顔はほとんど原型を留めていなかった。

 それでも親族だろうな、と分かったのは、その首とおっさんが臍の緒で雑に括られていたからだ。

 小遣いも碌に寄越さないクソババアというのは多分ぶら下がってる首のことなんだろうな、と態度で嫌と言うほど伝わってきたからでもある。


 マジでどういう精神構造をしてたらその態度で生きていけんだろうな。

 ああ。いや。

 生きてはいけなかったんだったな。

 ああ。そう。


 まあ、そうだろうな。

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