居酒屋

「ほうほう。それで貴方はその神社へと行ったんですね?」

「いえ、最初はそう思っていましたが、その前に行かなくてはいけない所がある事に気がついたんです」

「ああ。高野さんと鈴木さんの所ですね」

「ええ」

俺は、チラリと男の顔を盗み見た。何度確認しても初めて見る男だ。でも男は俺の事を知っているように話しかけてきた。この男は、何処までの事を知っているのか。何故知っているのか。営業先の客だろうか。いや、こんな男は見たことがない。

今までかかわってきた人達を出来る限り思い出していく。その間男は、美味そうに最後のもつ煮を口に入れそれを追いかけるように酒をあおった。

「はぁ~美味い。で?それからどうしましたか?」

「・・まず高野が入院している病院へと行きました。高野の母親からは意識不明と言われましたが、もしかしたら意識が戻ってるかもしれないと思ったので」

「ふんふん。あ、親父さんほっけある?・・・ある?良かった。俺、ほっけには目がないんだよね。焼いてくれよ・ああ、すみません。続きをどうぞ」

男はうやうやしく俺の方に話のバトンを渡すように手のひらを見せた。

「・・はい。次の日高野の病院へ行った俺は・・・」

残り少なくなった酒で喉を潤した俺は話をつづけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る