第17話 港町を襲う怪異
港街トリメアは、アクテリア王国の玄関口として発展してきた。
街の南側は三日月状に港湾が展開しており、大きな木造船が停泊している。
色彩様々な帆を持つ
そしてこの街で見られる名物には、もう一つある。それが朝から食堂で
そんな荒くれ者共が集まる食堂にて。ウェイトレスの
「無事に宿もとれたし、明日は渡航船の組合に行って、隣国のヘリオスへ出る船の確認をしよう。それが終われば街の観光だ」
やるべきことは先に済ませ、船が出るまであとはのんびり過ごしたい。あぁ、でも船旅の準備もしなくっちゃ。
「私もそれに賛成よ。船旅は天候の影響もあるだろうけど、十日程度かかると思うわ。食糧は自前だから、そっちの調達もしなきゃね」
「ボクは準備が終わったら、海の美味しいモノが食べたいです!」
おぉ、それはいいな。
海の幸は内陸じゃあんまり食べられないし、この際に食べ尽くしておきたいところだ。
「くぅ! くくぅ〜」
「お、アンさんは海で泳いでみたいって?」
亀にフォルムチェンジをすればいけるか?
買っていたのは陸の亀だけど……まぁアンさんなら大丈夫か。なんなら俺が飼っていたヤドカリやドラゴンフィッシュにもフォルムチェンジできるだろうし。
「アンさんはドラゴンになれるですか!? スゴイです!」
「あぁ、なれるぞ!
「ハゼっていう水龍が居るですか!? 強そうです! クールですぅ!!」
「くぅーくくぅ!」
本物のハゼ見たら、あまりの間抜け
ハゼは食用としては美味しいんだけどね、うん。
「はい! おまちどう。今朝上がったマツジロウとオーガヘッドの南蛮漬けだよ! 熱いうちに食べておくれ!」
マツジロウ?
その名前の魚ってたしか……。
「鳥の唐揚げも美味しかったけど、この魚も美味しいわね! ……ちょっと姿がグロいけど」
「あつあつサクサクですぅ〜! 特に頭がじゅうしぃです!」
たしかこの
◆◆◇◇
次の日、港にある渡航船組合グラントリアにて。
「ヘリオスへの船が出ないですってぇ!?」
船はいつ出るのか尋ねたところ、返ってきた答えを聞いたロロルが悲鳴のような声を上げた。
「ちょ、ロロルさん、組合長さんがビビってるから抑えて!」
「お、おう。すまねぇ。俺の娘に怒鳴られたトラウマが思わずフラッシュバックして……」
「え?」
「ご、ごほん。それで船の件なんだが……昨日隣国から帰ってきた船の奴がオカシなことを言っていてな。なんでも、海で大量の魚の死骸が浮かんでるのを見かけたっつぅんだよ。海に異変があったらマズいんで、念の為に漁師の連中に沖の様子を見に行って貰ってるんだが……」
それで今は船を出せない状況ってことなのか?
しかし魚の大量死って、いったいなにが……。
「組長! 大変です!! 一大事でさぁ!!」
「てめぇバカヤロウ! 組長じゃなくて組合長だっつってんだろォが!! それを聞いた娘にヤクザもんだと勘違いされて、俺ァ三日間も口を聞いてくれなかったんだぞ!!」
「すいやせん組長! そんなことより事件でさぁ! 海が! 海が来てるんです!!!!」
「そんなことってお前……まぁいい。海が来てる? まさか津波のことか!? それでウチの船たちはどうした!」
「船は一旦、湾の外へ避難させやした! でも津波じゃねぇんですよ! アレぁモンスターの群れですぜ!」
モンスターの群れが襲ってくる。
その
街の外へ逃げようとする者や、神に祈りだす者。
そして多くの人が――
「なんか街の皆が踊り出したんだけど……」
俺の視界には、両手にカニを持って踊り狂う人々が映っている。それも汗だくになりながら、必死の形相である。え、ナニコレ?
「いや、ソコは避難しようよ!? この街の人達、実は余裕あるんじゃないの!?」
「ち、ちがいやす!! アレはこの街の勇者、クーラブ様を召喚するための儀式っス!」
「えぇ……」
この踊りが勇者を召喚するための儀式?
っていうかクーラブって
「お願いしますじゃクーラブ様ぁ!」
「どうか我々を再びお救いくだされぇええ!」
「勇者さまぁあ!!」
蟹踊りで呼び出される勇者って何者なんだろう。
ていうか俺も勇者なんだけど、もしかしてそのカニ勇者と同列の扱いなの?
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