第42話 キャットファイト
彼女────早川美乃里のスキル『カスタム』とは、文字通り自分のステータスを全体の総合値の許す限り、好きに振り分けられることが出来る、破格のスキルである。
(忍者さんの攻撃を一度でも喰らったら終わり……なら、別に防御を捨てて速度に振り分けた方がお得だよね)
防御:126→1
耐性:126→1
素早さ:100→350
(当たらなければどうということはない。ってね)
クナイをジャンプして避け、着地した瞬間に肉薄。カチリ、と体の中から音がして、全てが上手くいくようにハマり込んだ感じ。
急なステータス変化にも見事に対応し、浩紀の裏取りに成功。
「────!これは……」
「最初からこうすれば良かった……。じゃあね、忍者さん。御神楽くんとの約束があるから」
「……見事」
てしっ、と浩紀を軽く叩く。すると、美乃里が体が青く光る。すると、新たなステージに転移された。
「なるほど。そういうギミックね……それじゃ、ちゃちゃっとクリアしますか!」
「は!?なんだその速度!?独学にしても有り得ねぇ────ぎゃん!?」
「アイエエエ!?ハヤカワさん!?ハヤカワさんナンデェ!?」
「よゆーよゆー。女だからって多少舐めプしてくれて助かった」
現在、28階。全てのピコピコハンマー罠群を華麗に回避し、殆どノンストップでダンジョンを駆け上がった。二名ほど、女子ということと急な知り合いの登場に動揺して軽ーくのされ、現在コメント欄で弄られてる情けない男衆がいた。
たまたま、各務が見てなかったから良かったものの、バレたら恐らく二人にはこの後地獄の特訓が待ち受けていただろう。
(さて、と。いよいよラスボス……ということは、あの人が待ち受けている階か)
個人的に────何となく、だけど気に入らない人物。最後に軽くステータスを確認してから階段を駆け上ると、彼女がいた。
フロアの真ん中で、各務お手製の『氷の薙刀』を構え、目を閉じている濡れ羽色の少女。
水瀬ゆかり。ネット上では、一身上の都合により『ユーリ』と名乗っている美しき少女である。
パチリ、と目が開き、きらりと輝く薄紫色の瞳と、美乃里の黒目がバッチリと合う。
目と目が合う~瞬間すーきだと────
(……この人が、今の御神楽くんのそばにいる人)
(……この人が、各務くんと仲がいい異性の女の子……)
((気に入らないッ!))
────そんなことは無かった。例えば、無意識のうちに好意を寄せている男の子の、謎の女の影でもやり。例えば、小学校とかで一番仲がいい友達が、別の人と一緒にいるところを見てジェラる。表すのならこんな感じ。
そう、無意識下のうちで、今からキャットファイトが始まろうとしていた。
(なんとなくだけど、この人からは絶対に目を離したらダメな気がする)
ジっ、とゆかりを見つめながら、視界の端ではステータス画面を開く。
彼女のスキル『カスタム』には、ステータスの振り分けだけでなく、レベルに応じて習得可能のスキルを自由に編成できるという能力もある。
現在、美乃里が習得可能なスキルはザッと300程。ゆかり対策にスキルを構築していきスキルを発動。
彼女の手のひらに光が集まり、一振の無骨な剣が現れる。それを見て、ゆかりの眉がピクりと反応した。
(挑発?挑発かしら?似たようなことが出来ますっていう?────は?)
「いいでしょう」
くるり、と薙刀を回す。
「身の程、というのを分からせてあげましょう────この泥棒猫っっ!!!」
「────はぁぁぁぁぁ!?!?!?」
今、乙女達の尋常なき戦いが始まった。
(こ、この
美乃里にとって、一番親しい人物は誰かと聞かれたら、真っ先に各務の名前を上げるほどには、友達だと思っている。
「わ、私からすれば!あなたの方が泥棒猫よ!急に出てきて、なに急に正妻枠の感じで出てきてるのよ!」
(別に、完全にラブって訳じゃないけど、御神楽くんに惹かれていたのは確か。かっこいいし、優しいし、頼りになるし、何かと助けてくれるし、あと可愛いって褒めてくれるし!)
多分最後が理由の6割を占めている。前の雑談配信で、各務に実験体になると言って絡んだのは、実はかなーり寂しかったからというのもある。
「あまり────私の前で御神楽くんとイチャコラするなー!!!」
・これって俺ら何見せつけられてるの?
・さぁ?
・各務争奪戦だろ。どう見ても
・まぁモテるなぁ。あんな美少女二人に迫られて……ウラヤマ
・羨まし……羨ましいかぁ?
・いやー、(実際見ると)キツイでしょ
・ハーレムって、ほんと難しいんだな
・まだ各務嫁軍には、フェイルノート様と、未だ見ぬ異世界勢もいるからな
・争奪戦が苛烈すぎる………
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『一週間、あなたのことを心からトロトロに甘やかしてくれる年下幼馴染概念』
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