第15話 お披露目配信②
・いまさらだけど、なんで自己紹介するかどうか後ろの四人に聞いたのん?
・それ思った。普通にやればよくね?
「うーん……一名人間不信というか、俺以外の男性絶対ぶっ殺すウーマンがいるから、ワンチャン拒否りそうかなって」
チラリ、とうしろを見て無言で首を高速で横に振っているゆかりを見る。見ろ、頑張って話しかけている浩紀に対して、虫を見るような目で見ている。もうそろそろ下郎から男にランクアップしてもよさそうなんだがな。五日も一緒に強化合宿したんだから。
コミュニケーションレベル1にそれを言うのもどうなのかと思うが、ゆかりのは拗らせすぎ。
複数人でいたら基本は喋らないで俺の肘らへん摘んで時間が過ぎるのを待っているし、ほな同性の美作さんはどうなのかと思ったら、そっちでも会話が続かないし。
ゆかり母。一体何がしたかったんだ……?どうして普通の友達付き合いのやり方を教えず、家族のように接せよと教えたのか。コレガワカラナイ。
・あのめっちゃ首振ってる子?
・お披露目式見てたけど、美人だよな
・そんでずっと御神楽勇者の傍に引っ付いてたよな
・もう既に勇者の中でデキてる!?なんてスレもあったよな
「まぁ……あの子はちょっと家が特殊でね」
今まで出来た友達が俺だけだからね。仕方ないね。
「主殿」
「ん、やっぱダメ?」
「ござる」
まぁしゃあないか。別に、自己紹介しないとダンジョンにもぐれないわけでもないし。
ゆかり以外の自己紹介も終わり、そろそろこのお披露目配信の本題へと入ることにする。
・一体何が始まるんです?
・第三次大戦だ!
「ちげーわ。今日のお披露目配信の目的だよ目的」
今回のこの配信の目的は、俺達の実力を見せて、国民にダンジョンに対する備えは充分にできていると安心させること。
ちょくちょく外国人ニキのコメントがあるのも確認しているため、十中八九外国の政府に力を見せつける思惑もあるだろう。
・そんな配信より、普通にダンジョン攻略した方がいいと思うけどねぇ
・それ思った
・ワイトもそう思います
「政府も色々と考えてるらしいよ?俺達がこうしている間に、自衛隊と警察が協力して、日本に出現したダンジョンの位置とか調べてるらしいし」
須貝さんが今日はそっちに駆り出されてるからな。
「まぁそんなことしなくても、俺だったらサクッと攻略できるんだけどね。ガハハ」
・それはさすがに無理でしょw
・いくら最高戦力といっても、さすがに……え、冗談で言ってるんだよね?
・なるほど、それを確かめるためのお披露目配信……ってワケね
「そゆこと」
俺たちの実力を知っているのは俺たちだけだ。皇居で行われたことは完全非公開で、どれだけ強いかは世間に浸透していない。
「だから────とりあえず俺vsその他でやるから、見とけよ」
・なんて?
・なんて?
・なんて?
・なんて?
・なんて?
戦闘の余波で吹き飛んでしまわないように、三脚と地面を氷で繋いで固定する。そして、魔法でライブ配信のコメントが視界に映るようにしていたのだが、それを消して戦闘態勢に入る。
目の前には既に、己の得物を構えて準備している、この世界で生まれた勇者五人。
パッと見ではまだまだ俺が全力を出すには値しないが、中々に楽しめそうだ。
「準備はいいか」
「当然だろ」
「今日こそ当てる……!」
「某の忍術、今こそ主殿に!」
「御神楽くん、覚悟していてくださいね~」
「…………」
この五日間。集中的に鍛え上げたこの五人は、既にレベルは300オーバー。
一番レベルが低いのは、後衛スキル持ちの美作さんであるのだが、1番高くて
なんと、驚きの800越えである。いつの間にか、スキルに『取得経験値二倍』が生えていて、それの暴力でとことん伸ばしに伸ばしまくった結果、こうなってしまった。
二割……三割の力を俺から引き出せたらいい方だろ。背後に青色の波紋を浮かばせ、無限の武器庫にアクセス。
「ルールはいつもと同じ、どんな手段を使ってもいいから、五分間の間に俺に一撃当てること。制限は無限の武器庫だけ使うが、お前たちに攻撃することはなく、防御としてのみに使う」
ちなみにだが、彼らは何度も俺との組手をやっているが、俺に一撃当てたことは無い。
「足掻けよ勇者共」
「行くぞッッッ!!!」
霧矢が吠えるように叫び、勝負の火蓋が切って落とされるのであった。
・おかしい。俺たちが見てるこの中には、勇者しかいないはず
・どうして悪役にみえるんですかね
・もはや魔王ですらあるだろ
・セリフがね……勇者っぽくないんですよ
・魔王系勇者……
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