水瀬ゆかりの悶々
水瀬家本家のその離れ。追いやられるようにして敷地の端っこにある木造の二階建ての一室にて、水瀬家長女────水瀬ゆかりは、やけに真剣な顔でスマホとにらめっこしていた。
開いたアプリは、某緑のアイコンのトークアプリ。相手は、今日知り合ったばかりの御神楽各務である。
(……どうしましょう。一体どんなメッセージを送ればいいのやら)
しかし、友人いない歴イコール年齢の彼女にとって、母親や使用人以外と連絡をとったことがないのでなんて送ればいいのかで悩んでいた。
恐らく、各務なら「わっぴ~」と送ってもなんら問題もないとは思うが。
(とりあえず、こんにちはから?でも、メッセージにしては硬すぎるかしら?どうしましょう……本当に)
「ゆかり?」
そんなゆかりに、救いの光がやってきた。くるりと振り返ると、自身の母親である水瀬しずかが心配そうにこちらを覗いていた。
「お母さま」
「どうしたの?そんな真剣な顔をしてスマホを見て」
ここでゆかり、天啓がピコーン!と落ちる。
「お母さま」
「なぁに?」
「お友達に、メッセージはどうやって送ればいいのかしら」
「………まぁ、まぁまぁまぁ!!」
一瞬、お友達と聞いて目を丸くしたしずかだったが、直ぐに嬉しそうに顔を喜ばせた。
「お友達!一体どんな子なの?」
しずかは、無意識のうちに同性の友達だと予想していた。だって、うちの男臭あんなだし。
「えっと……困ってる時に自然と助けてくれて」
「うんうん」
「初対面なのに、すごい大切にされてるって感じさせてくれて」
「うんうん」
「あと……笑顔が素敵な殿方よ」
「そう!殿が────え、殿方????」
「………えぇ」
少し、その時のことを思い出しちょっとだけ頬を赤く染めてから控えめに頷いた。
(あらヤダ!私の娘カワイイ!!!)
「かなでさーん!!あきほさーん!!大変!大変よ!!」
「奥様!?」
「どうかされましたか!!」
「うちの娘に!遂に春が訪れたのよ!!」
「「な、なんですとーーーー!!!!」」
その後は、しずかと、使用人達によるお友達とのメッセージ講習が行われた。もちろん、内容はそんなものではなく、どうすれば各務の心をがっしりと掴めるかの指導だったが。
こうして、間違った知識により、各務に対してだけ距離感バグったゆかりが爆誕したのだった。
────胸の高鳴りも、勘違いしたままに。
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ゆかり母←娘に遂に春!?逃がしちゃダメよ!
ゆかり←友達……初めての……フフッ
各務←さてと、どう教えようか……
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